見出し画像

泳げない大人が水泳を始めた 「のびしろのとりこ」

小中高の10代の時期、水泳の授業では確実に学年でいちばんできない子だった。スピードが遅いとかじゃなく、けのびからバタ足をしたら止まってしまうレベルでダメだった。それでもテストだからと、けのびと歩きで25メートル進んだ時間をクロールのタイムとして計測された無意味さが忘れられない。
もっと幼少期には、近所のプールで足がつかないところで遊んでいて普通に溺れた。水泳には本気で何ひとつ良い思い出がない。

そしてカナヅチのまま大人になり、当たり前のようにプールに縁のない私であったが、なんと先日急に水泳を始めた。理由はいろいろあるのだが、要はボルダリングのためだ。

・筋肉を鍛えるためにもっと運動頻度を上げたいが、ボルダリングはせいぜい週2回しかできない(3回以上やると指とか怪我する)。
・身体を持ち上げる課題のためにもっと体重を軽くしたい。有酸素運動を取り入れたいが、自転車やランニングは膝に負荷がかかりすぎて長い時間続けられない(着地じゃなくても、自転車は膝の曲げ伸ばしの繰り返しなのでキツい)。
・そもそも子供の頃に怪我をしたこの膝、やっぱりボルダリングで枷になる場面が多いので、四半世紀ぶりにリハビリを再開することにした。関節に負担をかけずに筋力をつけていきたい。
・デスクワークで肩や股関節が凝り固まりがちなのを、短時間のストレッチで可動域が回復するようにしたい(固まったまま高強度の課題をやると関節を痛めることがある)。

などといった理由で辿り着いたのが水泳だった。一番は有酸素運動のバリエーションを増やしたかった。加えて水泳は肩や股関節の可動域確保にはうってつけで、まっすぐ泳ごうとすることで筋肉の左右差の補正にも良いと聞いた。

確かに私は泳げなかったが、それは運動が苦手だった頃の話。今やボルダリングのおかげで持久力も筋力も人生で一番あるわけだし…いけるんじゃないか? もしかして。

で迎えたファーストプール。
全然泳げなかった。マジで何もできなかった。カナヅチは、自然に泳げるようにはならない。

まず耳を水につけることができなかった。え? 怖。何? そして相変わらずバタ足しても進まない。もちろん息継ぎなんてやったことがないからできない。

何度か初心者用プールを往復して、かろうじて耳まで潜るのとビート板ありのバタ足(超おそい)はできたが、可動域だの筋力だのが期待できるレベルには全然及ばず、ただ水遊びして帰ってきた感じになった。無念。隣でマタニティスイミングやってたママさんたち、謎ムーブしてごめんね。

もうジムのスクールに参加して基礎から習うか…。スイスイ泳げる人が羨ましい。私は水泳トレーニングのスタートラインにすらまだ立てていないのだ。

とりあえずなんとかしたいのでターザンを買った。水泳特集だ。
泳ぎ方のコツ的なものがいろいろ書かれていて、そもそもが自分のイメージとかなり違う動きだったことがわかった。なるほどな…? 全然知らなかったな…。

2回目のプール。
10メートル泳げた。10メートル!!! 0が10!!

イメージ通りに身体を操作できたのは、たぶんボルダリングで訓練したおかげ。壁を登れるカナヅチは、静止画像と文字情報で泳げる。
それにしても、水の中を進む? あまりにも新感覚すぎた。おもしろの類いじゃないかこれ。

次はビート板ありで息継ぎの練習かな…。息継ぎのやり方も自分の動きとターザンの情報が全然違った。つまり、まだできることはたくさんある。
もはや私は、成長することそのものの虜になっているのかもしれない。ままならない毎日の中で、疑いなく成功だと言えるものを手に入れたいだけだ。夢中になっているというよりは、縋りついているという表現の方が感覚としてはずっと正しい。

それでも、どうせ縋りつくならフィジカルが伸びるほうがいい。元気があればなんでもできる。そしてその元気は後々複利で効いてくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?