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優れた学級経営をする先生方50名に調査

同じ指導をしているはずなのに、学級によって違いが出るのはなぜだろう。
例えば、給食の時間の準備。
多くの教師は「子どもたちが協力して早く準備できる」ように指導する。 しかし、指導する内容が同じにも関わらず、1ヶ月後には、様々な学級が見られるようになる。

教師の指示に従っててきぱきと動く学級。
教師の指示がなくとも、すべてできる学級。
給食当番がいつまでも並ばない学級。
準備の時にとても騒がしい学級。
など様々である。

どうして、このような違いが見られるようになるのだろうか。

もちろん、指導者の経験や力量の違いもあるだろう。                                                    しかし、最も大きな要因は、「教師の姿勢・考え方」の違いではなかろうか。教師は、子どもたちにとって最大の教育環境である。               
それゆえ、教師の姿勢は、子どもたちの成長や、その方向性に大きな影響を与え。考え方によって、子どもに対しての接し方や指導法が多少異なってくる。

「教師の姿勢・考え方」は言動に表われ、ヒドゥン・カリキュラムになる。ヒドゥン・カリキュラムが学級集団や学級経営に与える影響は、予想以上に大きいものだ。

教育委員会に勤務していた頃、学校や大学と連携して、優れた学級経営を行っている先生約50名に「教師の姿勢・考え方」に関するインタビューをしたことがある。結果、以下のような先生方の共通点が見えてきた。

○基本的に上機嫌である
子どもたちは、教師の態度によって大きな影響を受ける。上機嫌の先生の周りには、子どもたちが集まってくる。上機嫌の教師の学級は明るく活発であることが多い。一方、いつも不機嫌な教師の学級は、子どもたちは叱られ過ぎて教師に反発したり、暗い雰囲気だったりすることが多い。

上機嫌な教師は、子どもたちや保護者との信頼関係を築くことができ、指導も通りやすくなる。メラビアンの法則から、見た目が大切なことが分かるように、優れた学級経営をする教師は、自分の表情や感情のコントロールに気を遣っている人が多いイメージである。

○責任内在論を持っている
自分の指導がうまくいかない時、子どもばかりにその責任を求めるのではなく、「自分の指導が子どもたちに合っていないのではないか。」などとと自分を振り返るのが責任内在論である。
責任内在論の教師は、児童の実態に応じて、次の手立てを考える。一方、そうでない教師は、子どもに責任を求めるので、指導が変わりにくい。指導が変わらないので、子どもたちも変わらない。これが結構なストレスになる。ストレス軽減のためにも、適度な責任内在論をもつことは大切と考える。

○原因論より目的論を重視する
ある子どもが不適切な行為したとする。
原因論では「何が原因で不適切な行為したのか。」と考える。
一方、目的論では「不適切な行為をした目的は何か。」と考える。
もちろん、ABC分析などから分かるように原因論も目的論も大切である。しかし、原因論ばかりで考えることが習慣になっている人は、どうしても、その子どもの特性、家庭環境などの要因に目が向いてしまう。この要因を改善することはなかなか難しい。目的論を重視した方が、手立てが取りやすい。
例えば、不適切な行為の目的が「承認してほしいという欲求」であったとする。そうであれば、様々な場面でその子どもが「承認される場面」を意図的に設定するという考え方が出てくる。いつ、どんな場面で、どのような指導をすればよいかなど、より具体的な手立ても生まれてきやすい。

○信頼関係を築くことを重視する
「A教師の言うことはよく聞くが、B教師の言うことはあまり聞かない。」「A教師の指導はよく通るが、B教師の指導は通りにくい。」
ということをよく耳にすることがある。
この差は、どこから生まれるのだろうか。
私は子どもとの信頼関係の差だと考える。
子どもに限らず人は、「何」を言われるかより「誰」に言われるかに少なからず影響を受けるものである。大人社会を考えてみても当然と言えることではないだろうか。だからこそ、信頼関係を築き、その「誰」になる必要がある。教育は信頼関係の上に成り立つのである。

子どもとのよりよい信頼関係を築くことのメリットは、計り知れない。
信頼関係は徐々に出来上がってくるものである。信頼関係を築く大切さを自覚しながら、子どもたちと誠実に向き合っていく姿勢が大切であると考える。

○生徒指導の機能をいかす意識をもつ
生徒指導を語る上で、ぜひ知っておきたいことがある。それは「人格形成を目指すための人格の構造(領域と資質)と教育作用」である。

認識的領域・・・・・知識理解・・・よく分からせる  
神経・筋肉的領域・・技能・・・・・やり方を身に付けさせる
感情的領域・・・・・・ 意欲・・・・・やる気を引き出す

人格形成を目指す学校での教育活動は、この3領域からアプローチしなければならない。しかし、多くの場合、感情的領域が手薄になる。学級経営が上手な教師は、感情的領域の大切さを知り、適切な手立てを打っている。
つまり、やる気を引き出すことに力を入れているのである。
「やる気を出せ!」という指導?は、認識的領域のアプローチになる。しかし、それだけでは子どもたちは動かない。やる気の出し方を教えたり、意欲を引き出したりする手立てをとる必要があるということだ。

以上のような「教師の姿勢・考え方」を大切し、学級経営をしている先生方は、学級が安定しているだけでなく、自治的集団になっていることが多いと感じる。



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