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伽藍の猿(ましら)

銃、銃、銃!クソが、クソが、クソどもが!

菅原は、血と汗と雨水で汚れたシャツにジョガーパンツ姿で、薄毛頭に玉の汗を浮かべ、腹から血を流しながら、路地裏の隅で憤っていた。服から香る諸々の臭いと体臭、そしてどこかのクソ野郎のゲロの臭いが混じってより惨めな気分だ。腹の痛みは、また横流しの鎮痛剤が必要か。

あの若頭、予備の銃を持ってやがった。ヤクザもサツも最後には銃!クソが!ガキは喧嘩もできないのか!
とにかく殺した。約束の金だけは受け取る。しかし出血しすぎたか、足がふらつく。いや、これは――。
地面と意識が崩れ落ちていく。


気づけば石造りの白い部屋。できの悪い風俗嬢じみた派手な髪と服の女と、映画の衣装然とした鎧の男が、輝くような瞳で菅原を見つめていた。

幻覚?薬?馬鹿な。
イベント?しかし服は使い古され、よれて汚い。
夢?痛みは治まらない。

知るか。俺に用があるならそれは追手だ。
雑念は床に置き、菅原は拳を構えた。

【続く】

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