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イヴ・タンギーのパンク

イヴ・タンギーが脳裏から離れぬ。
彼を知って数年が経つが
ふとした瞬間に彼の顔と
その作品が脳裏をよぎるのだ。
彼は何者か。
1900年生まれでフランス出身の
シュルレアリストの画家である。
アンドレ・ブルトンは彼のことを
「最も純粋なシュルレアリスト」
と言ったらしい。
しかし私は彼の写真を初めて見た時
彼をミュージシャンだと思った。
ミュージシャンと言うよりかは
70'sパンクスである。
80'sニューウェイブ系の
ミュージシャンにも見える。
もしくはサイコビリー系のロッカー。
ウッドベース弾いちゃう的な。
しかし彼がシュルレアリストの
画家であることに
何とも言えぬ妙な衝撃を覚えた。
兵役を終えた彼は偶然
形而上絵画の創始者
ジョルジョ・デ・キリコの
『子供の脳』と言う作品を見て
衝撃を受け画家を志したそうだ。
オートマティスム(自動記述)の
実践者でもあった彼の絵画は
何とも形容しがたい作品ばかりである。
奇妙で静けさもありゾクゾクしてくる。
ダリより年齢が4つ上であるタンギーだが
ダリの作品は明らかに
タンギーの世界観から
影響を受けていることがわかる。
王立美術学校で学んだダリとは対照的に
完全に独学で絵画を始めたらしい。
まるでセックスピストルズのライブを観て
バンドを始めたパンクスのようだ。
いやはや不思議なものだ!
エルヴィス・プレスリーがデビューする
1年前の1955年に
彼は天に召されているのだから!
パンクもロックンロールも何も
まだ始まっていないのだ!
概念誕生前から概念内に存在していた
驚異的な彼の写真をマジマジと見る。
サイコビリーニューウェイブが鳴り響く!
B級パンクなリフが聴こえてくる!
現実世界で全く交差することのなかった
「イヴ・タンギー」と「パンク」の関係こそが
超現実珍談士の脳内をかき回す
文脈創造たる異世界における
『超現実』そのものなのだ。

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