見出し画像

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? #7

ドイツはEU初の原発ゼロを打ち出した国である。
2011年3月11日東日本大震災の福島原発事故を受けての事だ。

2011年ドイツ国内に17基あった原子力発電所は現在14基が停止され、残る3基も今年末までに停止する予定となっている。

以下、種々記事を参考に記述させて頂く。

ドイツは再生可能エネルギーの夢を見る

ドイツの電力全体に占める原子力発電の割合は、この10年間で22%から11%に低下、逆に風力や太陽光など再生可能エネルギーの割合は17%から45%に上昇している。

昨2021年の総選挙以来、原発ゼロを推進してきた緑の党は、ショルツ新連立政権のもと躍進を続けた。(東洋経済ONLINE2022年1月21日の記事

再生可能エネルギーだけでは国内の電力需要を賄いきれないドイツは、足りない分を天然ガスで補ってきた。

2020年分の国内産天然ガスは175PJ(ペタジュール)、輸入量5,474PJ、輸入の割合はロシア55.2%、ノルウェー30.6%、オランダ12.7%、その他1.6%。
なおドイツはヨーロッパのガス供給の中継地となっており、一旦ドイツに輸入されてからドイツ国内消費分を除き、他は周辺国へと輸出されている。
       (ドレスデン情報ファイル/ドイツのエネルギー関係データ

PJ
”J”ジュール国際単位系におけるエネルギーの単位。
”P”ペタは10の15乗、1ジュールは1ニュートンの力で物体を1メートル動かす時の仕事量で約0.24カロリー。
エネルギー量を原油換算百万㎘にするときは、示されているPJ単位の数値に0.0258を乗じる。    エコニュース./環境問題を読み解くことば/PJの項 

要するによくわからない

エネルギーの需要に足りない分を天然ガスで補う。
その補い先の半分をロシアが占めている。

天然ガスのヨーロッパ供給の中継地であり、天然ガス輸送の主流であるパイプライン、ロシアのノルドストリームを国内に直接ひいているドイツは、ロシアからの天然ガスをヨーロッパに供給する直接の窓口でもある。

ロシア以外からの天然ガス入手先の開拓を急ぐEUにとって、ドイツの天然ガス輸入問題はドイツ一国の国内問題ではすまないものとなっている。
そのドイツ国内で、今、残っている稼働中原発3基の稼働延長という声が、与野党からあがっている。

が、ショルツ連立政権はこれに首を縦に振らない。

正しい道

ドイツでは2022年3月にも、ロシアへの天然ガス依存を減らす為、原子力発電所の稼働延長を、という声があがった。

ドイツ経済省と環境省は3月8日、短期と中期の両方のシナリオを検討し、原発を稼働させるコストとリスクは利益を上回るとの見解を示した。

「利益とリスクを比較検討した結果、現在のガス危機を考慮しても残る3基の原発の稼働延長は推奨されない」

REUTERS 2022年3月9日記事

そして今、再び原発稼働延長の声があがり、ショルツ連立政権は、原発停止が電力供給に与える影響などを精査する「ストレステスト」実施を表明。
8月18日、数週間以内に結果を公表すると発表した。

この「ストレステスト」は3月に実施されたものと同様のテストだそうだが、今回は一段と高騰したエネルギー価格も加味し、脱原発を「より厳しい想定」の下で再点検することにしたという。

連立政権の一翼を担い、脱原発を推進してきた環境政党、緑の党のラング共同党首は8月17日に出演した公共放送ARDの番組で、賛成意見が広がりつつある原発の稼働延長について、こう言っている。

現状では正しい道ではない。選択肢を完全に排除したことはない。
現状で何が合理的かを常に検討していく」

JIJI.COM2022年8月20日記事

延期容認に含みを持たせたと取れる発言だ。

上記JIJI.COM2022年8月20日記事によると、産業界に近い連立与党の自由民主党(FDP)は稼働延長を主張。

またメルケル政権時代に脱原発を決断した野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のシュパーン副院内総務も延期に前向きで、緑の党に受け入れを促しているとの事である。

また同記事では、現在のドイツの、総発電量に占める原発の割合は6%とされており、原発の稼働を続けて発電利用を増やし、代わりに発電用のガスを暖房用に回せば、ロシアがガス供給を一段と絞った場合の対抗策になり得るとみられているという。

これから冬が近づき、ガス不足が拡大すると、脱原発の延期要求はさらに強まりそうだとされている。

前稿#6の記事で、ショルツ首相が7月22日、ロシアからの天然ガス輸送量減少で経営難となったエネルギー大手ユニパー社への支援表明した3日後、ロシア国営天然ガス大手ガスプロムが、ノルドストリーム1によるドイツへのガス供給量を7月27日朝から容量の20%まで減らすと発表した事を書いた。

ガスタービンの整備というのがガスプロム社の言い分だが、続けざまに同社は8月19日、今度は今月31日から3日間、ガスの供給を一時停止すると発表してきた。

「稼働1000時間ごとに点検が必要」なのだそうだが、そこら辺はもうどうでもいいような気もする。
作業完了後は、また元の、つまり全輸送量の20%の供給に戻すそうだ。

ドイツの原発再稼働の議論に対する揺さぶりとも取れる。

共 犯 者

2022年3月上旬、オンラインで開かれたG7エネルギー担当相会議に出席したウクライナのゲルマン・ガルシェンコ・エネルギー担当相はこう言った。

「世界は毎日、10億ドルのガス代金を私の国で人殺しをしている国の指導者に支払っているのです。ぜひ、ロシアからの化石燃料の輸入を止めていただきたい」

文春オンライン2022年6月13日記事


一瞬の沈黙が流れた後、ドイツのロベルト・ハーベック副首相・経済・気候保護担当相はこう答えたという。

「私たちは、ロシアにエネルギーをこうまで依存してしまった。
歴史的過ちだった
ただ、いま、これを言うのは胸が張り裂ける思いだが、ロシアからのエネルギーの輸入をいま、ここでストップすることはできない

文春オンライン2022年6月13日記事

ウクライナ気候変動学者スヴィトラナ・クラコブスカ氏はこう述べている。

「(欧州は)化石燃料をロシアに依存してしまい、自由を奪われてしまった。この戦争は化石燃料戦争なのだ。ロシアの化石燃料に依存し続けるということはわれわれの文明を破壊することになる」

文春オンライン2022年6月13日記事

以下、上記引用元、文春オンライン2022年6月13日記事を基に記述する。

ドイツのロベルト・ハーベック副首相・経済・気候保護担当相は、「歴史的過ちだった」と言ったそうだが、ドイツがロシア(当時ソ連)からガスの輸入を始めたのは、1973年のオイル・ショックの時だ。

以来続いているロシアからのガス輸入によって、ドイツの産業が栄えてきたという歴史がある。

「安価なロシアのエネルギーがドイツの産業競争力の基盤であり続けてきた」と、ドイツのグローバル企業、BASFのミハイル・ハインツ社長は言ったという。

背後には何万というドイツの家族の生活がある。
その基盤を捨てよ、と言うのだ。
その歴史や生活基盤であり続けてきた事全てが、”歴史的過ち”の一言に帰すものなのだろうか?

ロシアからのガス輸入停止というテーマに対しては、当然ながらドイツ産業界の抵抗は強いという。

それもあってか、ブチャの虐殺後の対ロ経済制裁強化の時、ドイツはガス輸入に関しては思い切った決断ができず、これに対してウクライナだけでなくバルト・東欧諸国からも厳しい批判が浴びせられた。

「今回、(ガス輸入禁止で)ドイツが経験するほどほどの犠牲へのためらいとドイツが10年前の債務危機に当たってギリシャはじめ南欧の国々に要求した財政緊縮の無慈悲な犠牲の要求を比べてみるがいい。
経済政策を道徳のドラマにしたがるドイツのあの有名な情熱は他国に対してのみ適用されるもののようだ」

こう皮肉ったのはノーベル経済学者のポール・クルーグマン氏だ。

氏は、ロシアのガスを遮断しない限りドイツはプーチンの戦争の「共犯者」であり、「恥ずかしいことに、侵略に対抗する民主主義国の対応の最も弱い環であり続けるだろう」と言っている。

歴史は繰り返す

「共犯者」とまで言われなアカンか?と思えた。
大体、方針を原発稼働延長にすれば、そこまで言われんでもすむんと違うか?とも思う。

そもそもドイツがここまで原発ゼロに拘るのはなぜなのだろう?
歴史や国民性に、何らかの関係があるのか?

色々調べているとドイツのすぐそばに、脱原発と真逆の親原発とも言える国があり、ドイツはその国とこれまでにもたびたび争ってきた歴史がある事に気づいた。

Case#3.11というHPによれば、全発電量の77%が原子力発電であるというフランスは、前稿#6の記事にも書かせて頂いた2021年11月、イギリス・グラスゴーで開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)の期間中、マクロン大統領がテレビ演説で、数十年ぶりに国内で新規の原子炉建設を再開するとぶち上げた。

脱原発を掲げるドイツに真向から対決姿勢をみせていると映るが、この両国は原子力発電と天然ガスをめぐっても火花を散らしている。
全ては、1973年のオイル・ショックから始まっていたのだ。

次回、EUタクソノミーを舞台に火花を散らす両国と、それぞれに賛同する国々含めた両陣営のつばぜり合いについて、書かせて頂きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?