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命の水

琥珀色の液体

営業部、佐藤です。 ウイスキーが好きだ。 色、香り、味の個性。 ロックグラスに丸氷を入れてゆっくりと味わうあの至高の時間。 すべてが良い。 多少酔いが回った状態でバーに出向いて飲むときなど、もはやウイスキーを味わっているのかその場の雰囲気を味わっているのかよく分からなくなるが、それはそれで雰囲気すら美味しく感じる。 私にとってのウイスキーとの出会いは大学時代、北海道を旅した時に遡る。 小樽市の西、積丹半島のちょうど付け根あたりに余市という町があり、そこには日本の誇る二大ウイスキーメーカーの一社、ニッカウヰスキーの余市蒸溜所がある。 まだウイスキーなどほとんど飲んだことがなく、それでいてお酒には若干の興味が芽生え始めていた頃の私は、とりあえず工場見学がてらそこを訪れてみることにした。

余市

ここで一旦、ウイスキーの製造工程をごく簡単に整理しておきたい。 お酒には大きく分けて醸造酒と蒸留酒があるが、ウイスキーは後者である。 多くのお酒は酵母によって糖を発酵させることでアルコールを作り出し、それをそのまま飲めば醸造酒、加熱蒸留すれば蒸留酒になる。 ウイスキーの場合基本となる原料は大麦麦芽(モルト)で、ざっくりと言えば発酵液(もろみ)を蒸留しなければビール、蒸留器(多くの場合は単式蒸留器、いわゆるポットスチル)にて蒸留し樽熟成すればウイスキーといった具合だ。 余市蒸溜所ではより細かいウイスキー製造の工程を見学でき、伝統ある石炭直火焚蒸留の様子も見ることができた。 また見学の最後には試飲も可能で、私のウイスキー体験はまさにここから始まったといっても過言ではない。 創業者竹鶴政孝は、スコットランドによく似た冷涼で湿潤な気候に目をつけてここに蒸溜所を建設したそうである。 余市川と日本海に囲まれ、自然を肌で感じることのできる雄大な北の大地。 竹鶴が留学したスコットランドの情景が目に浮かぶような赤い屋根の建物群。 印象的なこの工場の景観は、新潟に帰ってきてからも長らく私の記憶の中にあり、それ以降の私がウイスキーに心酔することになる大きなきっかけであったことは間違いない。

世界のウイスキー

一口にウイスキーと言ってもたくさんの種類がある。 本場スコットランドで作られるスコッチの他にアイリッシュ、アメリカン、カナディアン、そしてジャパニーズ。 これらがいわゆる日本人が言うところの「五大ウイスキー」である。 トウモロコシやライ麦などの穀物(グレーン)を主原料にするアメリカのバーボン。 サントリーの山崎などに代表され、国産のミズナラ樽がアクセントとなるジャパニーズ。 それぞれに個性はあるが、やはりウイスキーを語るにおいてその本場たるスコッチは外せない。 これまたスコットランド内でも様々な地域で生産されており個性豊かだが、特に私が好んで飲むのはアイラ島で生産されるシングルモルトウイスキー、いわゆるアイラモルトだ。 アイラモルトの特徴は、海由来の潮気と独特なピート香だろう。 この島の蒸留所は沿岸に多く建てられ、樽熟成の過程で海風に晒されることによりその潮気が風味になって現れる。 またピートというのは泥炭(植物由来からなる可燃性の泥)のことであり、製造工程の初めに麦芽を乾燥させる際、このピートを焚いた煙を使用することで香りを付着させる。 アイラモルトはこれらの味と香りが顕著に現れ、時としてスモーキー、ヨード香とも評されるような非常に尖った味わいが特徴となる。

風土の味わい

ここまで書いてきて何となくでも伝わっていれば嬉しいのだが、ウイスキーの大きな特徴はそれが作られた風土の特徴を色濃く反映するものであるということだ。 土壌や風、気温や湿度。 そういった要素が幾重にも組み合わさることで、あの複雑で唯一無二の味わいができあがる。 つまりウイスキーを味わうことは、その土地の風土を味わうということに他ならないのである。 さて、近くに目を向けると、我らが新潟でもウイスキーを作ろうという試みがある。 その一つ、新潟亀田蒸溜所は、筆者の職場からも程近い亀田工業団地内にあり、2019年に設立されたばかりの小規模な蒸溜所だ。 まだ本格的なウイスキーを世に出すには設立から日が浅いため、蒸留後に樽熟成を施す前のウイスキーであるニューポットや、赤ワイン樽で2年間熟成させたニューボーンなどを販売しているようだ。 今後熟成年数が進めばきっと本格的なシングルモルトも完成するはず。 筆者の生まれ育った新潟、そして亀田の風土がどのようにウイスキーに反映されるのか。
これを楽しみに待ちながら、今夜もウイスキーを嗜むとしよう。 了

佐藤 隆彰(さとう・たかあき)

越後天然ガス株式会社 営業部総合エネルギーグループ
4年制大学文学部を卒業後、採用。法人営業部門へ(現職)
趣味は、Vtuber。あだ名は、タカアキ。

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