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筋肥大のためのトレーニングにおける変数の考慮事項

※これは最近のレビューやガイドラインを参照したものです
※細かい生理的な背景などについては省いています
※特記事項の無い限り以下の文献に基づいています

  • Bernárdez-Vázquez R, Raya-González J, Castillo D, Beato M. Resistance Training Variables for Optimization of Muscle Hypertrophy: An Umbrella Review. Front Sports Act Living. 2022;4:949021. Published 2022 Jul 4. doi:10.3389/fspor.2022.949021

  • Schoenfeld B, Fisher J, Grgic J, Haun C, et al. Resistance Training Recommendations to Maximize Muscle Hypertrophy in an Athletic Population: Position Stand of the IUSCA. Int J Strength Cond. 2021(a);1(1):1-30 doi:10.47206/ijsc.v1i1.81

考慮すべき変数について

筋トレ(レジスタンストレーニング)のプログラムを考える場合、いくつかの変数を考慮する必要がある。
Helmsらはこれについて、ピラミッド構造としていくつかの変数に言及している(Helms et al., 2018)。
これについては邦訳版の出版会社が大々的に紹介しているのでそちらを参照されたい。(以下リンクの割と上の方に大きく示されている)

FleckとKraemerは、考慮すべき急性の変数として次のものを挙げている(Fleck & Kraemer, 2014)。

  • エクササイズ種目の選択choices of exercises

  • 選択した種目の順番order of exercise

  • セット数number of sets

  • 強度intensity

  • レストの長さrest period length

なお、以下の内容は伝統的なRM法での適用を前提として説明している。VBTでのトレーニングに関しては検討していない。

負荷(強度)の設定

  • 筋肥大を志向するのであれば、幅広いレンジの強度(扱う重量)を選択できる。一方で、30%1RMを下回る負荷では筋肥大の効果が低減する可能性があるため推奨されない。また、強度を下げる場合は挙上が失敗する状態に近くなるまで反復する必要があるかもしれない。

  • 時間対効率を考えると、最も実用的な負荷として70~80%1RMが推奨される。

ボリューム

  • ボリュームは強度(挙上重量)と反復回数(=レップ数×セット数)の積として考えられる。

  • 週あたりのボリュームと筋肥大効果には段階的な用量反応関係があるようである。したがって、筋肥大を志向するにあたっては筋群あたりのボリュームを最初に、かつ最も優先的に考慮すべきである。

  • 筋肥大を最適化する上では、筋群あたり最低でも2〜3セット/セッション10セット/週必要になる。経験者であればボリュームを確保するために12〜20セット/週が必要になるかもしれない。

  • 週あたりのトレーニング頻度が筋肥大に与える影響は、ボリュームが等しい場合にはほとんどないようである
    したがって、週あたりで必要なセット数を満たすことを最優先にしつつ、短期的なボリュームの急激な変化が生じないように週あたりのセッション数を設定するのが良いだろう。

  • 失敗までの追い込みは、少なくとも初心者においては筋肥大にポジティブな効果をもたらさないようである
    熟練者であれば部分的に有用であるかもしれないが、その必要性については明らかではない。

  • 完全に挙上不可能になるまで追い込まずとも、挙上速度の大きな低下(例えば>40%)が生じるまで反復することは筋肥大を最大化する上で必要になるかもしれない(Refalo et al., 2023)。


種目とその順番など

  • 筋肥大を志向する場合、多様な運動面を動員するようにエクササイズをチョイスするのが良い。

  • 筋肥大に対する効果という点では、単関節エクササイズと多関節エクササイズの間で有意な差をもたらすことはないようである(Rosa et al., 2023)。

  • 現在のエビデンスでは、筋肥大においては種目の順番がその効果に影響する可能性は低いと考えられる。したがってトレーニング実施者は自身の好みに応じてその種目の順番を設定することができる。

  • 一般的には中心的エクササイズ(スクワットなどの多関節エクササイズ)から補助的エクササイズ(レッグカールなどの単関節エクササイズ)へと進めることが多い。ただしプレイグゾーション法などを用いる場合はその順番を意図的に前後させることもある。

  • 多様な収縮形態(コンセントリック・エキセントリックなど)を取り入れてエクササイズを行うのが良い。エキセントリックな収縮は筋肥大においてコンセントリックな収縮よりも効果的である傾向はあるかもしれないが、その差は有意ではないようである(Schoenfeld et al., 2017)。

バイセプスカールを例にとると、上腕二頭筋のエキセントリックな収縮はバーベルをゆっくりと下ろす時に生じ、コンセントリックな収縮はバーベルを上げる(肘を曲げる)時に生じる。

インターバル(セット間のレスト)

  • 一般的に、筋肥大を志向して行われる多関節エクササイズであれば120秒程度休息を取ることが推奨される。単関節エクササイズであれば短い(30〜90秒)程度のインターバルでも実施できる。

  • より短いインターバルは、成長ホルモンなどの同化ホルモンの分泌を促進する可能性があるが、それが筋肥大の効果に影響を与えるかは明らかではない。


エクササイズのテンポ

  • 一般的に、筋肥大を目的とする場合はエクササイズをゆっくりとした動作で行われることが多い。

  • 筋肥大においてはおそらく幅広いテンポを設定することができる。

  • 1レップあたりの動作時間が10秒を超えるテンポは、逆に筋肥大にとって不利益をもたらす可能性があるため避けるのが良い

  • エキセントリック相を強調してゆっくりと行う動作パターンは筋肥大を促進するかもしれない(Krzysztofik et al., 2019)。


その他の考慮事項について

  • いくつかの応用的なセットの組み方は追加の効果をもたらす可能性があるが、慢性的な効果に関する研究は不足していることが多い(Krzysztofik et al., 2019)。

  • スーパーセット法やドロップセット法といった方法は、トレーニングボリュームを効率良く増やせるという点で有効かもしれない(Krzysztofik et al., 2019; Iversen et al., 2021)。
    一方、ドロップセット法については、ボリュームが等しいのであれば従来のマルチセット法との間で有意な差は生じない可能性がある(Coleman et al., 2023)。

  • 全可動域を用いてトレーニングをすることで、パーシャルレンジでのトレーニング以上に筋肥大の効果を高めることができるようである(Werkhausen et al., 2021; Wolf et al., 2023)。したがって、筋肥大を志向する場合は全可動域を用いてトレーニングを行うことが推奨される


References

  • Coleman M, Harrison K, Arias R, et al. Muscular adaptations in drop set vs. traditional training: a meta-analysis. Int J Strength Cond. 2022;2(1) doi: 10.47206/ijsc.v2i1.135

  • Fleck SJ, Kraemer WJ. Designing Resistance Training Programs. 4th eds. Human Kinetics;2014

  • Helms ER, Morgan A, Valdez AM. The Muscle and Strength Pyramid: Training. 2018

  • Iversen VM, Norum M, Schoenfeld BJ, Fimland MS. No Time to Lift? Designing Time-Efficient Training Programs for Strength and Hypertrophy: A Narrative Review. Sports Med. 2021;51(10):2079-2095. doi:10.1007/s40279-021-01490-1

  • Krzysztofik M, Wilk M, Wojdała G, Gołaś A. Maximizing Muscle Hypertrophy: A Systematic Review of Advanced Resistance Training Techniques and Methods. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(24):4897. Published 2019 Dec 4. doi:10.3390/ijerph16244897

  • Refalo MC, Helms ER, Trexler ET, Hamilton DL, Fyfe JJ. Influence of Resistance Training Proximity-to-Failure on Skeletal Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2023;53(3):649-665. doi:10.1007/s40279-022-01784-y

  • Rosa A, Vazquez G, Grgic J, Balanchandran AT, Anoop T, Orazem J, Schoenfeld BJ. Hypertrophic effects of single- versus multi-joint exercise of the limb muscles: A systematic review and meta-analysis. Strength Cond J. 2023;45(1):49-57 doi: 10.1519/SSC.0000000000000720

  • Schoenfeld BJ, Ogborn DI, Vigotsky AD, Franchi MV, Krieger JW. Hypertrophic Effects of Concentric vs. Eccentric Muscle Actions: A Systematic Review and Meta-analysis. J Strength Cond Res. 2017;31(9):2599-2608. doi:10.1519/JSC.0000000000001983

  • Werkhausen A, E Solberg C, Paulsen G, Bojsen-Møller J, Seynnes OR. Adaptations to explosive resistance training with partial range of motion are not inferior to full range of motion. Scand J Med Sci Sports. 2021;31(5):1026-1035. doi:10.1111/sms.13921

  • Wolf M, Androulakis-Korakakis P, Fisher J, Schoenfeld B, Steele J. Partial vs. full range of motion resistance training: a systematic review and meta-analysis. Int J Strength Cond. 2023;3(1). doi: 10.47206/ijsc.v3i1.182


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