自覚的であること

自身の深層心理に自覚的であるとは何と難しいことでしょうか。
今の彼女と付き合い始めて4ヶ月になって、そう思うことがあったので書き留めておくことにしました。

ある時私たちはお互いの使う言葉の中で、会話の中で聞いていて嫌なものをお互いに話し合いそれらを「禁句リスト」と呼んで設定していました。「禁句リスト」という名前の通り、そこにある言葉を言ってしまったらすぐに謝るというものです。設定してから嫌な言葉にお互いうまく対処できるようになり、しばらくの間それは上手くいっているように見えました。

しかしある時、私が「会話の際に禁句リストのようなルールをいちいち気にするのは嫌」と言い出し、色々話し合った結果一部のクリティカルなものを残して禁句リストは止めることにしました。また嫌な言葉が出てくるかもしれないという不安はありましたが、またスッキリした気持ちで彼女と話すことができると私は嬉しく思っていました。

しかしながら禁句リストをやめる前の感覚に慣れてしまっていたからか、やめた後も私は話し方がなかなか元には戻りませんでした。（今では大分戻ってきましたが）

そこから私の認識は歪み始めます。
私はまだ元のように好きには話せていないのに彼女が好きに話せているということから、彼女に一種の頑なさを感じ見下された(精神的に相手を下に見ること)ように感じてしまったのです。
そもそも禁句リストをやめたのは「お互い好きに話してほしい」というただそれだけの話だったのに、です。書いていて話が飛躍していることは分かっていますがとにかくそう感じてしまったのです。

どう考えても彼女には何の問題もありませんし、私が曲がった認識をしていることはわかっていました。しかし一度感じてしまったネガティブな感情は簡単には消えてくれません。愛する人に見下されているように感じる自分が何より嫌でした。なぜ自分はそう感じてしまうのだろうかと。

いつかは彼女に話さなくてはならないと思いました。一人で抱えるにはしんどすぎる感情だったのと、自分の何か奥底にある根源的な心理の傾向を、将来を考えている彼女には話しておく必要があると思ったからです。しかし数日彼女に話そうかどうか悩みました。ただでさえ話しにくいことなのに、「こうしてほしい」とか具体的で建設的なことを言える見当もつかなかったからです。

そもそもなぜ私は見下されているように感じてしまったのか。それを考えることにしました。原因が分かればこの自己嫌悪も多少マシになるはずです。よく相手は自分の鏡映しと言います。私はこの言葉を信じていて、ここに解決のヒントがあるような気がしました。つまり自分が彼女に見下されているように感じるのは、実は自分が彼女を見下していたからではないのか、ということです。そして私はこれを否定できませんでした。本当に申し訳ない思いです。

それどころかそう考えると自分の過去も含めて色々と合点がいくことがありました。小学生中学生の頃、周りの友達は皆自分より成績が下だったので周りをどこか心の中で下に見ている節があったのです。それによって私は心の安寧を保っていました。逆に高校生に上がってからは、進学校だったこともありそこには私より優秀な生徒が多くいました。特に当時付き合っていた恋人が明らかに私より少し英語ができると分かった時はひどく落ち着かない気持ちになったものです。

これを振り返ったのが私が自分の根源的な心理の傾向、つまり「精神的に下に見れる相手だと落ち着き、そうでないと落ち着かなくなる」ということに自覚的になった瞬間でした。分かってはいたはずなのですが、問題に正対して自分が人を見下すような人間であると認めるのが怖くて、この心理の傾向を深く考えることから10年以上逃げていたのです。

しかしなぜ私は見下されることにこんなに敏感なのでしょうか。書いていると自分の器の小ささに嫌気が差してきます。それは自分が見下している相手を一方的に攻撃しているからでした。相手にそう聞こえなくとも、自分にとっては攻撃的な言動をしていたのです。最も卑しい忌むべき性格です。

しかしもはや私はこの事実に自覚的なので、この心理の傾向に苦しむことはもうないでしょう。やはり相手は自分の鏡で、勝手に自分が見下されていると無意識に彼女へ投影していただけだったのです。そして一方的に攻撃されるイメージをも無意識の内に勝手に投影することで、見下されることを恐れていました。

一方で10年も自分を支配していた心理の傾向が原因では仕方ないと自己嫌悪も解決してすっきりもしました。ただし心理の傾向として健全ではない自覚はありますし彼女が嫌がるようなら直していきたいのですが、どうすれば良いか見当もつかないのが今の悩みです。

今回の一件は自分の中ではかなり大きなカミングアウトでした。おかげで彼女に対するお悩み相談のハードルが下がった気がします。関係が一発で終わってしまうかもしれないと思うとこの記事を彼女に読んでもらうのは正直とても怖いですが、もはや逃げることはできないので読んでもらう覚悟を決めました。