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幹細胞の不可解な反応

メラノサイト幹細胞の放射線感受性はその細胞の状態や周囲の環境に大きく影響されることが示唆されます。

 体内の幹細胞は通常、休眠状態にあることで、細胞呼吸やDNA複製などの内因性ストレスを最小限に抑えています。しかし、X線などの放射線は、細胞のDNAに深刻な損傷を与える可能性があります。これまでの考え方では、放射線は増殖している細胞を標的にするとされてきました。

 しかし、休眠状態にある幹細胞が放射線に特に敏感であることが示されました。特に、メラノサイト幹細胞は休眠状態にあるときに放射線に対して脆弱であり、早期に分化してしまうことがわかりました。

 一方で、休眠状態ではないメラノサイト幹細胞は放射線に対して耐性があります。このことからメラノサイト幹細胞の放射線感受性は、その細胞の状態や周囲の環境に大きく影響されることが示唆されます。

 これはがん治療の新たなアプローチや、体内の幹細胞のストレス耐性に関する理解を深めるかもしれません。今後の研究に大きな影響を与えることが予想されDNA損傷と放射線感受性に関する未知の情報が徐々に明らかになっていくことが期待されます。

Ueno M, Aoto T, Mohri Y, Yokozeki H, Nishimura EK. Coupling of the radiosensitivity of melanocyte stem cells to their dormancy during the hair cycle. Pigment Cell Melanoma Res. 2014 Jul;27(4):540-51. doi: 10.1111/pcmr.12251. Epub 2014 May 27. PMID: 24730534.

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