言語による音楽表現の違い。日本語の発音が演奏に及ぼす影響。
こんにちは、ファゴット奏者の蛯澤亮です。楽器を吹いたり、youtubeやnoteで情報を共有したり、コンサートの企画運営をしています。
早速ですが、今回は日頃の話し方が音楽的に影響を及ぼすのかということを考えたいと思います。
言語によって演奏スタイルは変わる?
よく、使っている言語によって演奏の違いが出ると言われます。英語やドイツ語は発音がはっきりしているので演奏もはっきりし、しっかりと演奏するとか、イタリア語は流れがあるから歌うようなフレージングができるだとか、日本語は平坦だから演奏も平坦になるとか。
それ、本当なのでしょうか?
実際、私がウィーンなどにいて感じたのは、まあ、あるかもな、というレベルです。
正直、ヨーロッパ人だろうがアメリカ人だろうが日本人だろうが、どこの国の人間でも、どこの地域の人間でも、センスがある人はあるし、ない人はない。それを努力で補いきる人もいるし、補いきれない人もいる。まあ、実力の世界ですからそのままです。
しかし、自分が使っている言葉というのは常に頭に響いているものだし、話せば話すほど、そのリズムや響きは自分の感覚に染みつきます。ですからその言語、または話し方が演奏をする時の感覚に影響は必ずあるのではないかと思います。
強弱の概念
大学時代に声楽の先生に言われて興味深いことがありました。
「独語や英語は強弱でアクセントをつける。伊語は長短、日本語は高低でアクセントをつける」
その時に、これが日本人の演奏の躍動感やメリハリの無さなのではないかと感じました。
確かに英語や独語は強弱のアクセントですね。アクセントという音楽的な概念そのままです。
しかし、伊語は長い音がアクセントになるそうです。確かに言われてみればそんな雰囲気ですね。しかし、伊語のことはわからないのでやめておきますw
さて、我らの国語はというとアクセントは高低、つまり音程なのです。
高い音がアクセント。高い音から低い音にいけばその高い方の音がアクセントになります。これは西洋音楽のアクセントの概念とは全く違います。
つまり、日本語の強弱というのは実は意識されていないのです。だから英語や独語を話す人たちは日本語を話す時に変なところにアクセントをつけて話してしまう。彼らにとって平坦に話すことが難しいのだ。
逆に日本人は常に平坦に話しているから英語や独語を話す時も平坦に話してしまうことが多い。ジャパニーズイングリッシュとか言われるのがそれだ。もちろん、それぞれが母国語なまりで外国語を話すわけで日本語なまりで話すことは全く悪いことではない。しかし、相手に通じる程度の発音は必要なわけで、全く慣れていない人が英語を話しても通じないのはこのアクセントの感覚がないことが大きいのではないかと個人的に思う。
アクセントはリズムもつくる
アクセントという強弱がつくことでリズムも生まれる。リズムが生まれてくるとフレーズが生まれる。強弱のない日本語が難しいのはここだ。強弱がないことで単語の区切りも文節もはっきりせず、どこで切って良いかもわからなくなってくる。政治家の演説が下手なのもここではないかと思う。強弱のアクセントをつけてリズムと流れを作ればもっと聴きやすい演説になるかもしれない。
実際、最近は講演のプロの話し方をyoutubeなどで見ることができるが、売れている講演家と呼ばれる人の中にはこの強弱がしっかりとある人がいる。どこを強調してどういうリズムでどういう流れで相手に伝えるかを考えているのは音楽表現そのままだ。
つまり、この強弱を意識するかしないかで演奏も変わるのではないか?
自分の話し方の中に強弱を意識することなどなかなかないだろう。変についてしまってはきつい話し方に感じるし注意が必要かもしれない。だが、一度意識することで新しいことが見えるかもしれない。音楽的な感覚が変わるかもしれない。
意識することで変わること
実際、私はこれをコンサートトークで意識することで演奏と演奏の間にトークを入れても演奏に支障がなくなってきている。独語で話しても感じなかったが、日本語でトークを入れると感覚が一旦途切れる感覚があった。しかし、この強弱を意識して話を作っていくことでそれが緩和されるようになった。
ほんの少しのことだ。このどうでも良いようなちょっとしたことを意識することで確実に私の中で何かが変わった。そして演奏もしやすくなった。私からの一つの提案、ご興味があればぜひお試しください。
それではまた。良い1日をお過ごしください。
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