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3月25日

春。別れと出会いの季節である。
かつての友人たちとの別れを惜しみ、新たな出会いに心躍らせる。そのような時が、私にもあった。

これはそんな私の、新たな出会いと苦労の話である。

しんみりしている導入だが、これから書いていくことはしんみりというよりは初めて親元を離れて一人暮らしを始めた私の苦労話というか、ヤバい話として聞いてほしい。今はあまりこの話をしなくなったが、昔はいろいろあったのだ。

一人暮らしといえば、まず大きな壁としてぶち当たるのが家事である。
家族と暮らしていると大体母がこなしていて気づかないことが多いものの、一人暮らしをしたことがある人ならば誰しも、一般に「家事」といわれるものを毎日やっていくのはまあまあ難しいと気付くはずだ。
個人的には、その「家事」と呼ばれるものの中で最も難しいと感じたものが料理だった。
ただし、ごはんを作ること自体が難しいのではない。
「できる限りまな板を使わず」(洗うのがめんどくさいので)に、さらに「今冷蔵庫にあるものだけ」で、料理を済ませるのがめんどくさいのだ。
そもそも料理を作るには相当なプロセスがある。
まず今日のごはんは何を食べようか考え、次に冷蔵庫にあるものが何かを考える。うまくそこで作れればいいが、時々冷蔵庫にあるものではいかに手抜きをしようとも作れないことがある。(オムライスを作るとき、冷蔵庫に玉ねぎがなくてもぎりぎり作れるがウインナーも鶏肉も何もなければ相当厳しい。)
そんな感じであーでもないこーでもないと料理を決め、やっと手を動かすことができる。これだけでも30分はかかる。外に買いに行くとなれば、今日作る料理に加えて「今週作りそうな料理」もプラスして考えなければならず、相当めんどくさい。慣れてくれば多少はましになるが、それでもめんどくさい。
特に一番めんどくさいのが、冷蔵庫にあるものの賞味期限である。
これに一番苦しめられたのは一人暮らしを始めてすぐのことであった。

そろそろ本題に入ろう。
今回の題にした3月25日、これは私が初めて一人暮らしを始めた記念すべき日だ。この日、事件というか事故というか...ともかく個人的には相当な悲劇の幕開けとなる出来事が起きた。
当時、料理や賞味期限について全く知らず、全く想像がつかなかった私は、ただ食料を買いに行く頻度を抑えるためだけに、ネットを参考に1週間分の食料を買い込んだのだ。文字にしてみると意外とマシに見えるが、自分の冷蔵庫いっぱいに生ものを買い込んだのである。一人暮らし初日に。これが一つ目の不幸である。
さらに不幸は重なる。
私は賞味期限を延ばす方法を知らなかった。
例えば、今なら、多少多めに食料を買い込んでもとりあえず冷凍しておけば1-2か月は持つことくらいはわかる。それなのに、当時はそのことすら知らなかったのだ。(冷凍すると味が落ちて食えないと思っていた)
さらには、賞味期限が切れた食材を捨てることに抵抗があった。
「これ腐っているのかな?」と考えるのも何か怖かったし、明らかにヤバい雰囲気を漂わせている食材には怖くて近寄れなくなった。捨てるか考えるのが嫌で放置していた。これが第3の不幸である。

これらの不幸が重なった結果、1か月ほどたった時には冷蔵庫の中は地獄のようになっていた。
当時買った鶏肉はヤバいにおい(マジで文章では表現できないくらいのヤバさ、身の毛もよだつようなというか、本能が危機を訴えているようなというか、ともかく身の危険を感じるヤバいにおい)を発し、ホタルイカ(なぜか買っていた)も限界の様相を呈していた。そんなものがそこいらじゅうにあふれ、とても飯を保存している場所ではなかった。
時々家に友人が掃除しに来てくれていたのだが、冷蔵庫だけは、ガチで拒否感をあらわにしていたのもよくうなづける。マジでやばい。

こうなると冷蔵庫に近づかなくなって終わり、という風にもなりそうなのだが、運よくそうはならなかった。
これは友人のおかげだ。間違いないと思う。
私自身はそこまで冷蔵庫の中身に興味がなく「そのままでもいいかな」程度に考えていたのだが、その友人は真面目な顔で繰り返し「あの冷蔵庫はヤバい、きれいにしろ」と言い続けてくれた。気にしていないことでも言い続けられると「ほんとにヤバいのかな」と思うようになるものでいつしか「あーこれはまあまあヤバいことをやってしまったんだなあ」と気づくようになった。

掃除をすることにした。
とりあえず、異臭のするものは捨てた。さっきの鶏肉とホタルイカはそのままごみ箱にポイした。ついでにほかの肉系もすべて捨てた。野菜も捨てた。
冷蔵庫にあったものは基本すべて捨てた。牛乳とか、その他いろんなものをすべて捨てた。

効果は絶大だった。
冷蔵庫は買った直後の状態に戻っただけだが、鼻をつんざく異臭は消え、冷蔵庫の隙間ができ、新たに食料を買えるようになった。
さらに、「ヤバいと思ったらとりあえず捨てる」精神ができるようになり、食料が腐る前に対処できるようになった。
また、賞味期限を意識した食料管理ができるようになったのもこれがスタートである。食料が意外と早くダメになることを知り、できる限り早めに料理したり冷凍したりして期限を延ばすような行動ができるようになった。

もちろんこれらを一日でできるようになったわけではないが、この出来事が一つのターニングポイントになったことは間違いない。

皆さんも食材を買い込むときは計画的に...

P.S.

最近は鶏肉/豚肉/ひき肉を1日で合計1.5kgほど買い込んでいるので全く計画的ではありませんが皆さんはくれぐれも真似をしないように...

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