布団に入らないで服を着てしばらく寝る:『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』書下ろし構成前の生の日記

書籍『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』に収録した書下ろしの日記は、日々の日記から、いくつかのトピックをぬいて1日のできごととして再構成して書き上げました。
この日記は再構成前の「生の日記」で、2023/05/21の文学フリマ東京36でペーパーとして販売したものです。ペーパーと同価格で販売します。


 起き出し、洗濯機を回すべく子ども部屋の前を通ると暗がりのなかで息子がベッドの上に座っていた。国語辞典を片手にしている。

「『うたたね』ってなんだろうと思って調べてた、おはよう」「ほう。おはよう」「布団に入らないで服を着てしばらく寝ること、だって」

 あまりに急なうたたねの語釈の披露で、なぜ「うたたね」を? と思う気持ちはそれなりにあったのだけど、言われた語釈がまた意外だったから「へぇ~」のほうが勝った。

 うたたね、ちょっと寝ること、くらいの感覚を持っていたが、なるほど布団と服が大切だ。就寝は寝巻を着て布団に入る、寝るぞという気概とともにある。うっかり寝てしまった、ちょっと寝る、そんな気軽な眠りに寝巻と布団は無い。言葉に具体性を持たせる術に深く感心した。

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