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踏んだり蹴ったりな日々だから、せめて笑い飛ばそうと思う

私の出口戦略

トイレの際にお尻から血が出始めたのは昨年の2月ごろからだった。最初は気にもとめなかったのだが、4月になっても治らない。そこでようやく、「あれ、これは痔かも」と思い始めた。痔には3種類あることをこの時初めて知った。切れ痔、いぼ痔、痔ろうの3種類。症状から推測するに、どうやら私の場合は切れ痔のようだ。

仕事も忙しくて残業続きだったので、体が悲鳴を上げた結果かもと思い、新年度は人に仕事を任せることも覚えつつ、お尻の穴を引き締めて取り組んでゆこうと気持ちを新たにしたのだった。勤務中も心持ちお腹に力を込め、気合を入れて職務に邁進していた。

だが、よくよく調べると切れ痔というのはトイレでいきみすぎるから発生する。そのため、お尻の穴を引き締めたらかえって悪化するのである。まったく素人の生兵法はろくなことにならない。

忙しさにかまけて真剣に向き合ってこなかったが、ようやく重い腰を上げて治療法を調べてみることにした。どうやら医者にかかる前に市販の薬で対処することができるらしい。そのとき、頭の中に響くのは「痔に〜はボラギノール♫」というフレーズ。聞いたのは平成前半のはずなのに、まさか令和の時代に脳裏に蘇ってくるとは。

我が身に起こったお尻の悲劇により、広告の力をまざまざと思い知ることになった。

市販の薬を服用し始めてはや1週間。まだヒリヒリする感覚が残っている。そろそろ観念してお医者さんにご開帳しなくてはいけないかもしれない。ネット上で痔になった人の体験談を読むと、診察の際には女性の看護師が立ち会う場合もあるらしい。

向こうは仕事なので気にもとめないかもしれないが、心理的にはやはり躊躇がある。第2四半期、私の目下最大の課題は「羞恥プレイの覚悟を決めること」である。

デンジャラスなユニフォーム

中学時代に卓球部に所属していて、部のみんなで共通のユニフォームを買った。お揃いの服というのはチームに一体感をもたらしてテンションを上げる効果があるのだが、この時の私は嫌な予感が走っていた。

当時ウエストの細かったガリガリ少年だった私は(今では見る影もないが)、ズボンの裾の部分がスースーしている。スリムすぎる私の体型に、共通のユニフォームが合っていないのである。端的にいうと、ポロリする危険度マックスということだ。

中学生男子はちょうどブリーフからトランクスへと変わる時期であり、ガードの緩いズボンと組み合わさると、全世界に向けてこんにちはしてしまう可能性が出てくる。

卓球というのは俊敏性が求められるスポーツのため、姿勢を低くしてどの方向の打球にも対応できるようにしないといけない。つまり、足を大きく開いた状態にならないといけないのだ。なんということだ。卓球の基本の動きは、オーバーサイズなズボンとは相性が最悪なのである。

しかし、私には秘策があった。足を大きく開いていても、目にも止まらぬ俊敏な動きで通り過ぎれば、私の伝家の宝刀を白日の下に晒すことは避けられるのである。強烈な動機づけにより、私の動きはいつにも増してキレがあった。

いやー、己の才能が怖い。見事な機転によりピンチを抜け出すだけにとどまらず、追い風にまでしてしまうのだから。

絶好調の展開で勝利し、肩で風を切りながらみんなが待つ場所に戻り、そこで体育座りをした。

その直後、向かい側に座っている卓球部の後輩男子と目があう。その顔が引きつっていることに気づき、私は全てを悟った。

「やばい、最悪なものを見ちゃったんだけど」

やめろ、声に出してそんな日本語を読むんじゃない!

これだから中学生は堪え性がなくて困る。自分の胸の内に秘めておけばこれ以上被害が拡大しなくて済んだものを、衝撃のあまりの大きさに抱えておけなかったのだ。

私は人から言うなといわれたことは決して口外しない。いわゆる口の固い人間である。そのような私の気質は、この原体験をもとに築かれたのだ。

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