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駅のホーム お話しながら脳内再生映画

私の家は、一応東京都なのだけど、西の方で、そして私鉄は二つ使えるのですが、どちらも駅までとても遠いのです。
出かけるときは、最寄り駅まで、バスを利用したり、自転車に乗ったり、てくてくと歩いたりして、まあ、とても便利という場所ではありません。

小さな私鉄の単線のほうは、サイクルトレインで、自転車も乗ることができ、改札口から自転車が出てくる光景も、もう慣れました。
駅舎はというと、昭和のテレビドラマに出てくるような、小さい駅です。
水泳カウンセリングと、クリニックへ行くときは、私も長女と一緒に行きます。

クリニックへ行く日の朝。
駅のホームのベンチに座って、次に来る電車を待っている間の長女は結構忙しそうです。
周りに見える景色や、聞こえてくる子供の声や、昨日見たアニメの話などから、連想する話をしています。
「しんべい、ええーっと、らんたろう。きり、きり、きり、きり、きり。」
どうも忍たま乱太郎のことを話しているようなので、助け舟を出します。
「きりまる。」
「そう、きりまる。それから、なめくじ、なめくじ、なめくじ、なめくじ、なめくじ。」
朝のさわやかな風が吹き渡るホームに響き渡る「なめくじ」十連発。
長女は声が大きいのです。

周りの人たちが、なめくじ十連発の長女を興味津々見守っているので、(好奇の目で見ているだけですが。)たえかねて私が、
「きさんた。」と助け船の声を掛けます。
「そう、きさんた。」
きさんたはなめくじをペットとして、壺にたくさん入れて飼っているのです。

なめくじ十連発のあいだ、私の頭の中では、「川っぺりムコリッタ」の、あのシーンが再生されてました。
刑務所を出て、塩辛製造工場に勤める山田くんが、電話ボックスを出て、なめくじをじいーっと凝視するあのシーン。
そして、隣に住む島田さんと山田くんが、塩辛と漬物とみそ汁だけで、ご飯をお替りしながら、おいしそうに食べるシーン。
本当においしそうで、私まで食べたくなってしまう塩辛。

忍たま乱太郎のメンバーの話が終わって、ほっとしたのもつかの間。
「はさみできってください。」と、爪のわきのささくれをむしってしまった指を差し出してくる長女。
あわや、もうすぐ血が出そう。
おりしも、そこへ電車が入ってきてしまいました。

「揺れる電車の中では、はさみは危ないので使えません。クリニックまで我慢しようね。」と言って電車に乗ります。
単線なので、次の電車は12分後でないと来ません。
クリニックの予約の時間に間に合いません。
朝のラッシュ時に、騒がしい障害者乗せるなよオーラが周囲から発せられたとしても、予約の時間があるのだから、予約取るのだって大変なんだから、仕方がありません。私たちは通院するのです。

ささくれだの、洋服の糸が5ミリでも出ているのを見つけただのすると、すぐにはさみで切ってしまわないと気が済まないというこだわりのある長女。
だから私は、いつでもはさみや軟膏やバンドエイドや目薬や、その他もろもろ、何が起こっても対処できるように、さまざまなものを持って歩いています。

そんなこんなで、なんとかかんとか、クリニックへ無事到着。

それにしても、やはり、荻上直子さんの映画はどれもおいしそうです。
「かもめ食堂」も「めがね」も。
たまごやき、うめぼし、おにぎり、しおから、つけもの。
日本人のソウルフード愛が溢れています。
「川っぺりムコリッタ」の「ハイツムコリッタ」は平屋の長屋仕立てです。
昭和のころは、あのような平屋の「文化住宅」と呼ばれる建物がたくさんありました。
何とも懐かしい光景です。

川っぺりムコリッタ
荻上直子監督


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