「先生と同じスピードでノートに写しなさい」

授業において、めあてや学習問題を視写させるとき、                    「先生と同じぐらいの速さで黒板の文字を写しなさい。」                   という指示をよく聞く。

優れた実践家の授業を参観すると、教師が学習問題を書き終える同時に、ほぼ全員が書き終える光景をよく目にする。                        子どもたちの筆速が高まれば、その他の学習活動の時間を確保できるので、授業内容の充実にもつながっていくであろう。

それでは、どのようにして筆速を高めていけばよいか。                私の経験上、授業での「先生と同じぐらいの速さで黒板の文字を写しなさい。」だけでは、子どもたち全員の筆速を高めることは難しい。

「第三の書く」の著者である青木幹男氏は、書くことの「慣れ」と「筆速」を高めるための方法として、日常的な「視写」を挙げ、以下のポイント(一部)を示している。

○視写は常に、教師と子どもが同時進行で行う。                    ○教師は板書、子どもはノートに書く。                    ○このとき大切なのは筆速。教師は教師自身が何回かの試書きによって、先に調べたクラスの平均筆速を手に入れておく。                    ○この筆速で、全員の視写速度を上げていく。                    ○この筆速は、速い子にはまどろっこしい速さであり、遅い子には骨の折れる速さである。                                  ○そこで、速い子には丁寧に書くこと、遅い子には多少の文字の乱れはOKとし、全員がそろって書き上げることに集中させる。                    ○視写の時間は、低学年で5分から7分、中高学年で7分から10分ぐらい。                                          ○書き上げたら、2分~3分の調整の時間を設ける。乱れた文字を直させたり、遅れてくる子どもを待ったりする。                        ○こうした視写を繰り返していると、そのうち書き慣れてくるし、速さもそろってくる。

私は、新聞記事を視写する時間を10分ほど、朝の時間に組み込んでいたことがある。継続していると筆速は思った以上に高まることが分かった。          

授業中の学習問題の視写速度は、子どもたち全員、ほとんど私と変わらなくなった。当時の記録を見返してみると、子どもたちも、自身の筆速の高まりを実感することができていたようである。

「視写」するものによっては、単に「筆速」を高めるだけではなく、「言語の獲得」「文章理解」「表現への意欲」にもつながるであろう。

目的に応じて「視写」する教材を選択し、日常的に「視写」(タイピング等も考えられる)の機会をつくることのメリットは、予想以上に大きいかもしれない。



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