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児童精神科医の気になる論文たち

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玉石金剛な医学論文の世界。児童精神科医を20年やってきて、気になる論文をチェックしていきたいと思います。読み込みが浅く、間違いがあればコメントで指摘してもらえると助かります。みん…
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#ADHD

ゲームが大好き

ゲームへの没頭はASD性よりもADHD性の方が優位と言われることが多いです。報酬系回路との関係性が高いのでしょう。 以下の論文はそんなことを示唆している論文です。 ・ADHDでは、ゲームに関してより依存性が高く、長時間プレイしていた。 ・ADHD症状の重症度とビデオゲームの使用に相関が認められた。 ・重度のADHD児は、依存性スコアが有意に高く、その性別とADHDとの組み合わせがビデオゲームの過度な使用に影響していた。 すなわち、ADHD症状とゲーム依存への関係性が改め

ADHDと血圧

ADHDと血圧に関する珍しい論文を見つけました。ADHDは児童思春期において最も多く認める精神疾患です。 一方で、ADHDの基本的な病態生理はわかっていない点も多い一方で、子どもはさまざまな身体的な変化によっても、落ち着きを失うことがあります。 体と心が繋がっていることは間違い無いでしょうし、CBTでもそのような理論で展開されています。ADHDのように行動上の特徴で規定された疾患は、その影響を直接的に受けることになるでしょう。 今回の論文は、ドイツの健康調査(KiGGS

神経刺激薬のことですね。

治療用覚醒剤って響きがすごいですが、抗ADHD薬の神経刺激薬として私たちが使っているコンサータやビバンセもこれに属するものでしょう。おそらく、アデロールに関してのコメントなのでしょうが、治療場必要なものであれば許可する必要があると思います。 私たちも診療をしているとスポーツがみるみる上達して大会に出るようになる子がたまにいますが、その際に抗ADHD薬をどう使うかの議論になることがあります。 やはり、抗ADHD薬の効果として集中力は上がります。どんなスポーツでも集中力はあっ

妊娠中の抗うつ薬使用と子供の自閉スペクトラム症およびADHD

ASDとADHDにはさまざまなリスクが知られている。今回は妊娠中の抗うつ薬との関係性を探ったシステマティックレビューおよびメタ解析論文です。内容は、18件の研究をメタ解析に利用し、妊娠中のSSRI、SNRI使用と子どものASD、ADHDリスクとの間に関連性が認められた。 出生前のSSRI、SNRI使用  ●ASD(OR:1.42、95%CI:1.23~1.65、I2=58%)  ●ADHD(OR:1.26、95%CI:1.07~1.49、I2=48%) 妊娠前のSSRI、

ADHDとうつ

児童期のADHDと、その後のうつ病との因果関係について調べた論文があります。 Author Lucy Riglin, et al.,ADHD and depression: investigating a causal explanation.Journal Psychological medicine. 2020 Apr 06;1-8. doi: 10.1017/S0033291720000665. 方法は、8310人を対象を対象に小児期のADHD(7歳)と若年成人期

教師と親では評価が違う

これはよく知られていることでしょうし、肌感覚でもそう思うでしょうけど、教師と親では子どもの評価が異なることはよく指摘されています。それはADHDだけに限ったことではありません。この論文ではADHDの診断を確実にするための予測因子として両者の評価を検討しています。 この論文の結論的には、どちらも同程度ということになりました。僕の予想とは違っていたということです。これはADHDという行動に特化した疾患だから起きたのでしょうか。ADHD-RSというスケールを使ったからであり、情緒

児童精神科医の気になる論文:COVID-19とADHD

COVID-19パンデミック時のADHDの治療はどうしていくのが良いのでしょうか。欧州ADHDガイドライングループが学会誌にコメントを出していました。オンライン診療の導入、薬物療法の継続、副作用のチェックなど臨床的示唆に富むものでした。 Cortese, S., … Simonoff, E. (2020). ADHD management during the COVID-19 pandemic: guidance from the European ADHD Guidel