真空ジェシカ「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」
「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」
にっこり笑って、彼はあの時、私の身体を抱き寄せ、引き上げたのだった。
なにもないのに涙が出るとか、生理が来ないとか、食欲が湧かないとか、そういういわゆる不調、みたいなことは無かった。
大丈夫。
晴れた日にはカネコアヤノとネバヤンを聴いて、雨の日は小袋成彬とyonawoが多めのプレイリストを聴く。
久々に会う友達との約束にはお笑いラジオを聞き、思わず笑ってしまわぬように気を付けて電車に揺られながら向かう。
映画を1日1本ペースで観る。部屋を暗くして映画館ぽくしてみる。胸を打たれる台詞や、俳優の目線や間などの演技に心揺さぶられ、泣く。
これらは同時に、出かける機会も会ってくれる友達も映画を堪能できる時間もあるということの証明。
だから大丈夫。大丈夫。
羊を数えるようにこの言葉を唱えても、寝付けない。眠くない時は寝なくてもいいよという天の声が降ってくる。寝ないことにするが、それはそれで暇だ。
小学生の頃、寝付けずに天井とか壁の一点を見つめているとそこの模様が顔みたいに見えてきて急に怖くなって目を瞑って、気づいたら寝ていた、というのをよくやっていたなあなどと、しょうもないことを思い出す。
寝て起きたらきっと大丈夫、大丈夫。大丈夫…。
まだ脳内リフレインは続く。その言葉の意味するところとは裏腹に、指先の動きは忙しない。2時17分。こんな時間に起きていて話相手になってくれる人なんて居ないとわかっているのに。
寂しいとかじゃなく、情けない、自分自身にそんな感情を抱く。結局5時くらいまで起きて、その後睡魔は律義にやってきやがった。
大丈夫、
ではない。むしろこれは黄信号だ。ガクの髪色の黄色。あれは金か
決まったアーティストやプレイリストを聴くのは迷いたくないから
友達と会う前に芸人の話術で会話の練習してるのは緊張してるから
映画を観る本数が増えたのは現実逃避したいから
ああ、そうだな。なにもうまくいっていない。なにもうみだして、いない、、、
そこから先は、墨汁のプールの中。筆にも拾われない。その黒の中で私が吐き出す言葉が半紙に乗って、人の目に、耳に届くことはない。届いたとして、浮いた言葉として風に流されてゆくばかり。
こうやって、抽象的な言葉しか出てこないのがまさしく…
墨汁プールには、1時間に1回の休憩・点検タイムもない。一度入水すれば最後、その底に足が着くまでゆっくりと、しかし確実に私を墨色に浸していく。足が着けば、ジャンプするチャンスが与えられる。そしたらまた水面に戻ってこれる。膨大な時間を要するが。
「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」
目を開けてようが閉じていようがそこは墨色、のはずなのに、その時は違った。
彼は、私の身体を抱き寄せた。エンジンがかかったかのように、そのまま水面まで引き上げられた。白いペンキが塗られたように、彼の通り道の墨は拭き取られていた。
「君が0か100かでばかり考え込んで塞ぎこんでしまうその傾向、俺でなきゃ見逃しちゃうね」
にっこり笑うと私を地面に降ろし、彼は去っていった。
なに?この話。
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エントリーNo.26 真空ジェシカ『シルバー人材センター』より。
真空ジェシカに関してはラジ父聞くようになってから正直肩入れしまくってるから、M-1ネタというより「俺でなきゃ見逃しちゃうね」とか「ともはるさーん」を地上波で合法的かつ大々的に聞くことができて感無量。
今回の題になれず選びきれなかったワードたちは大事に日記の後ろの方に書き残し、成仏しておいた。
「どうも真空ジェシカです、お願いしまーす~」のとこのガクの口角に緊張が表れてるように見えてしまって、見るたび頑張れえ!ってなる(youtube M-1公式より1:05)
あと「高齢者の人材要らないから」の時キッってガクの方向く川北すき(同上1:33)
最後まで読んでくださった方ありがとう!
あなたは明日の寒波に打ち勝てるでしょう!
なんか上手く川北ワードを使えなかった感が否めないが、、まあいっか!まーごめ!