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2021年4月に読んだ本を振り返る。
こんにちは、えびかずきです。
新しい年度が始まってはや1ヶ月。
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
4月は転職活動と統計検定が終わって割と時間ができたので、ゆっくり読書をすることができました。
4月は全部で8冊読みました。
今月最も刺激を受けた本
『統計学が最強の学問である[数学編]』西内啓
統計学や機械学習を理解するために必要な数学の基礎的な概念を丁寧に説明した本です。
とはいえ内容は入門者向けで易しめ。
要するにこの本は、難しい教科書を読むための基礎作りが目的です。
統計学が最強の学問であるシリーズは全部読みましたが、私にはこれが一番刺さりました。
何が刺さったかというと、目的意識がしっかりしていて著者の思想がしっかり見えるということです。
目的はもちろん統計学の数学的な理解ですが、本書の導入部分で現在の学校教育に対する提言から始まるところが特に魅力的です。
現在の学校教育のルーツは、戦後の学習指導要領の制定です。
年でいうと昭和22年、かなり古いですね。
もちろんこれまでに時代の流れに応じて細い修正が施されてきているわけですが、私は本質的にどこか違和感があるように感じていました。
ところが最近この本を読んで、その違和感の正体は、目的意識の希薄さにあるというように気づきました。
そこで本書に記された提案は、
数学の学校教育を時代の流れに沿って、
統計・機械学習を理解することを目指して整理し直してはどうか
というものです。
その教育体系の一つの案を具体的にこの一冊にまとめているという訳です。
数学教育も目的を統計・機械学習に絞るというのは少し乱暴な気もしますが、その意図は理解できますし、なにより明快でわかりやすい。
少なくとも統計・機械学習に興味のある初学者にとっては、学校で配布される教科書よりもこの書籍の方が有益でしょう。
この本は中学生の時に読みたかったなあ。。。
本書で解説されている数学の内容に関していうと、実際のところ内容のほとんど全て知っているものでした。
「数とはなにか」から始まって、「四則演算」「論理」「Σの計算」「ベクトル」「行列」「微分・積分」という本当に基本的な内容です。
理系大卒であれば全て把握していて当然の範囲なので、本書の対象は統計や機械学習に興味のある中高生か文系社会人です。
しかしながら、もし今後自分が統計を教える立場に立った時にとても参考になりそうだと感じたこともあって自分にとって決して無意味というわけではありませんでしたし、人にも勧められる良い本だと思いました。
数学以外についても最近世間では、古文・漢文は本当に必要なのかとかいうような議論が話題になっていますが、それは結局目的が不明確であるということから来ているように思います。
古文・漢文を学習する一つの目的として「先人の心を理解する」というものがありますが、少なくとも私が高校時代に受けた授業では、そのような目的意識を教師から感じたことはありませんでした。
つまり大学受験で生徒に良い点を取らせることが目的になってしまっていて、それは本質的な教育ではないという事です。
これは逆に数学や理科なんかにも言えることです。
要するに私が何を言いたいかというと、
教育には目的意識を明確にして学問に興味を持たせることが大事なので、現場で教鞭を振るう教師の皆さん、そのあたりを意識して授業をしてもらえるとありがたいです。
ということです。
個人的な読了メモ:
・二次関数の平方完成:放物線の頂点の座標を導く事が目的
・e導出の具体例:1年後100%という複利計算、半年で50%、四半年で25%・・・と細かく分割していった先に到達する数。
・正規分布の導出がある。
統計学
『Pythonで学ぶあたらしい統計学の教科書』馬場真哉
Pythonで統計処理をするための実用書です。
あまり学術的な概念の説明に紙数を割いてないので、教科書というのは言い過ぎな感じがします。
これはあくまでもPythonユーザー向け実用書です。
とはいえPythonのヘビーユーザーである私にとっては、かなり参考になりました。
統計処理といえば「R」を使うのがスタンダードですが、Pythonもかなりライブラリが整っていて十分実用レベルで使えます。
基本的にはScipyのstatsモジュールを使って実装していきます。
『統計のはなし』大村平
初学者向けの統計よみもの。
平均、標準偏差、正規分布など統計学の基本的な概念について易しく説明しています。
また、区間推定やt検定についても易しく解説しています。
かなり古めの本ですが、改訂版が出ていて昭和から読み継がれている良書です。
統計の知識がなくても2〜3時間あれば読み終わると思うので、
統計を学ぼうとしている人の最初の一冊におすすめです。
特に参考になったのは、分散の不偏推定量の平方根は、標準偏差の不偏推定量と等しくないというところでした(p111)。
個人的な読了メモ
・ヒストグラムのクラス数にはスタージェスの式(≒1+3.3logn)がよく使われる
・第1種の過信確率αと、第2種の過信確率βは、あわてんぼうの確率とぼんやりものの確率とすると覚えやすい。
・ワイブル分布:信頼性工学で使われる機械の故障確率を表す汎用性の高い分布
小説
『探偵AIのリアル・ディープラーニング』早坂吝
『犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー -探偵AI 2-』早坂吝
「AI」っていうワードと表紙に絵に惹かれて読んでみました。
内容はミステリーで探偵モノ。
天才学者が残した探偵AI「アイ」と犯人AI「イア」が対決するというお話。
小説のテイストとしては、西尾維新の戯言遣いシリーズにかなり近い。
個人的な感想としては、もう少し小説だからこそ書ける生々しさみたいなもの欲しかった。人物の心理描写ん深掘りとかトリックの技術的な具体性とか、ちょっと物足りなかった。
私がAI分野の知識をある程度もっているせいで、物足りなく感じるのかもしれませんが。
『遠い太鼓』村上春樹
村上春樹のヨーロッパ旅行記。
80年代後半の3年間にギリシャとイタリアに住んで小説を書いていた時の記録です。
観光地とはかけ離れた、かなりマイナーな島や街について書かれているので、他にはない感じで面白い。
特に印象に残ったのは、イタリア人がかなりテキトーな人種だということ(笑)。
郵便が届かなかったり、街にはスリが多かったり。。。
日本人とは根本的な考え方がかなり違いそうです。
気楽そうで羨ましいなと思う反面、イタリアで長く暮らすのは大変そう。
旅行に行く時は気をつけよう。
個人的な読了メモ
・レズビアンの語源は、ギリシャのレスボス島
『村上ラジオ3 サラダ好きのライオン』村上春樹
村上春樹が雑誌ananで連載していた記事を集めた、エッセイ集。
このシリーズは、絵がかわいくて好き。
特に印象にのこったのは、車に歯ブラシを常備していて、信号待ちの時にいつも磨いているという話。
私事ですが実は先日、左上奥の銀歯が取れちゃって、虫歯って嫌だなあと思っていたところでした。
歯は大事にしたいですね。
『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』村上春樹
90年代半ばに雑誌週刊朝日に連載されていた記事を集めた、村上春樹のエッセイ集。
安西水丸さんの素朴な絵がなんともほのぼのした雰囲気を演出しています。
印象に残ったのは、昭和文学集へ「1973年のピンボール」を入れたいという話を出版社から持ち出されたが、それを断った話。
著者の承諾を取る前にパンフレットを作っちゃってて、営業的にもう引くに引けないから、村上さんここは折れてくれませんかという、いかにも村上春樹が嫌がりそうな理由で交渉されたせいで、余計嫌になって断ったみたい。
確かに出版社のそういう厚顔無恥なやり方が気いらないというのは共感するのだけれど、その後担当者が自殺しちゃっというから話は単純ではありません。
今はどうか知りませんが、業界の闇を感じます。
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