Radio Dinosaur #02
夏休みの二日前ぼくはいつも通り、学校の帰りにバイトに行った
夏休みを有意義に(遊んで)すごすためのお金を貯めるため、せっせと働いた
小さいレストランのウェイターで厨房とホールを往復する仕事だ
夕方を過ぎると、仕事がえりの客が軽く一杯ひっかけるために立ち寄るので
その時間帯がいちばん忙しい
もちろんこの店でもDJのラジオ番組を流していた
その日は夕方近くから客が増えはじめた
ぼくも忙しく動き回っていた
もちろん客はいつだってラジオの話し
どのテーブルでも、DJがどうした、ジョークがどうした、曲がどうした…
厨房のなかも料理人たちがいつもラジオ番組の話をしていた
店の中では誰にでも聴こえるように、ラジオのボリュームはいつもマックスだった
夕方になって客はどんどん増えていった
その日の客いりは今年一番なんじゃないかと思われた
テーブルをふいてもふいてもすぐに席がうまる
そして今日もラジオの話で盛り上がる
正直ぼくはたしかにラジオ番組を聴いてはいたけど、みんなほど興味はなかった
かといって他のみんなとラジオの話しができないわけでもなかった
そして今日もラジオの話で盛り上がる
今では話したことのない隣のクラスの生徒とも
通りすがりの町の人とも
会話の少なかったぼくの家の食卓でも
知らない同士の小さい子供とお年寄りとまでが出来る
共通の話題なんだから
ホールも厨房もごったがえした時間だった
注文をとって料理をはこんで帰った客の後片付けをして新しい客を案内して...
ラジオの音と大勢の話声と雑音の中で、あっちこちからウェイターのぼくを呼ぶ声が聞こえてくる
.....「おーいビール追加ね」ラジオの音「3番あがったよー持っていきな」ラジオの音「オーダーおねがいします」ラジオの音「料理まだあ?」 ラジオの 音「7番あがったよー」ラジオの音「ふたりだけど席あいてる?」
ラジオの音「今日のDJってさー…」ラジオの音「すみませーんお勘定」....
どんどん客が増える オーダーの数も半端じゃない 雑音も大きくなる
空いた皿がどんどん詰 み上がり、料理の皿もカウンターにどんどん並んでいく
もう店はパニック寸前の慌ただしさだった
客の笑い声、ラジオの音、皿のカチャカチャいう雑音、全部がどんどん膨れ上がっていった
だんだん客のオーダーも聞き取れなくなってきていた
このぶんだとオーダーミスをしかねない
ぼくは咄嗟にラジオに手をのばしボリュームをほんのちょこっとだけ下げた
一瞬、ざわめきがやんだ
一瞬、ぼく以外の全員が止まった
一瞬、ぼくは全員から睨まれた
.....そして次の一瞬、
『*ふざ#%ラジおまえ音@&#音きこえさ@げはやく**きい%%なぜバカじラジ!!*なにやっ$?おい*ボリュー**じゃないか@*音!音!音!』
全員が一斉にぼくにむかって怒鳴りはじめた
みんな怒っていて何をいってるのかわからない
とにかくみんなが言っているのは同じことのようだった
『なぜ音を小さくしたんだ!』『きこえないじゃないか!』『聴いていたのに』『バカかおまえは』
『はやくボリュームをあげろ!』『ふざけるな!』『ラジオ だよ!』
ぼくはすぐにボリュームを上げた
またDJの高い声が聞こえてきた
パッと罵声がやんだ
客はそれぞれちょっとぼくを睨んだが、ホールはすぐいつも通りのにぎやかさになった
ただ時々ラジオの話しをしている客の会話に、ぼくの話題がまじるようになった
「音を小さくするなんて変わった子ね...」「まさかねえ...」
ぼくはすみませんすみませんちょっと手がすべってしまって、などと
へたくそな言い訳とうまくない愛想笑いをしながら仕事を続けた
そのうちに客も厨房の人たちも落ち着きを取り戻していった
ラジオの音を下げる前のホールと変わらない
でも
ぼくだけは心臓がバクバクしていた
to be continued
※これは私が高校生のころ、昼寝をしていて見た夢の中の物語です
主人公は高校生くらいの男の子で、レトロな世界観でした
この男の子の目線で夢物語は展開しました
へんな話しで今でもその光景を思い出せます
起きてすぐにメモをとり
これまた長い長い間かかって文章にまとめたのですが
それが今頃になって出て来たのでアップしてみました
乱文、散文はお許し下さい
しかも続きも気まぐれにアップするつもりなので合わせてお許し下さい^^;
【写真】菜嶌えちか LOMO LC-A+ クロスプロセス
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