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個人経営飲食店の弱者の戦略 Part.3 ~プレゼン能力と信頼関係構築編~

今回はPart.1で少し触れた、

食後酒と二件目のワイン需要を狙っていたことだ。
これはまた別の記事で書くことにする。

この部分を書こうと思う。
まだご覧いただいていない方は、よろしければPart.1から是非どうぞ。


お客様を自分(スタッフ)のファンにする。

Part.2でも言ったが、これこそが弱者の戦略だ。
僕はそれでお店を運営してきた。
以下に実例を踏まえて説明しようと思う。


キラーアイテム

僕にはキラーアイテムがあった。
それは、自家製のリモンチェッロという、
イタリア発祥のリキュールだ。

これを作るのは至極簡単で、
レモンの皮だけをホワイトリカーに漬け込み、
レモンの風味を移したのち砂糖水で伸ばした物だ。
1週間くらいで出来上がる。

僕は自家製で作っていたが、
一般的な作り方と違う方法で仕上げて、
明らかに違いを感じてもらえる様にしていた。

それを提供するときには必ず、
門外不出のレシピで・・・なんて期待を抱かせて、
既製品と飲み比べて、実際に違いを感じて貰って、
「へ~!」を引き出していた。

僕は飲み比べ対象の為だけに、
既製品を仕入れていた。
当然、無料で提供するものだ。

自慢ではないが、僕が作っていた方が、
既製品より美味しかったと思っている。

そうすると、僕のリモンチェッロファンが出来る。

ある日、一部上場企業役職付きの常連のお客様は、
会社内での食事会後の二件目を選ぶ際に、
部下をわざわざタクシーに全員乗せて、
僕の店まで引き連れて来てくれたことがあった。

「おいしいリモンチェッロ飲みに行こう」
と言って連れて来てくれたらしい。


プレゼンテーション能力

僕はアップセルと二件目利用のために、
食後酒はかなり揃えていた。

専門的な話になるが、
イタリアのデザートワインはグラス売りで、
必ず5種以上、多い時で8種はあった。
グラッパという食後酒も5種以上置いていたし、
リキュールもイタリアの物は網羅していた。

が、種類を置いているお店は別段珍しくもない。
但し、プレゼンテーション方法が、
他と違っていたと自負している。

僕は、食後酒を飲みたいお客様のテーブルに、
例えばデザートワインなら、全てのボトルを目の前に並べて、

イタリア地図をワインリストに載せていたので、
そのワインが生まれた地図上の場所を示しながら、
ブドウ品種やワイナリーの事、特徴などを簡潔に伝えていった。

デザートワイン一杯のために、
ボトルを運ぶ時間を含めて10分はプレゼンに費やしていた。

それを見ていた他のテーブルから、
こっちも!ということもあったりして、
僕のお店では食後酒が良く出た。

これは一例だが、これは決して僕だけの強みではない。
知識と慣れで誰でも出来ることである。


前述の御一行様は、当然リモンチェッロだけで終わるはずもなく、
そこからなぜか赤ワインが4本空き、
おつまみにチーズと生ハムが人数分出る。
という嬉しい誤算もあった。

当然そうなると、閉店時間は大きく過ぎるのだが、
吹けば飛ぶような小さなお店には、
めちゃくちゃありがたいお客様だ。

お客様にとって数多の二件目の選択肢から、
わざわざタクシーを利用して部下を連れて来てくれる。

ここに来たら俺(私)の顔を立ててくれる。

という信頼関係が成り立っているからこそ、
二件目に選ばれたのだ。

リモンチェッロや食後酒はフックに過ぎない

プレゼンの向こう側が大事だということだ。


信頼関係は、どうやって構築するか?

ポイントは3つ。
Part.1で書いたオーダーメイクと、
Part.2で書いたお見送り。

最初と最後はとても大事で、
ここは絶対に外してはいけない。

とともに、Part.2で少し触れた、
お食事の背景を知ることが重要だ。

僕はこの背景を汲み取る能力のお陰で、
お客様からの信頼を勝ち得たと思っている。

同じお客様でも多様なシチュエーションがある。
その食事会の立ち位置はどうなのか。
カップルであったら、どう接すればいいのか。
部下と一緒なら、どう立てれば嬉しいのか。

飲食店をやっていると、自店の都合を鑑みることが多々ある。
その思考を省く事が、はじめの一歩だ。

それがダメな時もあるが、
それは他のお客様に迷惑がかかる時だ。

常にお客様側に立つ。
その思考を磨くことが大事で、
その実績がリピーターの多さという事だ。

簡単そうに書いているが、とっても難しい、
僕にとって日々修行だった。


察知するアンテナ

言われなくても、察知する。
汲み取る能力があると信じてくれているからこそ、
前述のように、何かの折には来てくれる。

例えば今回なら、閉店時間を超えてでも、
彼ならきっと上手くやってくれるだろう。
という信頼関係だ。

実は当店は22時ラストオーダー、23時閉店だった。
今からリモンチェッロ飲みに行ってもいい?
と連絡があったのは22:00くらいだ。

当然二つ返事でどうぞどうぞと言って、
そこからタクシーで着いたのは25分後。
お客様が帰途につかれたのが、1時前だった。

こういった臨機応変さが、個人経営店の強みだ。

弱者の戦略は、背景を汲み取り、
どうサービスすればいいかを考える。
これをただ日々繰り返す。それに尽きる。

ちなみにそのサービスが正解だったかどうかは、

またお客様が来てくれたかどうか?

そこだけだ。

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