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『戦国武将列伝8 畿内編下』の読みどころ解説

2月の新刊、天野忠幸編『戦国武将列伝8 畿内編下』が刷り上がって参りました。刊行に先がけまして、「戦国武将列伝」シリーズ第4弾となる本書の読み所を解説します。

本書では戦国時代中期~後期(主に天文年間~元亀年間頃)に活躍した武将40名を収録しました。

中でも核になるのは、やはり三好長慶をはじめとする三好一族および被官たちでしょう。この時期の畿内戦国史を語る上で、三好氏の動向は外すことができません。本書では長慶のほか、長慶の実子および養子である義興と義継、長慶の畿内制覇を支えた弟の三好実休・安宅冬康・十河一存、庶流の三好長逸・生長、三好宗渭、そして被官の石成友通、松永久秀・長頼・久通、松山重治らを収録し、手厚い構成になっています。
このあたりは三好氏研究の第一人者である編者の天野先生の面目躍如というところでしょう。これまで「三好氏」として包括的に語られることが多かったですが、本書によって個別の人物の動向がよりクリアになったかと思います。また、「三好三人衆」(三好長逸・三好宗渭・石成友通)が「三好三人衆」としてではなく、個別の項目として取り上げられたことは画期的ではないでしょうか。

また、本書には室町幕府の将軍は掲載していませんが(ご興味のある方は榎原雅治・清水克行編『室町幕府将軍列伝 新装版』をご覧ください)、足利義輝・義昭兄弟を支えた幕臣4名(伊勢貞孝・上野信孝・三淵藤英・真木嶋昭光)を取り上げているのも大きな特徴です。
彼らは武将としての事績はそれほどあるわけでありませんが、三好氏との間で折衝をしたり、将軍権力が衰えていく中で将軍を支えるなど難しい舵取りを迫れており、やはりこの時代を理解する上では外すことができないとのことで収録いたしました。戦国期の幕臣は書籍で取り上げられることが少ないこともあり、読者の方にとっても刺激的な内容になっているのではないでしょうか。

そして、戦国末期の畿内といえば、やはり織田信長の存在は避けては通れません。永禄の変での足利義輝の横死後、従来の秩序が崩壊していく中で上洛を果たした信長とどういう関係を築くかは、畿内の武将たちにとって大きな関心事でした。信長に付くのか、将軍に付くのか、三好に付くのか、それとも独自の動きを示すのか。そのあたりの武将たちの取捨選択・判断も大きな読み所と言えるでしょう。

このほか、六角氏や細川氏関係者、さらには和田惟政・荻野直正・鈴木孫一など、名前自体はそれなりに知られていても、実態はどのような人物なのかよくわからない人物も多数掲載しています。正直マニアックと言ってもよいかもしれません。
しかし本書を通覧して思うのは、どの武将もキャラクターが立っていて、そして何よりしぶといなと。このあたりのエネルギッシュさが、戦国武将が人気がある一つの所以なのかもしれません。
いずれにしても、どの武将の項目にも新知見が散りばめられており、刺激的な内容になっていることは間違いありません。近年、急速に研究が進展した畿内戦国史のエッセンスを存分に楽しんでいただければと思います。

ちなみに、『戦国武将列伝8 畿内編下』の特典ポストカードは↓のように細川晴元バージョンを作成しています。

細川晴元ポストカード(「英雄三十六歌仙」より)

一部書店および弊社公式通販で購入いただいた方に差し上げています。詳細は下記リンク先をご覧ください。

また、先行して刊行した天野忠幸編『戦国武将列伝7 畿内編上』をあわせて読んでいただくと、時代のうねり・変化がより深く理解できるようになります。また、地域的にとっても関係の深い平井上総編『戦国武将列伝10 四国編』ともどもよろしくお願いいたします!!


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