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自由進度学習を考える① ~質の高い自由進度学習が成立する前提は?~

 今、様々なスタイルの自由進度学習の実践が出てきています。
 書籍等で紹介される自由進度学習の中には、「それは自由進度学習か?」と批判されるものありますが、それは「自由進度」、つまり個々のペースで学習を進めること等のとらえ方の違いだと考えます。

 私は、自由進度学習には様々なスタイルがあって良いと思いますし、「〇〇が自由進度学習である」とスタイルを定義づける必要もないと考えています。
 教育委員会は、自由進度学習に限らず、様々なモデルを作ってしまいがちですが(学校からの要望があることも)、現状で自由進度学習のモデルを示すと、それに引っ張られてしまう、または、そのスタイルに無理矢理合わせてしまう学校が出てくる可能性があります。それでは本末転倒になりそうです。重要なのは、スタイルの共有より、考え方の共有だと考えます。

 どのようなスタイルの自由進度学習であっても、うまくいっている学校の取組には、ある程度の共通する考え方や、取組を行う前提があるはずです。

 ここ2年ほど、自由進度学習に取り組んでいる学校を視察して、授業参観したり話を聞いたりしてきました。その中でわかったことがいくつかあります。

 まず、前提ですが、いわゆる落ち着かない学級では、いきなり自由進度学習を取り入れるのは難しいと考えます。これは想像に難くないでしょう。
 
 自由進度学習は、基本、自分で計画を立て、学習方法や学習形態を自己選択しながら個々のペースで学習を進めることになりますが、孤立した学びではなく、協働的な学びも必要になります。
 
 協働的な学びのためには、令和答申にあるように「子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する」ことが大切です。

 ざっくり言うと「多様な他者と目的達成のために協働できる」「互いを意見やよさを認められる」などの風土が学級に必要ということです。
 このような風土がほとんどない学級においては、いきなり自由進度学習を行うのは危険と考えます。

 これらの風土は、授業を中心に子どもたちと作り上げていくことになると思いますが、一朝一夕にはできませんし、教師の指導性も必要になります。時間が経つとそのような風土が生まれるわけでもありません。

 教師の指導性については、改訂された生徒指導提要において、以下の「生徒指導の実践上の視点」がヒントになります。
 ① 自己存在感の感受
 ➁ 自己決定の場の提供
 ③ 共感的な人間関係の育成
 ④ 安全・安心な風土の醸成

 教員は、日常的にこれらの視点で生徒指導を行い、一人一人の自己指導能力を身に付けるという意識が必要であり、その視点での指導・支援の積み重ねが、質の高い個別最適な学びと協働的な学びを生み出すと考えます。
※余談ですが、自由進度学習がうまくいっている学校においては、一斉指導においても、子どもたちの学び合いも非常に活発なところが多いです。

 私は特に③④が肝と考えます。
 ③については、「失敗を恐れない、間違いやできないことを笑わない。なぜ、そう思ったのか、どうすればできるようになるのかを皆で考える支持的で創造的な学級づくりを行うこと」
 ④については、「お互いの個性や多様性を認め合い、安心して授業や学校説活が送れるような風土を、教員の指導の下、子どもたちが自ら作り上げようとすること」
になります。

 自由進度学習は、それ自体のスタイルや、内容を考えるだけではうまくいかない可能性が高いです。まず、成立する前提に目を向けることが大切と考えます。

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