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[9]青年の大成/安岡正篤[読了・感想]

現実逃避モードから抜け出せず、安岡正篤『青年の大成』を読んだ。私の座右の書でもある『学問の発見』(広中平祐著)に似た内容だった。ただ、癖が強いので、あまり好きになれない読者もいるかもしれない。

安岡正篤:1898年、大阪府生まれ。日本の易学者、哲学者、思想家。
旧制第一高等学校、東京帝国大学法学部政治学科卒業。金鶏学院の開学、国維会、師友会の創立など、日本主義の立場から保守派の長老として戦前戦後に亘って活躍した。(Wikipedia


## 本書の内容・特徴

如何に生きるべきかということを、青年(若者に限らない)を非常に分かり易く説いている。多くの小節があり、それぞれ2-5ページほどであり、分量的にも読みやすい。以下、感想とかまとめとか。


## 持つべきもの① 「私淑する人物」

青年と理想像

太陽の光に浴びさなければ物が育たないのと同じことで、人間の理想精神というものは、心の太陽です。理想に向かって情熱を沸かすということは、日に向かう、太陽を仰ぐということです。

これがないと人間は発達しないという。

その条件は、われわれの心の中に日常生活に真剣な理想像を持つということです。もっと具体的に言うならば、「偉大な人物に私淑する」ということ。
「人間は青年自体に(いくつになっても同じだが)心のなかにはっきりした、正しい理想像、すなわち私淑する人物を持って、この理想像に向かって絶えず努力する、そこに到達するように努力するということが青年の運命を決する問題だ(ウィリアム・ジェイムズ)」


## 持つべきもの② 「愛読書、座右の書」

持っていた方がいいだろう。私は何冊か、一軍と二軍といった形で持っています。出来るだけ蛍光ペンや付箋で、何度も読み直したいところに線を引いている。


## 貧乏であってもやり方はいくらでもある

(...)貧乏の例は際限なくある。むしろ人によると、人間は偉くなるためには貧乏でなければならぬとまで言います。過言ではありません。貧苦艱難(かんなん)、あるいは貧弱・多病、そのなかにいて偉くなったというのではなく、そのなかに居ったればこそ偉くなった、と言え得る人がどれほどあるか分からない。

幕末・明治時代の政治家として有名な勝海舟(1823-1899)は、なかなか貧乏生活ながらも、必死に勉強したとか。彼がオランダ語を勉強していたときか、家は土足で(床が無い)、勉強するところにだけわずかに畳が敷いてあったらしい。柱を削り、床を焚き物にして炊事をし、それほどの貧乏をして勉強をしていたらしい。

しかも海舟には、そんな苦労をしたような面影もない。ユーモアたっぷりの人間です。


## 頭が悪くてはだめか

馬鹿であることは、考え方次第では武器になると捉えることができる。以下の文章は、私を励ましてくれた。

鈍は時に大成のための高資質とさえ言うことができます。(...)利巧な人間はとにかく外に走り、表に浮かみ、内を修めず、沈潜し難い。どうしても大を成しにくいものです。味がありません。自分は頭が悪い、才がないということは、貧乏や病弱とともに、少しも成人に憂うることではありません。


## 寸陰を惜しむ

隙間時間を大切にしよう、塵も積もれば山となる、ということを言っている。誰もが理解している話だと思うが、忘れないようにしたい。そして、定期的に読み返したい(pp.126-)。


## 良い師友を持つ

これは「持つべきもの③」としてもいいと思う。人生では、何がどういう縁で、どういう結果を生むか測れないものがある(counterfactualは分からない!)。

私個人的な解釈は、(多くの場面では)無理して(≒精神や命を削ってまで)縁を繋げる・維持する必要はないが、自分に失うものがない、あるいは、少々の小っ恥ずかしい気持ちを受け入れてでも、縁は大切にした方がいいと思った。

青年に大切な心がけの一つは、人生の物事を浅薄軽率に割り切らないことです。人生というものは、非常に複雑な因縁果報の網で、変化きわまりない物であります。人間がこれを軽々しく独断することは、とんでもない愚昧であり、危険であると言わざるを得ません。
 論理学者に言わせると、Plurality of causes and mixture of effects. 原因の複雑と、結果の交錯です。それが実在で、その中から著しい或るものを取り出して結びつけ、これが原因、これが結果と決めるのです。
万物は多くの異質なものの微妙な統一調和からできております。そういう意味で漢学者もできるだけ西洋の哲学・文学に気をつけ、信仰宗教にも心を潜める。西洋文学をやる者は、一面厳しい哲学や倫理の書物を読む、歴史に学ぶ。
 こういうように、多面性・万華性がほしいものです。但し雑学になってはいけません。こなさなければなりません。それは心の問題です。必要とか興味とかの問題でなく、純な内面的要求に従ってやれば、決して雑学になど鳴りません。


## 本記事を書き終えての感想

現実逃避してego-boostingな本を読んだあとは、寸陰を惜しみ、トイレには必ずスマホを持ち込み、ツイッター・日経アプリを開く癖を止めよう・・・


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