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ブレイズオブデスティニー 炎の誓い 第3章 氷と炎の対立Ⅱ

森の奥でナイトヴェイパーを追っていたリアラは、影の動きを察知し、無数の氷の剣を放った。

「また会えるとはな、リアラ」闇の中から姿を現すナイトヴェイパー。「だがこの場でオマエを葬ることはできん」

「臆病者め。逃げるのか!」怒号と共に更なる氷の剣が放たれるが、すり抜ける。

「またいつか心地よい悲鳴を聞かせてくれ」

去っていくナイトヴェイパー。消え入るその姿に、リアラは拳を握りしめる。

一方その頃、シアラとアルフィンは街でモンスターを撃退し続けていた。

「リアラが戻らないな」シアラの表情が曇る。

「そんなにいがみ合うのか」とアルフィンが聞くと、シアラは過去を思い出し、複雑な表情で頷いた。

シアラとリアラは幼いころから常にいがみ合う仲だった。

二人が小さいころ、エルフの里で火事が起きた時のこと。火の魔法が使えるシアラは皆を脱出させるべく奔走した。

一方のリアラは、泣き叫ぶシアラを放置して一人で脱出。姉妹の確執が始まった瞬間だった。

年月が過ぎ、それぞれ炎と氷の魔法を磨き上げたが、関係改善はならなかった。むしろ力が増すにつれ、反発し合うことが増えていった。

「どうしてあの時助けてくれなかったんだろう...」

シアラが胸元を痛める。今も姉リアラへの思いが複雑で仲直りできない自分がいることに、苦しんでいた。

過去、シアラとリアラが初めてナイトヴェイパーに遭遇したときのこと。

二人が大切に思っていたエルフの少年エンバーが、ナイトヴェイパーに捕まってしまった。助けようと近づいたシアラたちの目の前で、ナイトヴェイパーは躊躇うことなくエンバーを刺し殺した。

「やめろぉ!何をするんだ!」涙を流しながら叫ぶシアラ。

「邪魔だ。お前らには関係ない」

ナイトヴェイパーの冷酷な一言が響く。動転したシアラとリアラに尽き果てた怒りの表情が浮かぶ。

それからというもの、二人はナイトヴェイパーへの激しい憎しみと復讐心を抱くことになった。過去のトラウマが現在も影を落としている。

「くっ...モンスターの数が尽きん!」アルフィンが剣を振るい、モンスターを斬り倒す。

「任せて! 一網打尽だ!」シアラも炎の球を乱射し、次々と魔物を蹴散らす。

だが倒れたモンスターの数だけ、まるで影から生まれでるように新たな魔物が現れる。

「このままじゃ打開できんぞ!」アルフィンが背中合わせになるシアラに言う。「撤退だ」

「そうだな...」渋々ながらもシアラは同意。二人は隙を突いて街から離れる展開を選ぶのだった。

一方その頃、ナイトヴェイパーはダークグロームのもとへと舞い戻っていた。

シアラとアルフィンが街からの撤退に成功し、近くの洞窟で休息をとっている。

「これでしばらくは大丈夫だろう」アルフィンが背中を洞窟の壁に預ける。

シアラも力なく座り込む。「リアラが心配だ......無事かしら」

「あまり姉さんを心配しすぎるなよ」

「そうかな...」シアラの表情が残念そうに暗い。

一方その頃、リアラはナイトヴェイパーを追って、ある城の中に入り込んでいた。そこで自分がダークグロームの部下に囲まれていることに気づく。

「ようこそ、リアラ」背後から聞き覚えのある声。振り返るとそこにはナイトヴェイパーの姿があった。

ナイトヴェイパーに囲まれてしまったリアラ。しかし動じる様子はない。

「クソが。この場でお前を葬ってやる!」

リアラが放つ無数の氷の剣。躱しつつ中には命中するものもあるが、ナイトヴェイパーの身体をつらぬくには至らない。

「無駄だと言ったはずだ」彼が冷静に言う。「お前に敵う者はおらん」

「ありえない...!」絶望がリアラを襲う。ナイトヴェイパーが近づき、氷の剣を構える。

一方そのころ、休息を取っていたシアラたちのもとに、謎の老婆が訪れた。

「危ない! 姉上が。助けに行かねば」驚愕した表情の老婆。シアラは思わず飛び上がり、リアラ救出へ向かうのだった。

ナイトヴェイパーの前に突如現れたのは、リアラを助けるべく駆けつけたシアラの姿だった。

「シアラ! どうしてここに...!」驚くリアラ。

「姉上を見殺しにするか!」

シアラが放つ炎の嵐に、ナイトヴェイパーは身を引く。けれども逃れることができず、正面から炎に飲まれてしまう。

「ぐあああっ!」

倒れたナイトヴェイパー。シアラは無事なリアラを確認すると、その場から逃亡する。

城から出た二人。シアラはリアラを見つめる。「無事で本当によかった。姉上がいなくなるところだった」

リアラは顔をそむける。しかしシアラに助けられたことへのわずかな感謝の色がにじんでいた。

シアラとリアラが城から脱出したその時、城内でナイトヴェイパーの姿が虚像だったことが明らかになる。

本物のナイトヴェイパーは遠巻きに二人を見下ろしていたのだ。「よくやった。だがまだ次元が違う...」冷たい声が静寂を切る。

シアラとリアラはナイトヴェイパーが自分たちの前に現れたのが幻影であることを知らされショックを受ける。本物の実力が想像以上であると悟った二人は、決戦への覚悟を新たにする。

一方その頃、アルフィンは謎の老婆と共に、ダークグロームの野望阻止への蛛の糸をつかんでいた。新たなる敵との戦いへの幕開けが、そこに待ち受けているのだった。

第4章に続く

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