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コロナ総括⓭「経済を殺すな」という声が、逆に経済を殺している皮肉

経済の早期再開と1.5波

アメリカとブラジルでのCOVID19感染拡大がしきりに騒がれている。アメリカの場合、4月に大きな感染ピークがあったため、今回のそれを「第二波」と呼ぶ向きが多い。が、それは間違いだ。同国は、1回目のピークが終わらないうちに派手に経済を再開したため、感染がぶり返したのだ。つまり、新たな波ではない。いうなれば第1.5波とでもなるだろう。両国とも、経済活動を優先させるがために、感染症対策を徹底しなかったことが、再流行をもたらせた原因だ。経済活動の早期再開を指揮したトランプ大統領やボルソナロ大統領の罪は重い。
日本も東京を中心に再流行が起きている。状況はアメリカとまるで同じ、1.5波だ。そして、政府と東京都の罪も同様に重い。

正規の基準に達しないうちに
緊急事態を解除した首都圏

昨日、東京の新規陽性判明者は最多を更新して286名を数えた。日本全体では452名となり、過去3番目の多さ。このペースだとこちらも記録更新が近そうだ。直近日本の新規陽性判明者数は、イタリアの3倍近くにもなり、フランスやドイツ、スペインなど第一波で惨状を極めた欧州各国と比べても、はるかに多い数字となっている。となぜ、感染症対策で成功したといわれる日本が、ここまでの失態を演じているのか?理由は簡単だ。第一波を乗り越えることに成功した「鉄則」を、すべてないがしろにしたことだ。
鉄則とは簡単なことだ。それは「早く」「広く」対策をうち、それを「徹底」するだけのこと。緊急事態宣言下で各自治体は、それを徹底した。とりわけ、感染者の少ない県までもが自粛をしっかり行ったことは、「早く」「広く」「徹底」の三原則通りだったといえるだろう。
都会である大阪や愛知も同様に、自粛を徹底し、日ごとの新規陽性判明者を「0」近傍に抑こむことに成功している。そのあとに、経済を再開した。ここまで徹底して撲滅すると、その後、燻っていたウイルスが出てきても小規模な流行に留まり、封じ込めは容易だ。それは、中国や韓国の例を見てもわかるだろう。
ところが、首都圏、とりわけ東京・神奈川は、新規陽性判明者を「0」近傍に抑え込めないうちに経済を再開してしまった。経済再開基準の「原則値」に到達しない中で、譲歩的に設けた緩和条件により、5月25日、予定より6日早く緊急事態宣言を解除してしまったのだ。当初のスケジュール通りあと1週間程度、宣言を続けていれば、大阪や名古屋同様に、東京や神奈川も「0」近傍まで新規陽性判明者を減らせた可能性は高い。解除はそれからでもよかっただろう。つまり、たった1週間を焦り、禍根を残すことになった。これが第一の失敗だ。
よく、経済を取るか、感染症対策を取るか、などという話が議論の的になる。とかく、経済優先論者は、自粛期間を短くすることや、流行拡大期なのにGotoキャンペーンを打つべき、と主張する。ただ、そうして目先の利益を優先した余り、感染爆発が起こり、経済をダメにしてしまうのなら、それこそ「経済を取る」ことにはならない。現実的に、ブラジルでもアメリカでも経済優先論により、経済がダメになっている。そこに気づいてほしいところだ。とりわけ、緊急事態宣言を首都圏で短縮したことは、たった1週間を焦ってすべてを台無しにした、いわば、「小利を得んとして、大利を失う」典型と言えるだろう。Gotoキャンペーンも同じ轍を踏みそうだったが、ぎりぎりのところで、それを回避したようだ。

アラートなど関係なく
再開ステップを駆け上った東京

これに輪をかけて、緊急事態宣言解除後の東京都の対応は、あまりにもひどかった。
東京都の新規陽性判明者は5月24日には14名と二桁に復帰し、5月29日には20名の大台を超える(21名)。さらに6月2日には32名に増え、この日に「東京アラート」が発令された。これは感染拡大が始まったと判断される場合に、都民に警告を出すために発せられる。発令期間は、レインボーブリッジや都庁が「真っ赤」にライトアップされるというものだ。
元々、大阪の吉村知事が始めた「大阪モデル」の中で、同様に府民への警告として、府内の太陽の塔や通天閣をライトアップしたことの、二番煎じなので、アイデアとしても寒い。
東京の場合、「新規陽性者数が20人より多い」、「新規陽性者における接触不明率が50%より多い」、「週単位の陽性者数の増加が認められた」3条件がそろうとアラートが発令され、経済再開のペースダウンなどが行われるはずだった。ところが、経済再開は当初の想定を前倒しにして進め、アラート自体も6月11日にたった1日だけ週平均20人を割ったすきに、終了してしまう。その後も新規陽性判明者は増え続け、6月24日に50名を突破(55名)、6月30日には週平均でも50名を超えた。アラート基準的には、この時点で飲食店などの営業自粛要請が出るはずであったが、それもなし。新規感染者は7月2日100名を突破(107名)、7月9日には200名も超え(227名)、直近7月16日には300人に迫る(280人台)までに増えている。
ここまでの体たらくでありながら、小池知事はGotoキャンペーン叩きで、都民の批判を政府に向けることにご執心だ。これを無為無策と言わずしておられるだろうか。
打つ手はいくらでもあったはずだ。
「経済を殺したくない」というのであれば、最も効果的な対策を打ちながら、経済再開を行うべきだったろう。その対策とは他でもない「夜の街」への営業自粛要請だ。

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