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映画「うたのはじまり」

“伝えたいと思ったら手を動かしてみる”をテーマにnotoはじめます。
アートが好きです。いい作品に出会えたときに生まれる“伝えたい”という衝動は、恋のようなもの。すぐ消えてしまうので、これから書いていこうと思います。

SNSで「うたのはじまり」主演の齋藤陽道さんによる舞台挨拶の記事が流れてきて“行きたい”と思ったら、すでに満員御礼。諦めかけたら、今度は「うたのはじまり」の仮設映画館(オンライン)上映を紹介する記事が上がってきて、早速申し込みました。

“ろう”の写真家、齋藤陽道さん
齋藤さんを知ったのは2014年。「目の見えない人は世界をどう見ているのか」の著者伊藤亜紗さんのお話が聞きたくて、トークイベントに参加したときです。会場に入ってどこに座ろうかと見渡していたら、空いている席を指差してくれた人がいました。「ありがとうございます。」と顔を上げたら、あまりみたことないようなまっすぐな笑顔があって、一瞬ハッとしました。イベントが始まると、伊藤さんの対談相手が、その人、齋藤陽道さんだと知って、2度目の驚きでした。
その後も、齋藤陽道さんの作品を展覧会で何度か見ました。当時、私は“言葉になる前の衝動、本能的なもの”に興味があったのですが、齋藤さんの作品を見ていると、そんな理屈を軽々飛び越えて、答えを見せてもらえるようでした。
齋藤さんは「写真は好きで始めたわけじゃなくて、コミュニケーションのため。」と話していて、わたしの理屈っぽい思考は陳腐な戯言でしかないと思うのだけど、その人の内側からこぼれでてしまうものは、ときに胸にささります。
最近は“伝える”ことをなおざりにしていたけれど、「うたのはじまり」を見て久しぶりに私にも衝動が湧いきて、勢いでnoteデビューしてしまいました。

「うたのはじまり」は本能的なもの
映画は、2014年から2年間のドキュメンタリー。映画監督との筆談のシーンから始まります。
「うたって、なんですか?」という監督の問いかけに、頭を抱え込む齋藤さん。
聞こえないから知らない、音楽は嫌いだったという彼が、息子さんができたことで、うたと向き合う姿が描かれています。衝撃だったのは彼の奥さんの出産シーン。すべてを見せています。奥さんも“ろう”の写真家で、奥さんの在り方なくては、この映画は撮れなかったでしょう。
ふたりの子どもは聴者でした。子どもを育て、うたと向き合うことを続けて、やがて息子さんへの子守歌をうたいます。内側からこぼれでるような声、潮の満ち引きのように一定のリズムにゆられて息子さんは眠ってしまいます。唯一無二のうたと感じました。

オススメは、絵字幕版
音楽を視覚的に翻訳した「絵字幕版」への試みもこの映画ならでは。
「絵字幕」とは、音楽に合わせて画面の下に絵が流れていくというもので、わたしは瞬時に音を色や形で感じるという感覚が鍛えられてないようで、共感が難しかったのですが、新しい見方としての体験は面白かったです。
仮設の映画館は一時的なプログラムで、配給会社と映画館が収益を分配するしくみです。上映している映画館のうち、好きな映画館を選んで応援することができます。購入すると24時間繰り返し見れるのもよかったです。



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