今だから聴きたいライブアルバム
ライブアルバムを好んで聴くという音楽好きの方は多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人ですが、丁寧に作られたスタジオアルバムよりもライブアルバムを好んでしまうのは、それが時に演奏だけでなく、その場の温度や湿度や天気、演奏のミスなど、アーティストやエンジニア自身がコントロールできない領域までを保存してしまうからなのだと思います。今回はジャンルや年代を横断しながら、レジェンド(?)たちのライブ盤を紹介したいと思います。
文:中西風登(Ecostore Records)
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Louis Armstrong And His All-Stars / Ambassador Satch(1955年録音)
ルイ・アームストロングとオールスターズが1955年に行ったヨーロッパツアーの記録で、50年代の彼の代表作の一つでもあります。サッチモのあたたかいトランペットとヴォーカルはもとより、愉快でありながらも味わい深いオールスターズのアンサンブルからはバンドの成熟を感じ取ることが出来ます。そして何より演奏をかき消さんばかりの観客の声援を聴くとサッチモ、さらに言えばジャズのヨーロッパでの人気に思いをはせないわけにはいかず、胸が熱くなります。
Crosby, Stills, Nash & Young / 4 Way Street(1970年録音)
1960年代から70年代にかけて活躍した有名グループが1971年にリリースしたライブ盤。メンバーはクロスビー・デヴィッド、スティーブン・スティルス、グラハム・ナッシュ、ニール・ヤングの4人で、全員がソロやザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールドでの活動でも知られる大物です。バッファロー・スプリングフィールド時代から続くスティルスとの不仲などもありヤングがこのグループに在籍していたのはわずか1年ほどですが、このアルバムでは珍しく彼の歌とギターを存分に楽しむことが出来ます。
かぐや姫 / かぐや姫LIVE(1974年録音)
日本フォークの金字塔・かぐや姫が1974年にリリースしたライブ盤。綺麗なメロディーやコーラスワーク、フォークを定義づけるアコースティックギターの音色の素晴らしさはもちろんですが、気迫あふれるリズムセクションの演奏やロックな一面も聴きどころの1つです。ここからバンドは解散へ向かってしまいますが、もし私がリアルタイムでこのアルバムを聴いていたら、日本のフォークがさらに新しい段階へ進むのではないかと期待に胸を膨らませていたはず。
Ella Fitzgerald / Mack The Knife - Ella In Berlin(1960年録音)
ビリー・ホリデイやサラ・ヴォーンらとならんで後世に多大な影響を与えたジャズ・ボーカリスト、エラ・フィッツジェラルドによる1960年のベルリン・ライブを記録した名盤。彼女の真骨頂であるスキャットと手数がマシマシのドラムが冴え渡る「ハウ・ハイザ・ムーン」や表題曲「マック・ザ・ナイフ」も良いですが、個人的には大好きなガーシュウィンの「私の彼氏」をライブ盤で聴けるのがこのアルバムの嬉しいところです。
Jeff Beck, Tim Bogert & Carmine Appice / Beck, Bogert & Appice Live(1973年録音)
ジェフ・ベックがティム・ボガード、カーマイン・アピスと結成していたバンドが1973年に来日した際の音源。当時は<最強のロックトリオ>と呼ばれていたそうですが、現在聴くことができる音源はスタジオアルバム1枚とこのアルバムのみです。スタジオアルバムでは丹念に多重録音されていたギターもライブ盤ではベックがひとりで再現しているので、当時の3人のグルーヴをより近い距離で楽しむことができます。とにかく3人とも上手いのですが、ある種の深刻なマッチョイズムの中にもお茶目な側面を垣間見ることができる点が魅力の一つです。
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