完全なる肉体(たんぺん怪談)

あとは、翼を与えれば、完全なる生命体となる。世界の主からデザイナー職をまかされた職人は、登場する種族を年代別にそれぞれ描きおえて、それから、仕上げにとりかかる。

主は、最後には、星を代表する最高傑作をご所望である。

どうも最後の最期には、それが、主の食事となるらしい。まぁそれは仕方がないこと。家畜、養豚場のブタだって、最高傑作にしたら出荷するのである。そのようにデザインして主の食事場であることを示唆してみたりした。

ついでに、主の食事だから、ソレには喰えば不老不死になるという特性を与えた。主の姿に似せて、地上ではいちばんの美女。海ではいちばんの美男。それぞれの特徴を与えて、半人半魚の完全生命を組み上げてゆく。

職人は、所謂、ニンギョと呼ばれるものをデザインして、肩をなでおろした。そして少し考える。

あと、ひとつ。
なにかひとつ。
そうだ。

陸、海を制覇するのだから。
空を制覇しよう! 人魚に翼を与えれば、すべてを自由に泳ぐ、完全なる命になる!

しかしながら、この案は、主に見つかるなり、職人は罰としてクビにされた。神に近づきすぎてはならぬ。翼は、ソラに近づきすぎる。

その日の主の食卓は、新鮮な肉のステーキだったそうである。
養豚場のブタ、そんなデザインは、主も起きに召したからだ。そしてそれを考えた頭も、体も、手足も、神に召されることとなった。

これは恐い話である。


END.

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