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個人的テクノ・ミュージック史、1979年生まれ編。

文:飯島英大(Ecostore Records)



音楽好きなら多くの人がそうだと思うけれど、どんなジャンルの音楽も好きだし、色々漁っている中で自身にとって未知のジャンルに手を出すことも多い。それでもふと気付くとある特定のジャンルの音楽ばかり聴いている or レコードばかり買っている、なんて状態になっていることがあるのも、また真実。自分の場合は、それがテクノであることが多い。

個人的な一番古い記憶は、家族で車に乗って高速道路を走っていてトンネルの中のオレンジのライトが両サイドをさーっと過ぎていく、そしてカーステレオからはクラフトワークの「コンピューター・ラヴ」が流れている、というもの。大人になってから「なんか話が出来過ぎているから自分の中で捏造された記憶か?」とも考えたけれど、実家に父親がラジオ放送から録音したクラフトワークのその時期のライヴ音源のカセットテープがあったので、多分それなんだと思う。

自分の幼少期は1980年代にあたるが、歳の離れた兄がYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)にのめり込んでいたため、家ではひたすらYMOと、各メンバーのソロ作品がかかっていた。キャッチーなヒット曲も好きだったけれど、幼心に特に気に入っていたのはアルバム『サーヴィス』に収録の「PERSPECTIVE」と、坂本龍一が音楽監督を担当したアニメ映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のサントラ、細野晴臣のソロ作品『フィルハーモニー』。

Yellow Magic Orchestra / Service, 1983年発表

初めて買ったレコードは映画『子猫物語』のサントラで、これも坂本龍一関連作品。つまり、兄の影響を素直に受けまくったのだ。

中学生になると自分でも好きな音楽を探すようになるが、インターネットなんてまだ無かった時代の田舎のクソガキの主な情報源は、雑誌とラジオ。「電気グルーヴのオールナイトニッポン」でアンダーワールドの「Rez」がかかった時は完全にヤラれた。震えた。石野卓球が「今から超カッコいい曲流すから、メタルのカセットを用意しろ」と言って、慌てて空のカセットを探した記憶がうっすらある。メタルのカセットは残念ながらその時家にはなかったけれど。(電気の作品はもちろん、90年代の卓球氏の活動がその後の日本に於けるテクノの普及に与えた影響は甚大)

高校生になる頃には1990年代も半ば。ソニーが海外の同時代のクラブミュージックを国内盤CDで色々とリリースしてくれるようになり(通称ソニテク)、そのラインナップの中でもエイフェックス・ツインの『SELECTED AMBIENT WORKS 85-92』とデリック・メイの『イノベイター』は、その後のリスナー人生に於ける大きな指針となった。テクノはカッコ良くてガシガシ脳みそ揺らせる音楽というだけでなく、美しく、心の琴線に触れる、感動すら出来るものなのだと。

そして大学生になり上京してからは、渋谷や新宿のレコ屋に通い詰めるようになり…といったよくある話。

40代も半ばになり、いまだにレコードは買い続けているし、テクノも聴く。縁あって中古レコード屋に入社することになり、1年後に京都に引っ越しているとは思いもしなかったけれど。

2023年10月17日にグランドオープンするFace Records KYOTO TAKASHIMAYA S.C. T8はオールジャンルの在庫構成の中古レコード店ですが、テクノのLP・12インチも多数ご用意しています。京都の音楽シーンの盛り上がりに貢献したり、京都の皆様のレコードライフ充実のお手伝いが出来たらと思いますが、その中でテクノを聴く方が一人でも増えたらいいなあ、などと考えている今日この頃です。


筆者紹介:
飯島英大(いいじま・ひでひろ)
某大手CDショップに15年以上勤務、殆どのジャンルのバイングを経験。縁あって2022年にFTF株式会社に入社し商材データ入力 → 査定 → 店舗勤務と担当部署が変わる中、京都店のオープニングスタッフに。河原町周辺のいい感じのお店を散策する日々。寺社仏閣はまだあまり見れていませんが、京都の紅葉が楽しみです。

2023年10/17(火)オープン!京都店の詳細はバナーから


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