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コロナ総括❺科学的に無意味な一斉休校が,社会的に大成果を上げた

 休校措置はやはり、科学的根拠の薄い独断だった


2月25日から安倍首相のコロナ対策にかかわる姿勢が急変したと多くの人が言う。
それまではともすると、専門家会議と加藤厚労大臣に任せて、「桜を見る会」問題と令和2年度予算に傾注している感があった。
実際、2月23日の新型コロナウイルス感染症対策本部(第12回)では、以下のように言明している。
「加藤厚生労働大臣を中心に作業を進めてください」
この話を受けて、翌24日に加藤厚労大臣から専門家会議での決定事項を中心に発表があった。
その内容がいかんともしがたいほど、中身が薄かったのだ。概略、以下の通りとなる。
・軽症の場合、自宅待機
・時差通勤やテレワークの奨励
・イベントの自粛の奨励
・会食の自粛の奨励
ここでは「感染症対策の基本方針」が語られるという触れ込みだったために失望感は大きかった。そこからマスコミを中心に政府への風当たりが強くなる。
局面が変わりつつあることに気づいたのか、翌25日より、安倍首相がコロナ対策の前面に立つようになったのだ。
そうして、26日にまず、スポーツや文化行事などのイベントについて「今後2週間は、中止、延期または規模縮小等」を、首相自ら強く要望する。
続いて27日には、翌週月曜(3月2日)からの全国小中高校の一斉休校を要望するのだ。休校までの準備期間は、土日を除くとたった1日しかない、まさに拙速と言われかねない要請であり、しかもこの決定については、専門家会議に諮問もしていないという。
「要請は、首相が2月27日夕、政府の対策本部会合で突然打ち出した。法的な根拠も、よるべき専門家の明確な意見もない政治判断。方針決定はそのわずか約5時間前、首相と側近ら限られたメンバーによる『連絡会議』の場だった」(朝日新聞、2020年5月4日)
首相の決定の背後にあったものを、以下のように推測する記事もある。
「当時、政権のコロナ対応は『後手』批判を浴びていた。一方、感染者が急増していた北海道は鈴木直道知事が対策を主導。2月25日に知事が道内一斉休校の独自方針を表明し、ネット世論に激賞されるのを官邸は見逃さなかった。民間と違って学校は補償も必要ないし、経済的な打撃も少ない。政権の強い姿勢をアピールできる-。全国一斉休校は、そんな政治的思惑から採用された政策だった」(西日本新聞、6月23日)
この決定に対して、政府と二人三脚でコロナ対策を行ってきた専門家会議の押谷仁氏(東北大学大学院)さえも、否定的なコメントを残している。
「学校でクラスターが発生しないとは断言できませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです。一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない」(Yahoo!特集「専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの『正体』と今後のシナリオ、2月26日)
3月11日に参議院予算委員会で、一斉休校について聞かれた上昌広氏(前出)もほぼ押谷氏と同意見を述べている。同じ場で、専門家会議の副座長である尾身茂氏でさえ、渋々賛成というニュアンスで、以下の言葉で結んでいる。
「効果がないとは言えないですね」
科学的根拠に乏しい独断であることは明白だった。

手続き的なミスは、悪い結果を生むというが・・・


準備期間は平日たった1日のみで、翌月曜から一斉休校・・・。
世間的にもこのニュースは衝撃的だった。まず、小中高生(とりわけ小学校低学年)の子供を持つ親は、休校期間中の対応に不安を募らせた。のみならず、こうした親を従業員としてかかえる企業も対策に頭を悩ませることになる。
また、本来なら放課後に児童を預かる「放課後児童クラブ(学童)」担当者も、休校期間中は朝から開所して対応するために、人員の手配に苦慮する。
もちろん、中央官庁も基礎自治体も、子持ち社員の休業補償、放課後クラブ運営予算など資金確保や制度作りに奔走しなければならない。
こうした状況は、テレビのニュースやワイドショーで、各局繰り返し流された。世間受けを狙った施策だったとしたら、大失敗と言わざるを得ないだろう。
この措置が決定されるまでの手続き的な瑕疵について、憲法学者の木村草太教授(東京都立大学)は、以下のように指摘している。
「法的根拠と科学的根拠を欠く措置はいずれ批判を浴びて解除せざるを得なくなります。安倍首相がこの要請の解除にかじを切ったのは連休に入る直前の3月20日でした。これが『解禁ムード』を生み出した。これから警戒を強めなければならない時期に、誤ったメッセージを送ることになったのです。
 もし2月末に緊急事態宣言を発令し、知事に休校権限を付与した上で、専門家に、科学的根拠を踏まえた『休校とすべきかどうかの基準』を説明してもらっていたら、景色は違ったものになっていたでしょう。宣言の下で、知事たちは休校要請や休業要請の是非を、専門家の知見を基に個別に判断できた。法的根拠や科学的根拠をないがしろにして、独裁的に事を進めると、結局のところ長期的には問題を生み出してしまうのです」(日経ビジネス、5月7日)

科学的にも効果はあったのかも(-_-;)しれない

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