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ショートショート 3本

初めに

 このショートショートは、私が中高生の時に入っていた文芸部の部誌の企画として書いたものです。
 「フレーズガラポン」と言って、部員がワンフレーズを書き出し、クジで各フレーズの担当者を決め、そのフレーズが必ず出てくる400字程度の作品を作る、という企画でした。私の友人の発案で部誌の四冊目から始まりました。
 いかに相手に書きにくいフレーズを渡すかを考える、意地悪な高校生でした。そうすると、自ずと相手からも書きにくいフレーズが渡ってくるものです。一つ目の作品は、本当に無理矢理書きました。
 そんな楽しい記憶とともに掘り起こされた三作です。軽く読めるので、ぜひお読み下さい。


河童の川流れ

 僕が洗濯物を川ですすいでいると、突然緑色の物体が流れてきた。ソレは河童だった。河童は気絶していたが、体は生温かかった。
 桶に入れて連れ帰ると、母さんがうどんをゆでていた。母さんは桶を見ると、驚いた顔をした。

「それ何?」

「僕のペット。」

「あらそう、やさしくするのよ。」

 母さんはそう言うと、何事もなかったかのように僕にうどんを渡してきた。
 僕は河童を桶に入れたまま座り、うどんをすすった。僕は河童の名前を考えてみた。

「君は五郎だ。さあ、五郎もうどんを食べな。」

 僕は五郎の口にうどんを入れようとしたが、手で開こうとしても無理だった。

「しょうがないなぁ。ココに入れとくからね。」

 僕は五郎の皿にうどんを入れた。
 五郎は目をグルンと回して、閉じた。

「眠くなっちゃったの?じゃあ、他の皆とおねんねしようね。」

 部屋に入り、他の桶と並べた。ここは臭う。
 どうやら、河童たちの皿にゆでたてのうどんを乗せると眠くなるようだ。

ワンフレーズ 「河童たちの皿にゆでたてのうどんを乗せると」


ドロっとしたもの

 今日は初めてやかんでお湯を沸かす日だ。
 それで何かを作るらしい。
 私はまず、お母さんに手渡された細長い袋を開けた。中には得体のしれない何かが入っている。

「これをお椀の中に出してね。」

 私は、そのドロッとしたものをどうにか出し切ろうと、強く押してみた。
 どうにかして出し切ったソレは、水っぽくて、舐めてみるとちょっとしょっぱかった。
 次にもう一つの袋を開けた。
 中身は粉っぽく、緑っぽかった。

「それも入れてみな。」

 袋を開け、パラパラと入れてみた。
 その後ろでやかんからフシューと、音がした。

「さあ、お湯が沸いたわ。ミノリ、この中にお湯を入れるのよ。気を付けてね。」

 少しずつお湯を注ぐと、湯気が立ち上ってきた。

「箸でゆっくり混ぜて。跳ねないようにね。」

 混ぜながら、すぅっと立ち上ってくる湯気は嗅ぎ覚えのある香りだった。
 そうだ、あれだ。私は顔をあげ、お母さんと目を合わせた。

「お味噌汁の出来上がり、だね!」

ワンフレーズ 「私は、そのドロッとしたものをどうにか出し切ろうと、強く押してみた」


新発見

 私たちは宇宙同好会。
 各国が競い合って宇宙開発を進める中、どこの国にも属さず、技術もお金もない私たちは手をこまねいていた。
 しかし今、私たちには強い味方がいる。T博士という、有名な学者だ。

「木星の第二衛星に、『生物』がいるという」

 そんなT博士の言葉をもとに調査をはじめ、T博士の提供してくれた装備で早速、木星の第二衛星―エウロパに向かった。
 装備はすべて最新のもので、今まで見たことのない不思議な色形をしたものだった。頭にバネのようなアンテナもついている青の丸いフォルムの宇宙服に、シルバーの円盤型の宇宙船まである。奇妙奇天烈なものばかりだが、使い心地は最高だった。私たちはエウロパに降り立ち、嬉々として調査を始めた。
 数日後、轟音とともに、巨大な物体がエウロパに降りてきた。驚いて、氷の影に隠れながらその物体を凝視した。しばらくすると、その物体からU国の宇宙服が降りてきた。降りてくるなり、私達のほうに走りよってきた。私たちは驚いて、自分たちの宇宙船のほうに走って逃げた。後ろで一瞬、強い光を感じた。
 翌日、私たちの後ろ姿が新聞の一面を飾った。U国のT博士が、「新発見だ」とコメントしていた。

ワンフレーズ 「木星の第二衛星に、『生物』がいるという」




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