涙の見た夢

まろやかで爽やかなハッピーエンド。悪魔の夢はカラフルに彩られたブーケのような世界を保っている。いつだって。それが呪いになるから。

幸せな結末。人魚姫が王子様と結ばれて出航するほどの大団円。ありえぬほどしあわせ。

悪魔にだって個体差はある。

これを、ああ不気味なユメを見た! 断言するやつもいれば、くそう、悪夢を見た、悔しがるものもいる。そして涙をそっと流して己の境遇と生まれと宿命を憐れむものもいる。

得てしてノロイには個体差がある。
悪魔にも個体差があって当たり前だ。そっと、涙を流した悪魔は、しばし茫然として夢が溶けて消えるのを待ってから、人間を陥れに向かう。仕事に向かう。なんだかブラック会社に務めざるを得ない人間みたい。

得てして必然、世界は何者かの涙のうえに積み重なられていく。どんな生きものであれ。どんな涙であれ。生きているから、経験が異なるなら、涙も質がちがう。

悪魔は、ときに同僚の悪魔の涙すら奪う。同僚の悪魔すらも陥れる。
人間社会と同じ、動物社会と、植物世界と、すべてと同じ。


これが、現行の神なるものが造り給うた世界のすがた。で、ある。



END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。