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2019年3月の記事一覧

四月の嘘

政府は人為的に海底火山を噴火させ島を作り、国土面積を広げようと考えた。
場所の選定に時間はかからなかった。コンクリートの塊で島ではないと批判されることがあった沖ノ鳥島と、韓国が実効支配する竹島の二点に絞られた。その付近で噴火させ、溶岩が島を飲み込むようにするのが狙いだった。これなら莫大な費用をかけてコンクリートで補強する必要もなく、韓国軍と戦う必要もない。
計画は秘密裏に行う必要があったし、前もっ

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「サイズが合うのがなくてすいません」
差し出されたダボダボのスウェットを着た。俺は気になってつい聞いてしまった。
「お一人で生活されているんですか?」
「ええ、主人が亡くなりまして」
表情が曇ったのを察し、それはお気の毒に。お辛いのに泊めて頂いてありがとうございます。もし、男手が必要な事があれば言って下さい。
「それでは明日、水を運んで頂けますか?」
女はそう言った。
「ええ、分かりました」俺は快

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沼地のピヴォ

試合は静かに始まり、一進一退の攻防が続いていたーー。
だいたい、自信がある奴っていうのは寄せが早い。そういう動きをしてくれるなら逆手にとって、簡単に抜き去ることができるんだが、問題は一定の距離を保ったまま飛び込まない奴。これが経験値のある証拠で、目測で歩幅の計算をし、俺が大きく蹴り出そうものならすかさず寄せて肩を入れ、進行方向の主導権を握る。駆け引きとしては目立たないが、熟練した間合い管理は必勝法

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縁の花

ウチに男が住んでいる。掃除、洗濯、料理といった家事の一切合切は完璧にやってくれる男だ。
でも、この男は買い物が得意ではないからわたしが買い物に行かなくてはならない。
ずっと前に家具を買うためにホームセンターに連れて行った事がある。男は終始青ざめた顔で脂汗をかいていた。いわゆる適応障害というやつだ。本人からすれば窒息するような心持ちなのだろうけど、わたしはゾンビが助手席に座っていると考えると面白くて

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