山下達郎『FOR YOU』のジャケットに描かれた建物

山下達郎『FOR YOU』(1982年)は今やシティポップリバイバルを象徴する1枚となりました。鈴木英人によって描かれたジャケットもシティポップリバイバルの象徴となっています。では、ジャケットに描かれた建物"Turner's Radio Service"は実在するのでしょうか?

アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイトRedditにその答えを突き止めた投稿がありました。

The famous Turner's Radio building on the For You cover has since been built over by the Pavilions Shopping Center but there are some street view images from just before the Turner's building was bulldozed.

『FOR YOU』のカバーに描かれた有名な"Turner's Radio"の建物は、その後パビリオン・ショッピング・センターに建て替えられましたが、ストリートビューに"Turner's"の建物が取り壊される直前の画像がいくつかあります。

The iconic sign and façade were long since removed and painted over but some of the California palms can still be seen in the background when changing angles.

象徴的な看板は取り除かれファサード(建物の正面から見た外観)は塗り直されていましたが、角度を変えるとカリフォルニアのヤシの一部が背景に見えます。

https://www.reddit.com/r/TatsuroYamashita/comments/ps3fps/turners_radio_servicelocksmith_building_found_for/

この建物はカリフォルニア州、ロサンゼルス郡、ウェスト・ハリウッド、サンタモニカブールバード 8997番地にあったようです。

『FOR YOU』のジャケットに描かれた建物の玄関の上のひさしに"8997"と書かれた札が下がっていますが、これは住所(番地)を表していたわけです。

Googleストリートビューのタイムマシン機能で2007年7月の風景を見ると、たしかに『FOR YOU』のジャケットに描かれた建物が実在したことがわかります。

2007年7月時点の8997 Santa Monica Blvdの様子(Googleストリートビューより)

2008年6月の同じ住所を見ると"Turner's"の建物は取り壊されていました。

2008年6月時点の8997 Santa Monica Blvdの様子(Googleストリートビューより)

カリフォルニア州では建築業の営業許可が必要なのですが、"Turners TV and Radio"がこのライセンスを持っていた記録が残っていました。

ライセンスの種類はC-61 / D-5となっており、これは「通信機器、低電圧警報システムなど」の工事をするのに必要なライセンスのようです。またライセンスは1968年9月30日に取得され1985年6月30日に失効しています。

Night TempoのツイートにMitchというTwiiterユーザーが「随分前に廃業したヴィデオ店」だとリプライしています。

Turners TV and Radioがいつ閉店したのかわかりません。ライセンスが失効した1985年に閉店したのかもしれませんし、工事を請け負わなくなっただけで、その後も店舗は営業を続けていたのかもしれません。

おそらく鈴木英人は写真を元にジャケットイラストを描いたと思われます。もし雑誌などに掲載された写真を元にイラストが描かれたのなら、これだけ有名なジャケットですから雑誌が特定されていてもおかしくありません(もしご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください)。

特定されていないということは、山下達郎もしくは関係者が撮影した写真を元に描いた可能性が高いと考えられます。

山下達郎は『CIRCUS TOWN』(1976年)のB面のレコーディングをロサンゼルスのRCA Hollywood Studioで行っていますが、RCA Hollywood StudioとTurners TV and Radioがあった場所は車で約20分の距離です。もしかしたらこのときに撮影した写真を元に描かれたのかもしれません。