解体ラブスト-ショート-2
「鹿馬!」
名を呼ばれてふり返る。ニュアンスが込められた呼び方は、直感して解るものがある。
特に、人をバカにしていれば。
「なに」
ブランドが名折れする。こんな下品な女に着られて。デザイナー、しかし名の通るファッションも、どこも世界の上層は汚濁にまみれて濁っている。
デザイナーが純粋であるとしても。
完成品は泥に漬けたほどに醜く汚れているだろう。
カネをまわせる、カネが入る、カネになるとは、利用されてきたあとの残骸を指す。
「金返してついでに調達もやって。いつもの口座。アンタんところの男娼ヘタクソだから再教育しとけよ」
「店のヤツに言ってもらえますか」
「ヘタクソだから殴った。手ぇ回しておいて」
商品に傷をつけられては困る。店とのトラブルの仲裁だった、要するに。
ようするに、助けてくれ、そうという内容だ。
面倒を起こしてしまったから助けろ。
助けが要る。
(死んでも言えない台詞だな)
この実母には。
このクソ女。には。
しかしボクは母に差し出された店の名刺を受け取り、次の仕事場に向かう傍らに電話をかける。所詮は仕事、どうせ仕事、あれも。これも。仕事のひとつ。
END.
読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。