ファンタジーホラーが流行る世界線になれ~!

 本を読むのが好きだ。でも、「どのジャンルが好き?」と聞かれると、返答に困ってしまう。

 作家で言うと、森見登美彦さんが大好きだ。特に「夜行」のように少し怖くて、少し不思議で、夢か現実かあやふやな話が好きだ。言うなれば、ファンタジーホラーとでも言うのだろうか。ダークファンタジーではない。ファンタジーホラーだ。

 じゃあファンタジーとホラーが好きなのかと言われると、どちらも「別に」である。

 剣と魔法で世界を救うような話も、特段惹かれない。もちろんストーリーが面白ければ好きにはなるが、設定だけで読む気になるわけではない。和風ファンタジーは好きだが、世界があまりに生活とかけ離れているのは好きではない。ファンタジーものは戦うことが多いが、そもそもの話バトルものがそこまで好きではない。
 ホラーも然りだ。極度に憶病なので、ホラー映画を人生で一本も見たことがない。お化け屋敷にも入ったことがないし入りたくはない。ホラー漫画、小説も怖いから読めない。ホラー作品に触れたら最後、生活がままならなくなる。世代によっては分からない話になるが、ホラー系のチェーンメールで一人でお風呂に入るのも怖くなり怯えながら夜を過ごした中学時代の持ち主なのだ。

 私が好きなのは、「日常を少しだけずれたところに夢みたいな『不思議』があって、その得体の知れなさに不安ばかりが募る」といった、ちょっとした悪夢みたいな話が好きだ。ガッツリファンタジーじゃない。
 ある日いつもと違う道で帰ってみたら、知らない路地裏があって、なんとなくそこを通ってみたら、遠くから祭囃子が聞こえてくる。どこかでお祭りがやってるのかな、と思ったら腰くらいの背丈の子ども二人がはしゃぎながらこっちへ向かってくる。子どもたちは自分の横を通り抜けていく。なんとなく自分も振り返ると、子どもたちはそこにいない。祭囃子も止んでいて、首をかしげる。そんな感じの話が好きだ。

 浅学ゆえこういった作品が得意な作家をあまり知らない。内田百閒とかも好きだけど、それくらいだ。こういった作品をうまく見つけられないので、本屋さんではミステリに手が伸びることが多い。恋愛小説は好きだけど、作品によって(個人的な)当たりはずれが大きい。それに比べ、ミステリは大体どの作品でも面白い。

 特に海外ミステリが好きだ。創元推理文庫なんかは大体面白い。ミステリだとデュ・モーリアが好き。あとはケイト・モートンは日常にある「どうしようもなさ」を描くのがすごく上手で好きだ。今はもう絶版になってしまってるけど、デビュー作のリヴァトン館とか。湖畔荘の例のシーンが好きで、あのシーンの感情を味わいたいがために読み返している。

 たくさん本を読んでいると、タイトルや出だしの数行で「好みに合うかどうか」が何となくわかるようになってくる。それでも「外してしまったな」と感じたときは、あと少しで読了であってもきっぱりと読むのをやめてしまう。小説を書く人間としてこれはいいのか……? とも考える。でも、わざわざ好みじゃない作品に時間を使う気にもなれない。まあ、好きにしたらいいんだと思う。正解なんてわからないし。

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