豊富な毛包を持つヒト皮膚の生成

CHIR99021刺激を受けた毛乳頭スフェロイドが毛包形成を促進する役割を示しました。

　毛乳頭（DP）は毛包誘導を主導する重要な役割を果たしています。しかし、培養中に毛包誘導能力を失うことが課題となっており、培養されたDP細胞を用いて豊富なヒト毛包を生成することは難しいです。

　DP細胞の毛包誘導能力を向上させるために、過去の研究ではWntシグナル伝達経路の活性化や三次元スフェロイド培養法が試みられてきました。ある研究ではDP細胞におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達活性化剤であるCHIR99021の効果を調査し、毛包誘導能と関連する遺伝子の発現に与える影響を評価しました。

　実験によれば、CHIR99021は毛包誘導因子の遺伝子の発現を有意に増加させ、特に細胞を水滴内でスフェロイド化するハンギングドロップ培養法と組み合わせた場合に最も高い発現レベルを示しました。CHIR99021刺激を受けたDP細胞スフェロイドを用いた「毛包再構成アッセイ」では、ヒト毛包の豊富な存在が確認されました。

　CHIR99021刺激を受けたDP細胞スフェロイドは毛形成の組織化に関与していることが示唆されました。つまりCHIR99021刺激を受けたDPスフェロイドは毛包形成を促進する役割を示すため、これが豊富な毛包を持つヒト皮膚の再構成に新たな展望をもたらすことを示しています。

Yoshida Y, Soma T, Matsuzaki T, Kishimoto J. Wnt activator CHIR99021-stimulated human dermal papilla spheroids contribute to hair follicle formation and production of reconstituted follicle-enriched human skin. Biochem Biophys Res Commun. 2019 Aug 27;516(3):599-605. doi: 10.1016/j.bbrc.2019.06.038. Epub 2019 Jun 18. PMID: 31221480.