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経済学解説② 完全競争市場の利潤最大化条件~なぜP=MCなのか~

閲覧ありがとうございます。経済学習スタジオです。

 本回は、経済学の内容を1つ取り上げて、解説をしていきます。
 取り上げるのは、ミクロ経済学の生産者理論を教えていると、完全競争市場の利潤最大化がなぜP=MCなのかをよく聞かれるので、その説明を利潤式を用いた計算から導いておきました。

 参考にしていただければと思います。

1.利潤式の確認


 まず、利潤式を確認しましょう。利潤をπとおきます。そして、総収入をTR、総費用をTCとおきます。すると、利潤式は、以下のようになります。

 π=TR-TC

 まぁ、これはそうですよね。総収入から総費用を引けば、利潤になるからです。

2.総収入と総費用の説明


 次に、総収入(TR)を考えましょう。これは、例えば、100円のものが50個売れたのであれば、TR=100×50=5000円ですから、一般形で表すと、

 TR=P(価格)・x(数量)・・・・・・①

となります。

 それから、総費用(TC)です。これは、いろいろな表し方があるのですが、ここでは、10個だと800円、20個だと1400円などのように生産量に応じて決まるとしましょう。つまり、総費用(TC)は生産量xの関数です。

 TC(x)・・・・・・②

というわけですね。

3.利潤最大化条件について


 ①、②を用いて、利潤式を表すと、π=TR-TCから、

 π(x)=P・x-TC(x)

 となります。では、利潤最大化条件を考えていきましょう。このとき使う数学的知識が、「微分してゼロ」というものです。

 この理由は、ある関数の縦軸の最大値をとるときの横軸値を求めるときに使う数学的な考え方が、その「関数を微分してゼロ」を計算するというものだからです。この計算をイメージ図と文で説明すると下記になります。

 下の図は、青線がπの関数を曲線で表したものです。「●」はπの関数の最大値です。そして、オレンジ線は「●」点における接線の傾き(微分しているところ)になります。

 このとき、オレンジ線の傾きはゼロです(横軸に平行になっています)。

微分してゼロのイメージ

 以上から、ある関数の縦軸座標値の最大値は、その関数を微分してゼロの横軸座標値をとることが分かりました。

 そして、ある関数を利潤関数に、縦軸最大値が利潤πの最大値、横軸の値が生産量だと捉えれば、利潤関数の縦軸最大値(利潤πの値)は、利潤関数を微分してゼロの横軸座標値(生産量xの値)が条件だと言い換えられます。

 つまり、利潤最大値を求める条件(利潤最大化条件)は、利潤関数を微分してゼロのときの生産量をとるということになります。

4.利潤関数の微分をすると


 それでは、利潤式である、π(x)=P・x-TC(x)を微分してみましょう。まず、「P・x」の部分は、微分すると「p」ですね。次に、総費用「TC(x)」は微分すると、限界費用「MC(x)」とおきます。

 したがって、π´=p-MCとなります(利潤関数πの微分はπ´と表します)。そして、利潤最大化のとき、π´=0でしたので代入しましょう。

 0=p-MC

 式を変形して、

 p=MC

 ということで、P=MCが利潤最大化条件になることが導出できました。

5.数値例

 価格が100円、数量x、総費用がTC=x^2+20だとします。このとき、利潤関数πは、

 π=TR-TC
 π=100・x-(x^2+20)
 π=-x^2+100x-20・・・・・・(*)
 
 では、利潤関数を微分すると、
 
 π´=-2x+100

 となります。そして、π´=0が利潤最大化のため上式に代入すると、

 0=100-2x
 x=50

 つまり、生産量50(x=50ということ)のとき利潤最大となると分かりました。ちなみに、このとき、(*)にx=50を代入すると、

 π=100・50-(50^2+20)
 π=5000-2520
 π=2480

となります。利潤2480と得たということです。

6.よく聞かれる質問

 よく質問されるのが、「限界費用MCは1個追加的にかかる費用ですよね。それと価格が同じだと利潤はゼロになるのになぜ利潤最大化なのですか」というものです。

 確かに、「5.数値例」で出した生産量50をとる利潤最大化条件のとき、価格Pが100円で、MC(TCを微分した2xがMCで、xに50を代入するから)も100円なので、50個目に関しては利潤がゼロになっています。

 しかし、「50個目まで」のところで、利潤が出ています。例えば、10個目ならば、pが100円、MCは20円のため80円の利潤が出ています。同様に49個目もpが100円でMCは98円なので2円の利潤があります。

 一方、51個目になると、pが100円でMCが102円なのでマイナスの利潤2が発生します。このように、50個より多く作ると、50個目までに獲得してきた利潤の合計より利潤の値が小さくなってしまいます。

 したがって、そうなる手前で生産量を決めると利潤最大化することがわかります。

 つまり、P=MCのところで決まる生産量のところが、たとえその生産量のところだけをみれば利潤0でも、その生産量までのところで利潤を獲得した合計値は最大なので、この生産量を企業は選び取ることになるわけです。

7.おわりに

 本回は、①利潤式を微分してゼロになる生産量が利潤最大化条件であること、②それはP=MCになること、③ここで決まる生産量はそこまで作ってきた利潤の積み上げが最大になっていること、をお伝えしました。

 つまずいていた方の参考になれば幸いです。

 それでは、また何かの経済学にまつわるトピックスでお会いしましょう。

〜執筆者紹介〜

経済学習STUDIO
 公務員試験・経済学検定・各種資格試験・大学編入の経済学系科目の情報発信をします。中の人は、大学や資格予備校で経済学を教えてきたミヤンです。2024年1月に出版した電子書籍はこちら。今後も、様々な学習ツールを整備していこうと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

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