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『スリラー40』2023年12月9日WOWOWで放送~『スリラー』制作を詳細につづったドキュメンタリー

『スリラー40』2023年12月9日WOWOWで放送~『スリラー』制作を詳細につづったドキュメンタリー
 
【Thriller 40 Documentary Released : In Japan To Be On-Aired December 9th, 2023】
 
40周年。

(註:ドキュメンタリーの内容が出ます。事前に番組内容などを見たくない方はご注意ください。見ようか見まいか迷われている方、内容などを気にされない方はお読みください)
 
マイケル・ジャクソンの歴史上に残るアルバム『スリラー』が1982年11月末にリリースされてちょうど41年。その『スリラー』について、さまざまなアーティストの分析、実際に制作に携わった人たちの声を集めたドキュメンタリー『スリラー40』が全米で2023年12月2日(日本時間3日)、ケーブルテレビ「ショータイム」、「パラマウント+」で放送された。同作品の監督はマイケル・ジャクソンの著書もある元ビルボード誌ブラック・ミュージック担当編集者、ライターのネルソン・ジョージ。元々は、昨年『スリラー40周年』アルバムがリリースされたときに同時に公開される予定だったが、制作が遅れ今年の12月、ちょうどオリジナル・アルバム発売から41周年にあわせて公開された。
 
さっそく見た。作品はマイケル・ジャクソン本人がこのアルバムについて語っているアーカイヴ映像などに加え、次のようなアーティスト、関係者のインタヴューが収録されている。アッシャー、ブルック・シールズ、メアリーJブライジ、マーク・ロンソン、マックスウェル、ジョン・ランディス(「スリラー」ショートフィルム監督)、クラシック・バレー・ダンサー、ミスティー・コープランド、ウィル・アイ・アム、ラフィエール・サディーク、音楽評論家スティーヴン・アイヴォリー(本作のアドヴァイスも)、同じくLAタイムズの音楽評論家、ロバート・ヒルバーン、マイケルのエピックでの担当で現在エステートの一員、ジョン・ブランカ、クインシー・ジョーンズ・プロダクションにいてのちにウィング・レコーズを始めるエド・エクスタイン、テリー・ルイス&ジミー・ジャム、『スリラー』でギタリストとして参加しているスティーヴ・ルカサー、マット・フォージャー、マイケルとは大の親友でジャクソンズ時代からレコード面、ライヴ面でもつきあいの深いグレッグ・フィリンゲインズ、同じくスタジオ・ミュージシャン、ギタリストのポール・ジャクソン・ジュニア、LAの売れっ子バック・コーラス・グループ、ジュリア、オーレン、マキシンのウォーターズ兄弟、ティックトックのオーレ・オバーマン、ショートフィルム「スリラー」の衣装デザイナー、デボラ・ナドールマン・ランディス、ネルソン・ジョージもコメントを寄せる。



 
アルバム『スリラー』の楽曲を1曲1曲丁寧にできたときの逸話などを解説する。いずれも、『スリラー』各曲誕生のエピソードは、すでに知られていることも含め、次々と登場する。やはり、歴史をドキュメントしている感がゾクゾクしてくる。また、各アーティストそれぞれのこのアルバムに対する評価、分析が、リリースされてから40年という歳月の重みも含め、みな同じように感じているのか、思っているのかと興味深い。
 
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今回このドキュメンタリーで僕が初めて知ったのは、『スリラー』発売時に、一足先にMCAから映画『ET』に関連した『ETストーリー・ブック』のリリースとのトラブルの件。この詳細に驚いた。
 
もともとマイケルはエピック所属なので、その所属アーティストを別のレコード会社が使えるわけはないのだが、MCAがCBS(エピック)の了解なしにやってしまった。今まで知られていたのは、レコード制作は『スリラー』が始まってまもなく、この話がでてきて、同時に『ET』を作り始めるが、それを察知したエピックは、MCAに対して、『スリラー』発売より先にリリースしてはならない、『ET』から「サムワン・イン・ザ・ダーク」はシングルカットしてはならない、ということでお互い了解したはずだった。だが、MCAはこの両方を破った。アルバムは『スリラー』より2週間前に発売され、「サムワン~」もシングルとしてリリースされた。当然CBS側、当時の社長ウォルター・イエトニコフが激怒。訴訟を起こし、『ET』「サムワン~」は一部が出荷されたものの、商品引き上げ、発売中止となった。ここまでは知られていた。
 
ところが、マイケルは自身の自信作でもあり、『ET』 が大好きだったこともあり、このCBS、イエトニコフの行為に激怒。イエトニコフが「マイケルの機嫌をなだめるにはどうしたらいいんだ?」と相談したら、マイケル側は「エピックでの原盤権(マスターライツ)をよこせ」と言い、イエトニコフは「それでよければ、話はついた、OKだ」と即座にOKになったという。これには驚いた。つまり、マイケルは『オフ・ザ・ウォール』と『スリラー』の原盤権をこの一件で手にしたことになる。ひょっとしたらイエトニコフの自伝に書かれているかもしれないが、これはすごい取引ではないか。ひょっとしてジャクソンズの3枚のアルバムがこれに含まれるかどうかは話にはでてこないが。その後のいろいろな権利関係を見ていると、おそらく、この2枚の権利を得たのだろう。以後、『バッド』以降もマイケルは自身の作品の原盤権はもつようになったものとみられる。



 
「スリラー」のショートフィルムを作るときも、レコード会社はその予算を出さない、という。結局マイケルは自身のポケットマネーから出すことにして、最終的にはMTVなどとメイキング特番などを作ることで予算を引っ張り出して、なんとか制作費を集め、制作。当時一本の音楽ビデオの予算が5万ドル程度だったところ、この「スリラー」制作予算は100万ドル超え、120万ドルというのは、当時の業界誌の話題をさらったものだ。だが、結果的にこのビデオは爆発的に売れ、もちろんマイケル側には十分なお釣りがくるほどの収益がはいった。
 
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ほかにも、マイケルのパーカッシヴなヴォーカルについて、ダンスについて、「ビリー・ジーン」を『モータウン25』でやった翌日フレッド・アステアからもらった電話のことをマイケル本人が話している動画なども、彼の喜びようがさく裂していて、楽しく、見どころがたくさんある。パーカッシヴなヴォーカルについて、僕は以前からジェームズ・ブラウン譲りだと思っていたが、この点に何人かが注目していたのも我が意を得たりという感じだった。
 
マイケルが現在の多くのダンス系アーティストに多大な影響を与えたことも語られるが、たとえばマイケルの韓国のBTSへの影響のところの映像処理がひじょうによかった。マイケルの動きと、BTSがそれを真似ているところを左右2つの画面にわけ、同じものを見せるという見せ方が、ひじょうにわかりやすかった。ほかに、MCハマーから2人のジャスティン(ビーバーとティンバレイク)、はては最近のドージャ・キャット、ブルーノ・マーズまでの影響を語る。
 
ダンサー/振付師が、マイケルが踊っていた「ポッピン」「ロッキン」「ストラッティン」「ロボット」、また「ビリー・ジーン」の動きなどについての分析もおもしろい。
 
また完全なロック曲「ビート・イット」についての、マイケルの見解をクインシー・ジョーンズのアシスタントだったスティーヴン・レイが語ったりするのも興味深い。
 
それにしても、すでに何度も語られているが『オフ・ザ・ウォール』がグラミーでほとんど無視されたことが、次の作品『スリラー』への大きなモチヴェーションとなったことが様々な証言から明らかにされるところは、やはり圧巻だ。
 
MTVとの「ビリー・ジーン」のショートフィルムのオンエア確執、ペプシCM撮影時の話(マイケルはペプシは飲まない、自分が出るのは3秒以内)、モータウン25がマイケルのキャリアにおける最大のターニング・ポイントになったという話などなど、ひとつひとつのピースが有機的に集まり、繋がり、未曽有の、世界史上最大のベスト・セラーが生まれていく。
 
今回のドキュメンタリーでインタヴューが取れていない重要人物が、すでに亡くなってしまったロッド・テンパートン、エンジニアのブルース・スゥエディーンなど。またクインシー本人の最新インタヴューもなかった。そのあたりに40年という月日の長さ、重さをも感じる。
 
それにしても、いまから40年以上前の作品について、これだけ詳しく語り、一本のドキュメンタリーにまとめられることは、歴史の1頁を勉強する上でもひじょうに興味深い。
 
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日本では、「マイケル・ジャクソン 「スリラー」 40周年 ドキュメンタリー」 の邦題で、2023年12月9日(土)よる9時より、有料衛星放送WOWOWで日本初・独占放送される。
 

 
<予告編>

 
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マイケル・ジャクソン『スリラー40』
 

 
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ENT>MICHAEL JACKSON>Documentary > Thriller 40
 

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