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酢豚作りモリモリ食ったブス


酢豚が好きである。酢豚を食べる時、必ず「酢豚作りモリモリ食ったブス」という一文が浮かぶ。
         スブタツクリモリモリクツタブス
これは秀逸な回文である。編集者時代にある数学者から教えていただいた。いかがわしいものではない。杉本秀太郎『日本語の世界14/散文の日本語』(中央公論社)に紹介されている。
あまりに完成度が高く感動したので、この一文のためにその書籍を買い求め、いまでも手元にある。
この一文から、見事な光景が浮かぶ。食欲旺盛、健康的で、好きなものは好きという若い女性。しゃかしゃかと山盛りの酢豚をつくり、喜喜として食べる。将来、必ずや日本をリードするわんぱく小僧を育てるおっかさんになるであろう。決して「もう食べられなぁい」という鶏ガラ娘ではない。
回文の完成度と映像は絶妙である。その女性がブスであることは回文を完成させるために必須である。ここで私がブスであるかどうかを問うのは本題から外れる。
その数学者は東京大学名誉教授であり、1年半前に89歳で亡くなっていた。


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