記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

太宰治『グッド・バイ』

※写真は青森県金木町にある斜陽館です。太宰にちなんだものがたくさん置いてあるので太宰ファンの方にはオススメです^^

本日は少し、『グッドバイ』を読んで感じたことをつらつらと書かせていただきます。
※非常に冗長な記事になっていますので、太宰や戦後文化などご興味のない方はとても退屈かと思いますが、ご覧いただけるとうれしいです^^

欺くということ

p49
「信頼している者を欺くのは、狂わせんばかりの地獄である」

裏切った人間は良心の呵責から地獄のような苦しみに悶えるということでしょう。

なりたい姿との葛藤


p52
秩序ある生活とアルコールやニコチンを抜いた清潔な体をシーツに横たえることを願いながらも、薄汚い泥酔者としてうろつきまわっていた

なりたいと願った姿になれない葛藤が見られます。

サロン

p52
サロンは知識の「戦時日本の新聞」以下である
・・・
戦時日本の新聞は信じられるような記事は一つもなかったが、ただひとつ人の生死の情報だけは確かだったが、サロンではそれさえ出鱈目であった。
・・・
戦争が終わって余は戦争反対であって自由主義者だという便乗主義に乗るつもりはない
戦時中からヒトラーを軽蔑し、東条に呆れていたが私は日本の味方であったのである

サロンは一方的に天皇という虚構を信じさせる知識の淫売店であり、本物の知識ー自分を不幸から救う知識は与えてくれないということ。サロンは偽善であった。偽善は太宰の一番嫌うものであったそうです。

イデオロギーの空虚化

p.不詳(確認できませんでしたすみません( ;  ; ))
戦後の日本文化がまた一つ堕落しそうだ。
所謂文化人の叫ぶ何何主義などはサロン思想のようで、それは発明された当初の真実を失い、この世界の新現実と有利して空転している

→三島の思想と共通点があるように思いました。三島由紀夫は東大全共闘との対話の際に、「イデオロギーを捨ててでも、大義を成すためには妥協するというのは間違っている」と指摘しました。イデオロギー、主義主張が本質や目的を失うことを非難するという意味では、ここに三島との共通点が意外にもありそうです。

自由思想とは

p.不詳
闘争の対象のない自由思想は意味がないのだ
・・・
日本の大敗北は、西洋科学が、キリストという闘争対象を的に生まれてきたという背景を鑑みなかったことにある。
・・・
今軍閥官僚を罵倒したって自由思想ではない

→自由思想とは圧制や束縛のリアクションとして生まれるもの。日本では闘争の対象が明確化されていなかったから、思想の根底を固められなかったということを言いたいのかと感じました。 日本思想を固めるには新しい闘争対象を規定する必要があると主張?

再び三島由紀夫との共通点

p.不詳
今こそ何をおいても、自由思想家は天皇陛下万歳と叫ぶべきである。今日においてはそれが最も新しい自由思想だ(という旨の記述)。

→完璧に三島と共通していると思います。
天皇に代表される日本文化、つまり国運と自分の運命を一体化させて考えることで、国の体制が悪くなれば自分の状況も従って悪くなるという論理に達しますが、
これを回避するために国を変えなければならない、革命、自由主義をとるということは、天皇陛下万歳の精神の元で行われるべき*だということでしょう。

*この部分は個人的に、戦時中の、天皇と自分の運命の合致によって陶酔感を得ることに喜びを見出すことが必然となった人々の自らを納得させるための論理に聞こえてしまいます。


文献
太宰治『グッド・バイ』新潮社、1949年。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?