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司書さんスゴイの話

タイトルがすべてを物語っているとも言える。

福井県立図書館がカウンターに持ち込まれた選りすぐりの『覚え違い』を一冊にまとめた本。基本的に、本を開いて左のページに問い合わせ内容。それをめくると図書館員による正解が記されている。
一冊で90件。難問奇問によく笑った。

これはあの本だな、確かに間違えやすいよね。という題名から、いやいやそれは無理があるだろ……。という題名も沢山。3分の2は知らない題名ばかりだった。
当然のこととして問い合わせを受けた司書さんは一人ではないし、本には福井県立図書館だけでなく他の図書館や学校司書、書店員から提供された事例もある。それにしてもこれくらい本に関する知識量がないと務まらないのか、スゴイなと素直に感心した。

本の中から一例を挙げさせていただく。

1.フォカッチャ『バカロマン』 → ボッカッチョ『デカメロン』
2.ホリエモン『大きな家事』 → 松橋周太呂『すごい家事』
3.男の子の名前で『なんとかのカバン』 → 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
4.『ブレードランナー』 → 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

どれも難問すぎる。その場で全問正解出来た人は凄い。
1は勘違いが過ぎる。2は著者が「家事えもん」という愛称で活躍、親しまれているという事実も知っておかねばならないし、3は絶対カバンについて書かれた本を探してしまう。4については映画に関する知識がないと回答できない上に、タイトル原案としての小説『ブレードランナー』も存在しているのでややこしい。図書館内での検索ソフトではそちらの方が引っかかるだろう。

勿論、実際には「いつぐらいの本か」「どんな内容か」など様々な追加材料がその場のやりとりで与えられるのだろうが、こんなあやふや過ぎる質問対応を一日に平均して50〜70件も受けているというのだからまったく感服である。
生き字引のような書店員や司書が登場する物語は少なくないが、現実の司書さんもなかなかのものではないか。

そもそもこの本は覚え違いの面白さを共有するとともに『図書館のレファレンスサービスの認知向上』を目的として出版された、とある。
実際問題として、個人的にはあまり図書館カウンターを頼ったことがない。それは「こんなことで忙しい人の手を煩わせるのは申し訳ない」という遠慮や「こんなあやふやな情報で分かるはずがない」という決めつけの為だ。
しかしこの本を読めば、彼らの検索能力の高さが半端ないって、ということがとても良く分かるし、もっと頼って良いんだ、という安心も得られるだろう。
全国の図書館と国立国会図書館が共同で作っている「レファレンスサービス協同データベース」という存在もこの本で初めて知ったが、今後はなかなか頼もしい存在に出来そうだ。

単純な検索能力となればGoogle先生の右に出るものはいない。しかしそこには膨大な知識はあれど、愛に乏しい。書籍に対する愛情と、本を欲する人に対する親しみがなければ、上記のような探しものは困難だろう。多分。


『本を読むことはあらゆる人に認められた権利であり、「図書館は民主主義の砦」である。』

なるほど、図書館の本でまたひとつ良い知識を納得し、得ることが出来た。
ありがとうございます。


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