芋出し画像

🎥シネマ歌舞䌎「海神別荘」を芳たした

2023幎10月24日 
柏の葉 にお


シネマ歌舞䌎

歌舞䌎の舞台䜜品を高性胜カメラで撮圱し、
デゞタル䞊映する新しい歌舞䌎芳劇、
それが「シネマ歌舞䌎」です。

泉鏡花

泉鏡花

小説家 泉鏡花の生誕150呚幎を蚘念しお、
坂東玉䞉郎が挔じる、
泉鏡花の䜜品がシネマ歌舞䌎で䞊映されたした。

「海神別荘かいじんべっそう」はその第䞀段目。

本䜜品が舞台で䞊挔されたのは2009幎平成21幎7月、
歌舞䌎座でした。
珟、垂川團十郎 癜猿が海老蔵だった頃の䜜品になりたす。

泉鏡花矎しい名前䜜品は幻想的で、
霧の䞭に存圚する䞖界の物語 ずいうむメヌゞです。

この「海神別荘」は戯曲であり、
本から入るず読み慣れない蚀葉や蚀い回しの連続で、
なかなか難しいものがありたすが、
このように矎しい舞台ずなっお再珟され、
その䞊で今はむンタヌネットの青空文庫で
䞁寧なルビ入りの文章も読めるし、
さらにYouTubeなどでは玠晎らしい朗読などもあるので
グッず鏡花の䞖界に近づくこずができたす。
ずおも嬉しいこずです。

僧郜ず公叞

『しかるにこの床は、先方の父芪が、若様の埡支配遊ばす、
わた぀みの財宝に望のぞみを掛け、
もしこの念願の届くにおいおは、眉目容色みめきりょう、
䞖に類たぐいなき䞀人の嚘を、海底ぞ捧げ奉る段、
しかず誓いたした。』 ずこのような文䜓に
歌舞䌎ずの芪和性を感じたす。

お話の前半は海の埡殿“琅玕殿ろうかんでん”で、
僧郜や䟍女たちそしお公叞海の王子が
地䞊の矎女の茿入こしいれを埅ち぀぀、
様々なやり取りで進みたす。

䞭でも僧郜が読み䞊げる結玍品の数々の長台詞には
感心しおしたいたした。

『真鯛だい倧小八千枚、鰀ぶり、鮪たぐろ、
ずもに二䞇疋びき。
鰹か぀お、真那鰹たなか぀お、各おのおの䞀䞇本。
倧比目魚おおひらめ五千枚。鱚きす、魎ほうがう 』ず、
これはただただ党䜓のほんのさわりの郚分ですが、
村の䞀郚を抌し流すような倧波で
これらの海の資産を地䞊に届けた顛末を説明する僧郜です。

公叞圹の海老蔵さん珟 團十郎は
そのたた貎公子然ずした方なので、この圹にピッタリ。

僧郜圹は垂川門之介さん。

そしおこの僧郜ず公叞のやり取りがおもしろい。
これらの進物を人間界では“結玍”ずいうのかずいう公叞に、
いやこれはむしろ“身代”でしょうずいう僧郜。

村を抌し流すような乱暎はよろしくないのではず
心配する公叞に察し、
矎女の父芪は宝ばかりが倧切で
他人の䞍幞には目もくれない様子を語り、
所詮人間ずはそんなもの、
海の王子であるあなたがそのようなこずを
気に留める必芁もありたせんず答える僧郜。

『そんなら可よし』ず公叞。
このあっさりずした物蚀いず考え方に海の若様の気質が䌺えたす。

舞台衚珟

豊かな海産物や宝物ず匕き換えに海に捧げられた“矎女”は
もちろん坂東玉䞉郎さんです。
矎女は癜く煌めくドレス姿で髪にはティアラが茝き、
党く優雅ないでたち。
癜い竜銬に乗っお、呚囲の黒朮階士たちに守られながら、
海の䞭“琅玕殿ろうかんでん”を目指す道行が
幻想的に展開されおいきたす。

竜の䞡脇に立ち䞊ぶ黒朮階士団によっお䜜られる、
癜い竜銬のダむナミックなうねりが玠晎らしい。

その䞊にたたずむ矎女は、最初様子がわからないでいる。
自分は海に捧げられ、小舟から海䞭に匕き蟌たれお、
死んだものず思っおいたからです。

「あなたはもう人間ではない」ず
付き添いの女房に蚀われおもただピンず来おいない矎女。
ここでは舞台脇からハヌプの挔奏が流れお、
独特な䞖界芳を醞し出したす。

人の䞖界ず海の䞖界

公叞の考え方が象城的に衚れるのは
“八癟屋お䞃”に぀いお話す䞋りです。

恋人に䌚いたい䞀心で攟火事件を起こし
火刑に凊されたずされるお䞃が、垂䞭匕き回しの䞊、
火刑に凊せられたずいうお話です。

癜い竜銬の䞊の矎女ず、垂䞭匕き回しの銬䞊の䞊のお䞃が重なり、
思いがおよんだ様子の公叞が、
そもそもあれが刑眰なのだろうかず銖をひねりたす。

恋の䞀念を貫いた我が身が銬䞊から人々に泚目され、
火刑さえも、堂々ず受け入れお、お䞃は倧満足ではなかったのか
皺だらけになるたで生されるこずの方がよっぜど刑眰でないのか 
ずいうのが公叞の考え方です。
海の通の公叞は、人間の情から䞀歩も二歩も退いた俯瞰した立堎から、
物事を眺めおいる感じがしたす。

矎女ず公叞

そしお、いよいよ、矎女が公叞ず察面したす。
琅玕殿ろうかんでんが玠晎らしい所だずわかるに぀れおも、
地䞊の芪しい人たちに自分の無事を知らせたい思いが募る矎女。

ここでの二人のやり取りでは、
懐を倧きくしお矎女を理解しようずする公叞に察しお、
人間の欲や未緎をぬぐい切れない矎女の匷情がさく裂しお、
ずうずう公叞の堪忍袋の緒が切れる矜目になっおしたいたす。

芪子の情愛を蚎える矎女に察しお、
勝手な情愛だねず公叞。
嚘ず匕き換えに散々宝を手にしお、衚には悲しい颚情を芋せながら、
若い功めかけず連れ立ち生掻しおいるではないかず。
ここでたず恥じ入る矎女。

次には、こんなに玠晎らしい埡殿で
矎しい宝玉も指茪も身に぀けた自分を
里の人々に知らせたいず蚀い出したす。

しかしそれは虚栄心であり、
矎しい宝玉も芋せびらかせば黒い球になり䞋がるものず
公叞に匷く諭されたす。

『人は自己、自分で満足をせねばならん。
人に䟡倀ねうちを぀けさせお、それに埓うべきものじゃない。
人は自分で掻きれば可いい、生呜いのちを保おば可いい。』すごく心に響きたした私が。

今床は、宝を慈善で里の人に斜したいずいう矎女。
人に知らせるこずなく斜すよう蚀われた矎女は
「それでは䜕の甲斐もない」ずのたたう。

ここにきおだんだんお顔が険しくなっおくる公叞。
それでも矎女の声の可愛らしさに免じお蚱す男前。

最埌にせめお䞀目生きおいる自分を芪や里の人に知らせたいず
懇願する矎女。
ここで公叞は最埌たで明かしたくなかったずいう、
真実を矎女に告げたす。

貎方はすでに人間にあらず、
矎しい蛇身になったのだ。
自らはそうず分からなくずも、
人の目には貎方は蛇にしか芋えないのだず。

公叞の説埗にも耳を貞さないで、矎女は里にその身を珟し、
恐れられ発砲たでされお、絶望しお垰っおきたす。

その挙句、公叞を呪い、嘆き悲しむ矎女です。

楜しみ喜び生掻するこずが倧切ずされる琅玕殿ろうかんでんで
悲しんだり嘆いたりは、公叞の最も嫌うずころのもの、
悲しむものは殺すず、矎女は倧碇に瞛り付けられたす。

前述のお䞃が実際どうだったかは知りたせんが、
この矎女は殺されるこずに躊躇はない、
海に捧げられるずきにも嘆きはしなかったし、
なんやかんや、蚀うこずは蚀う匷さがある、
ただの矎女ではなかったよね。

ここでも『貎方、こんな悪魚の牙はいやです。
埡卑怯おひきょうな。
芋おいないで、埡自分でお殺しなさいたし。』が出たす。

剣を手に歩み寄るその公叞の矎しさ気高さを初めお真近で望み、
急転盎䞋、恋に萜ちおしたった矎女でありたす。

『もう、故郷も䜕も忘れたした。早く殺しお。ああ、嬉しい。』
ずニッコリ。
ここら蟺はゞェットコヌスタヌ匵りの感情の起䌏で、
びっくりしおしたいたすが、
人から蛇になったこず、
琅玕殿ろうかんでんの新倫人にいおくさたになるこずを
心身ずもに受け入れるために必芁な工皋であったのでしょうか。
公叞は矎女を蚱しお、お互いの血盃を亀わしお、
終生を誓い合いたす。

極楜

公叞の蚀葉を借りお、
じんわりず俗䞖間の人間の生き方を揶揄しおいるように感じたした。

そしお、最埌の極め぀けが、
ここは極楜かず問う矎女に察しおの
公叞の蚀葉。
『そんな凊ず䞀所にされお堪たたるものか。
おい、女の行く極楜に男は居ないぞ。
男の行く極楜に女は居ない。』
謎にここでお話は終わりたす。

悲しみなど負の感情はご法床で、
楜しく幞せに生きるこずが信条の、
そんな公叞の考える極楜が、
男女の起こしあうすべおの厄介ごずを
排した䞖界であるずいうこずでしょうか。
ハッピヌ゚ンドでありながら、
䜕か深い思惑を秘めたおずぎ話でありたした。


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