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レコ屋スタッフの記念すべき1枚目 Part4:Z世代をも魅了する、レコードがかける魔法

こんにちは、エコストアレコードです。

毎週水曜日に配信する連載企画。今月は当店スタッフが初めて手に入れたレコードについて紹介しています。

4月ラストとなるのは、20代前半とまだ若い世代でありながら熱心な音楽への興味を持つスタッフの経験談。人生初のレコード、彼はどんなことを感じたのでしょうか。



高校を卒業し専門学校に入学してしばらくたった18歳の夏。当時国産インディーロックを中心にCDを買い漁っていた頃、ある日レコードを聴き始めた友人に突然レコ屋に連れていかれたのが私がレコードというものを知ったきっかけだった。

その時の私はまだレコードの良さなんてこれっぽっちも知らずに、レコ屋を訪れたはいいもののなんとなく見たことのある大きいジャケットを手にとっては眺めて、友人のディグをそっと見守ったり。意味もなく60s UK/USロックの箱や和モノの箱の前でストンストンとレコードに触れているだけだった。その日の帰り、「戦利品の試聴をしよう」と家に連れられ、友人はビニール袋からピカピカのNujabesの『Modal Soul』を取り出した。そしてレコードに針が落とされた瞬間私はまんまとレコードがかける魔法に魅了されていた。当時『Modal Soul』は散々サブスクで聴いてはいたがサブスクの音源では味わえないドラムの立体感やビートの迫力・音の広がりに飲み込まれ、まるで目の前で演奏されているかのような音のクオリティに衝撃を受け、そこで私は初めてレコードの持つ魅力や良さを目の当たりにしたのであった。

その後は何度も友人のディグに付き合っては家で聴かせてもらうということを続け、その都度自分の家でもレコードを楽しみたいと考えていた。しかし、それにはオーディオ類を揃えなければいけないことなどがネックでなかなか手を出せずにいたが、ある時、とある一枚の新譜のアナログリリース情報が入り込んで来た。その新譜こそが私が初めて買った一枚、青葉市子さんの『アダンの風』だった。

青葉市子 / アダンの風(Hermine, DQJ-9001)2021年発表


囁くような歌声と独学のクラシックギターによる独特の世界観が魅力の、海外で話題沸騰なシンガーソングライター、青葉市子の7作目のアルバム。この作品は「架空の映画のサウンドトラック」というコンセプトを元に沖縄の島々を巡り映画のプロットを作り、そのプロットから出来上がった作品である。青葉市子従来のアシッドフォーク・ニューエイジの要素は残しつつ、所々に散りばめられた波の音・鳥の鳴き声といった環境音、歌やギターを美しく装飾するオーケストラサウンドにより紡がれた音は、沖縄の島々の自然や海の壮大さを想像させ、神秘的な雰囲気を感じさせるまごうことなき大名盤だ。

友人と様々なレコードを聴いている内に数あるレコードが持つ特徴の中で、アーティストが実際に聴いていた音を自分も体感でき、その作品が創り上げる物語に心から入り込むその瞬間に何よりも陶酔していた。だからこそ一曲目から最後の曲まで全てが地続きに繋がり、1つの物語を表現するこのアルバムだけはレコードの音で、この作品が創り上げたかった世界観により深く沈み込みたいという衝動に駆られ、プレイヤーも何も持っていなかったにもかかわらず気付けば予約注文を済ませ。私はこのレコードを手に取っていたのであった。私の世代は生まれたころからCDが広く普及しており、現在に至るまでサブスク・YouTube・TikTokなど昔に比べ音楽を聴く手段が豊富だ。

そんな恵まれて便利な時代だからこそレコードの持つ当時の音を体感でき、アーティストの表現したい世界を鮮明に見せてくれる音は衝撃的であり、ジャケットから盤を取り出し針を落とすという行為は手間暇をかけた愛おしさがある。そういったレコードをかけることにより体感できる魅力という名の魔法に、気付けばあなたも魅了されているかも。

筆者紹介:
長坂 駿(ながさか・たかし)
アンビエント・ポストクラシカルをこよなく愛するロマンチックボーイ。普段はオークション・ECサイトの商品情報作成スタッフとして毎日元気に働いている。だがその胸の内には、環境音楽は今はまだガンには効かないがそのうち効くようになるという想いを秘めているのである。


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