5月に読んだ本

・Aではない君と 薬丸岳 (講談社文庫)
同級生を殺害してしまった息子・翼とその父・吉永、元妻の純子の家族愛と罪の意識の話。どうして何も翼は話してくれないのか、殺害に至るまで一体何があったのかが徐々に明らかになっていくのが面白かった。「もし自分あるいは家族が加害者になったらどうしよう」と考えさせられた。


・エンジェルフライト 佐々涼子 (集英社文庫)
国境を越えて遺体を送り届ける国際霊柩送還士として働く人々と、遺族のルポルタージュ。初めてこの仕事の存在を知ったし、死について考えるきっかけを与えてくれた。


・これが生活なのかしらん 小原晩 (大和書房)
何気ない日常を柔らかく美しい言葉で切り取っているエッセイ。思わず微笑んでしまうようなちょっとした幸せな景色がありありと想像できる素晴らしいエッセイだった。


・うみべの女の子①② 浅野いにお (F×COMICS)
田舎町に住む中学生男女の淡く切ない青春漫画。すれ違う思いだったり、倒錯した性欲だったりがありのままに描写されていて面白かった。映画もあるようなので見たい。


・世界の終わりと夜明け前 浅野いにお (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
いにお先生の短編集。思春期のモヤモヤしてなんだかやり切れない思いをデフォルメすることなく、当時感じていたあのまま描いていて良かった。中にはスッキリしない話もあったが、それも浅野いにおらしくて面白かった。


・月の満ち欠け 佐藤正午 (岩波書店)
三角哲彦と恋に落ちるも不運の事故で亡くなった瑠璃と、瑠璃の記憶を持つ少女、その親の命をめぐる話。前世の記憶を持つ子供という設定は突飛で最初は話に入りづらかったが、生まれ変わっても会いたい人がいるという恋の話には感動した。


・女の子のことばかり考えていたら、1年が立っていた。 東山彰良 (講談社)
大学3年生の有象くんと無象くんの周りで様々な愉快な出来事が起きる小説。正直なところ、森見登美彦の下位互換小説だと感じ、面白くはなかった。


・おいしいごはんが食べられますように 高瀬隼子 (講談社)
ほっこり系の小説かと思ったら、その反対でなかなか重い内容だった。主人公・二谷の食に対する考え方や、同僚であり恋人の芦川が作ってきたスイーツをゴミ箱に捨てるという行為と、芦川を可愛いと思うアンビバレントな気持ちを同時に抱く二谷に恐怖を感じた。


・ここで唐揚げ弁当を食べないでください 小原晩 
小原晩さんが自費出版したエッセイ集。同居人・恋人との思い出や仕事・家族の面白おかしい悩み事が率直に丁寧な言葉で書かれていて面白かった。


・何様 朝井リョウ (新潮文庫)
「何者」の登場人物や関連する人々の前後日譚。「何者」は就活中の大学生の苦悩を描いた作品であるのに対し、「何様」は人生の意味を問うような作品だった。光太郎の初恋の話と最後の誠実さの話が特に面白かった。


・壁 安倍公房 (新潮文庫)
壁をテーマにした数編の作品。名前を無くしてしまい、全ての罪をなすりつけられる男や、影を食われて目玉だけの透明人間になった男など設定が面白かった。表現が難しく理解できないところも多かったがあっという間に読んでしまった。


・この世にたやすい仕事はない 津村記久子 (日本経済新聞出版社)
様々な変わった仕事を転々とする主人公とその周りで起きるおかしな出来事や仕事への価値観を描いた作品。これから就活する身として、どんなに簡単に見える仕事にも苦労はあるということが分かったし、自分はどうキャリアを描いていくかを考えさせられた。ストーリーは面白かったが、「さびしくない」の話だけピンと来なかった。


・そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ (文藝春秋)
母親が2回、父親が3回変わっている優子の、家族をめぐる温かい話。苗字が違えば生活も全く違い、もちろん別れもあるのだがそれでも家族であることは変わらないことがよく分かった。最初と最後だけ森宮さんの視点で描かれているのも良かった。


・ニムロッド 上田岳弘 (講談社)
小さな会社でビットコインの採掘をしている主人公・中本と、その恋人田久保紀子と、中本の同僚・荷室の間の少し変わった関係の話。何故か左目から涙が出てくる中本や誰にも見せない小説を書いている荷室など謎が多くて面白かったが、いまいち分からなかった。


・イルカも泳ぐわい。 加納愛子 (ちくま文庫)
Aマッソ・加納さんのエッセイ集。幼少期から最近のことまでを加納さんらしい切り口で関西弁で書いていて面白かった。ファンタジーとごっちゃになる感じも良かった。


・美女と竹林のアンソロジー 森見登美彦他 (光文社文庫)
「美女と竹林」という作品を出している森見氏が、数名の有名作家に「美女と竹林」というテーマで短編を書いてもらうという作品集。同じテーマなのに作家が違えば切り口も全然違っていたし、普段読まない作家の作品が面白くて興味が湧いた。最後の作品が色々オマージュされていて面白かった。


・笑う月 安部公房 (新潮文庫)
「夢」についての17篇の小説(エッセイ?)集。不思議な話が多くて面白かったが、全然意味がわからないものもあった。

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