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覇王魔術師の後手での思考

はじめに

みなさん,こんにちは.沙里葉 (Sariha)です.
今回は,リクエストの多かった「覇王魔術師の後手での思考」についてお話しします.この内容は,MD(マスターデュエル)でもOCG(オフィシャルカードゲーム)でも活かせる一般的な戦略に焦点を当てています.
今回も無料でお届けしますので,ぜひ最後までお付き合いください.

謝辞

本記事は本公開前に、root師匠に監修いただきました。
この場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございました。


序論

覇王魔術師および本記事の概要


詳細は過去の記事で解説していますので,そちらもご覧ください.

多くの方がご存じのように,覇王魔術師は長い歴史を持つ「EM魔術師」デッキに,2024年7月に発売されたAGOVで登場した「覇王」シリーズの新カード群を組み合わせて生まれたデッキです.つい先日,24.06.07にマスターデュエルでもAGOVの新規カードが実装されたので,ユーザも増えつつあるところだと思います.
覇王魔術師は,キーカード「覇王門の魔術師」を中心とした大量展開により圧倒的に強力な先攻制圧盤面を作れるのが大きな特徴です.

覇王門の魔術師

ここで,覇王魔術師の先攻展開については各所で解説がなされてきましたが,後手での巻き返しについてのnoteは私の知る限りほとんど無かったと思います。
そこで今回、

  1. 覇王魔術師デッキを使用する際の後手巻き返しの基本戦略

  2. 後手巻き返しに寄与するキーカードならびにその役割

  3. 後手巻き返しにあたって気を付けるべき点

をテーマとして後手での思考についてまとめました。

本来であれば環境トップデッキ各対面の立ち回りについても言及すべきですが、私の執筆の気力と可処分時間の問題から、軽めのnoteに仕上げました。もし実際の各対面の立ち回りについて期待していた方がいればすみません。

少しでも参考になれば幸いです.

後手の重要性

遊戯王では,天盃竜やヌメロンのような一部の特殊なデッキを除いて,一般的に先攻が圧倒的に有利です.もちろん,「いかに先攻で勝ち切るか」も大事ですが,それと同じくらい,あるいはそれ以上に「いかに後手から巻き返すか」も重要になります.
現環境では,MDではR-ACE,スネークアイ,ホルス,OCGではデモンスミス系統を中心に非常に強力な先攻盤面が形成されるため,後手から勝つのはいくら手札誘発を駆使したとて正直難しいのは事実です.
それでも,

「先攻とられた、負けだなこれ」

で思考停止してしまうのではなく,後手からでもなんとかして勝つ考え方をお話しできればと思い,筆をとった次第です.

後手巻き返しの基本戦略

ターン1の生存

ここでは,「相手の先攻展開をいかにしのぐか」についてお話します.

  • 構築方針

過去記事でしつこいくらいお話ししていることですが,純粋に覇王魔術師のメインギミック「のみ」で後手から巻き返すのは非常に困難です.
よって,「手札誘発で相手の展開を弱体化させる」というのが後手の基本戦略になります.


灰流うらら
増殖するG
無限泡影
エフェクト・ヴェーラー
PSYフレームギア・γ

過去記事をお読みいただいた方はご存知と思いますが,私は覇王魔術師は誘発多量構築を推しています.

理由はいくつかありますが,

  1. 先手で引いたとしても追加妨害になる→(特にMDの場合)メイン戦先手でも腐らない

  2. NSして軌跡の素材になれる

などのメリットが強いと感じています.
もちろん,蛇眼の炎龍でPゾーンを封殺される裏目もありますが,

  • MD:シングル戦でPゾーン封殺は比較的稀(ただしシャングリラの効果を除く)

  • OCG:誘発の投げるタイミングに気をつければ炎龍による封殺を回避可能

といったポイントから,誘発型は十分合理的選択だと考えます.

  • 実際のプレイング

じゃあ実際に誘発をどう投げればいいのか,についてですが,OCGとMDの環境デッキ各対面全て網羅するのは流石に執筆時間の都合上厳しいところがあるので,一般的な話をします.
基本的には,マストカウンター(確実に止めなければならない展開の要所)に誘発をぶつけるので大丈夫です.
運が良ければ展開がストップしますし,運悪く貫通されてもマストカウンターに撃たなかった場合に比べて展開が弱体化するのは間違いありません.
各対面のマストカウンターがなんなのかは,こればっかりは実際に各デッキと対面して覚えたり,自分がそのデッキを回してみたり,noteを読んだりして覚えるほかありません.
ある程度,努力が必要な領域だと思います.

もう一点.蛇眼の炎龍(以下炎龍)についてです.

蛇眼の炎龍

相手がエクセルNSやディアベルスターSSから入ってる場合,蛇眼系統である可能性があります.
もちろん,最大の警戒対象は炎龍によるスケール封鎖です.
したがって,

  1. 炎龍をそもそも出させない(例えばエクセルやオークの変身効果にうららを撃つ)

  2. 炎龍の置く効果使用後に誘発を撃つ(GはポプルスSS効果などに撃たずにガメておく)

と言った点に気を付ける必要があります.
誘発多量構築であっても,上記を意識するだけで蛇眼系統のデッキ相手でも十分戦えると思います.

ターン2での巻き返し

  • アドの重要性

後手での巻き返しのポイントのひとつは,「アド(アドバンテージ)」であると考えています.
例えば,

  1. 軌跡(1枚サーチ+2枚破壊)

  2. 覇王クリア(モンスター全体破壊)

  3. ズァーク(全体破壊)

  4. リトルナイト(1枚除外+相手効果に誘発でエスケープ)

  5. ボルテ(バウンス+発動無効破壊)

  6. アクセス(打点上昇および墓地のL除外で選んで破壊)

  7. スターヴ(レボやクリスタルをコピーしての巻き返し)

のような,1枚で除去やパーミッションなどの複数の仕事をしアドバンテージが確保できるカードを連打して少しずつ相手の妨害とリソースを削り取っていくのが後手の基本戦術だと考えています.

  • 効果的なアドの利用

当たり前ですが,後手での巻き返しにおいてただアドがとれるカードを闇雲使うだけでなく,これらのカードの効果を最大限に引き出す戦略も必要です.
例えば,以下です.

  • 状況の見極め

当たり前とは思いますが,相手の盤面,手札の状態(確定している札など)をしっかりと把握し,どのカードをどの順番で使うべきかの判断が必要です.

  • コンボやテクニックの活用

上記に挙げたカードを単独で使うのではなく,複数のカードを組み合わせればさらなるアドを生み出せます.
例えば,

  1. ライトのS召喚効果をチェーン2以降で発動する→覇王クリアS召喚時に召喚無効(宣告、警告など)が撃てなくなる

  2. アブソを素材にアクセスを出し,アブソチェーン1アクセスチェーン2で発動する→アブソ効果に墓穴撃てなくなる

などが挙げられます.

  • リソース管理

覇王魔術師はPデッキのため,EXデッキにリソースが貯まり続けるデッキです.
手札,墓地,さらにはEXデッキのリソースを有効に活用することで,長期的に有利な状況が作り出せます.

  • 相手の行動予測

当然ながら,相手も妨害や除去を切ってくるでしょう.
相手がどのような対策をとってくるかを予測し,それに対して先手を打つのが後手では重要です.
例えば,リトルナイトの除外効果とエスケープ効果や,ボルテのパーミッション効果を利用して相手の行動を制限することで,相手の牙城を崩せる可能性があります.

キーカードとその役割

ここからは,実際にキーカードとその役割についてご紹介します.

覇王クリア

覇王眷竜クリアウィング

「覇王眷竜」モンスターの一体です.
よって,ライトのS召喚能力を使えば自分・相手ターンにS召喚可能です.
ライトニング・ボルテックスのような全体破壊能力を持つため,積極的に1:n交換がとりにいけるカードです(炎王や蛇眼への刺さりは微妙だと思いますが).
さらに,効果破壊+バーン効果も持つため,覇王クリアがいればリーサル可能性も高まります.
粛声なる祝福によって儀式召喚されたモンスターも破壊できるのは強力なポイントですね.
採用は好みの範疇ですが,私は採用を推します.

スターヴ

覇王眷竜スターヴ・ヴェノム

こちらも「覇王眷竜」ですが,特にライトとは関係ないです.
後手でのスターヴは,

  1. ダルマカルマ,シルウィアの突破

  2. レボによる全ブッパ

  3. クリスタルによるモンスター無効とパンプ

などの役割を期待します.
大きな特徴として,裏守備状態のモンスターであっても素材にしてSSできます
加えて,正規召喚ができないレボをコピーすれば,全ブッパして仕切り直しができるのも強力なポイントです.この効果のおかげで勝てた試合も少数ながらあります.
さらに,クリスタルをコピーすれば相手のモンスター効果も止められるようになり,パンプも有しているのでリーサル可能性も上がります(もちろん,相手もアホではないのでスターヴのコピー効果は止めてくる可能性高いですが,MDならワンチャンスターヴとクリスタルの効果知らずに通してくれるかもしれないです.)
後手でのスターヴは存外に役割が多いです.
ぜひ活用してください.

ボルテ


オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

先攻のイメージが強いボルテですが,後手でも活用できます.

  1. 着地時のバウンス効果

  2. パーミッション効果

を持ちます.
先述の通り,

  • アブソチェーン1アクセスチェーン2

だったり,あるいは

  • アブソチェーン1リトルナイトチェーン2

でチェーンを組むことによって,タイミングを逃さずバウンス効果を使用可能になるため強力です.
パーミッション能力を駆使すれば,相手の妨害も無力化しやすくなります.
活用してみてください.

アクセス

アクセスコード・トーカー

ご存知,後手の巻き返しとフィニッシャーの王道です.

  1. 打点パンプ(並大抵の相手なら上から殴り倒せる)

  2. 選んで破壊(対象体制持ちも突破可能)

  3. チェーン不可(うさぎやバロネスが撃てない)

など,数多くの強みを持ちます.
特に,「チェーン不可」というポイントを利用して,アブソチェーン1アクセスチェーン2で組めばアブソへの墓穴もケアできます
覇王魔術師であれば,まず採用していいカードだと考えています.

軌跡

軌跡の魔術師

覇王魔術師が誇る,後手の巻き返しの切り札です(とはいっても他のPデッキでも活用可能ですが)

  1. デメリット付きのサーチ効果(モンスター効果使用不可,P効果無効)

  2. 破壊効果(必ず2枚除去)

を持ちます.
L2なので比較的出しやすく,破壊効果の条件である「L先へのレベルの異なるモンスター2体のP召喚」も,覇王門P効果や素引きアストロを使えば簡単にクリアできます.
ここで注意が必要なのは,「軌跡のサーチ効果を使うとP召喚成功までモンスター効果が使用不可+P効果が無効になる」という点です.
このデメリットは非常に重く、以下にこのデメリットが引き起こす弊害についていくつか述べます。

  1. 相手が軌跡サーチ効果の処理後までGをガメていた場合に手札のうららを撃てなくなる

  2. 仮に軌跡効果使用後にスケールを除去された場合、覇王門のSS効果およびサーチ効果が使えないため立て直しがしづらくなる

  3. 覇王門、慧眼のP効果が使えなくなる→軌跡でアストロをサーチしたとしてもP召喚しない限りSS効果が使えない

覇王魔術師への理解度が高い相手は、GをダークヴルムSS効果や覇王門SS効果相手に即撃ちせずに軌跡着地までガメる可能性があります.
このような場合、うららを持っていてGを弾けるのに,軌跡効果を使ってしまったせいでGを弾けなくなってしまうリスクがあります。
さらに,軌跡効果を使うとP効果も無効になります.
基本的には、慧眼や覇王門のP効果はあらかじめ使用しておくことを意識しましょう.
軌跡のL召喚時効果は強烈なデメリットを持つため,闇雲に撃たず,本当に撃ってよいか一度考えるクセをつけた方がいいと思います.

リトルナイト

S:Pリトルナイト

ご存知,新時代のLモンスター.

  1. L召喚時の除外効果

  2. 相手の効果に誘発するエスケープ効果

を持ちます.
後手から出せば,この2つの効果を駆使して盤面を荒らせます.
さらに,先述の通りアブソを素材にしてアブソチェーン1,リトルナイトチェーン2で組むことによって,リトルナイトの除外効果を使用したあとにボルテのバウンス効果を使用できる点も強力ですね.
よく使う技です.
L召喚要求値が低いので,おすすめの巻き返しカードです.

イグニスター

爆竜剣士イグニスターP

竜剣士のSモンスター.
自分の盤面を1枚破壊し,選んでデッキバウンスをします.文句なしで強力.
紫毒と組み合わせれば2枚除去ができる点もいいですね.
加えて、後手カードと思われがちですが,里およびマジェスティと組み合わせて先攻にも強くできます.


魔法族の里
竜剣士マジェスティP

本記事は後手巻き返しについて言及しているnoteであり、なおかつ詳細は過去記事で解説しているため割愛しますが、マジェスティはイグニスターによってSSでき、SSしたマジェスティによってフィールド魔法がサーチできるため、里を張って相手の結界波や一滴をケアできるのが非常に大きな強みです。
私は、このプランは8Sが出せる=展開が通った場合にしか機能しないプランのため正直懐疑的であり、実際EXならびにサイドの枠も考慮して採用していないプランですが、今後結界波や一滴が台頭した際には採用する可能性のあるプランではあります。

話を戻します。
イグニスターは、里やマジェスティをサイドプランに採用する場合は後手巻き返し込みで採用する場合や、炎王対面で破壊よりもバウンスで対処したい場合、ディエスイレやガーキマ、マスカレーナでL召喚したモンスターのように耐性を持つモンスターを除去したい場合に有効な選択肢となると考えます。

紫毒


紫毒の魔術師

魔術師が誇る除去担当.表側表示カード1枚の破壊です.
ターン1がついていないため,エレクで破壊してアストロでサーチしたのち咎姫で蘇生したエレクで再度破壊する,といったプレイングもできます(覇王魔術師に咎姫は入りづらいですが)
またパンプ効果も持ち,ドクロ18打点を12パンプして30打点になれるため大抵のモンスターは殴り倒せます
惜しむらくは初動にいっさい寄与しない点ですが,詰み対面は減らせるのでいいカードです.

ズァーク


ご存知,覇王龍.
正規召喚なんてとてもできないので,

  1. 覇王龍の魂

  2. 覇王天龍の魂

あたりで踏み倒して出すのが基本です.

覇王龍の魂
覇王天龍の魂


OCGの場合,ズァークは基本は天龍で出すことが多いので,メインデッキにアークペンデュラム,サイドにスターヴ,クリスタル,リベリオンエクシーズあたりを採用することになると思います.
MDの場合,グランドレミコード・クーリアの効果で覇王龍の魂のデメリットを無視するプランが多いですね.
私はズァークを運用していないのでズァークを使った巻き返しには詳しくないですが,相手の盤面全体除去が通れば非常に強力なので,巻き返しプランのひとつとして数えていいと思います.

後手巻き返しの注意点


正直,本記事で具体的な展開例を解説するより実戦で経験した方がいいと感じているため,具体的な展開ルートについては割愛します.
が,それではあまりにもいい加減なので,いくつか後手巻き返しのポイントを解説します.

P前エレクについて

ご存知の通り,覇王魔術師の強みはなんといっても「P前エレク+P前ウーサ」であるわけですが,これは後手では咎姫やディエスイレ,アポロウーサなどにほぼ確実に妨害されて通らないのであまりおすすめしません.

ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム
召命の神弓-アポロウーサ

やるとしても,炎龍にスケール封鎖されてそれを解放するのにP前エレク以外に回答がない場合のみにすべきと考えます.
基本的に,L2は軌跡を出すのがおすすめです.

まず「殴れるか」の徹底

私が考えている覇王魔術師の強みの1つが,「メインデッキのモンスターの打点が高い」点です.ダーク,ドクロがともに18打点で,覇王門も25なので,相手の16ウーサやリトルナイトを殴り倒せます.
無理にウーサやリトルナイトを掻い潜って展開するより,これらを殴り倒してから展開した方が展開が伸びることが多いため,「まず殴る」というのを意識してみるといいと思います.

ダークP効果について

ダークのP効果は非常に強力です.闇属性しかPできない縛りがつくとはいえ,うさぎやコズサイを撃たれない限りほぼ確実に覇王門にアクセスできます.しかも名称ターン1がついていないので,最悪うさぎ・コズサイを撃たれたとしても手札にダークが残っていれば連打できます.

覇王眷竜ダークヴルム

がしかし,後手でダークを使用するのは,軌跡との噛み合いから慎重になった方がいいです.ダーク効果を使うと,星5以上が出せなくなるため軌跡の条件を満たしづらくなるためです.後手の場合,本当にダーク効果を使わなければ展開不可能なのか,考えてからダーク効果は使った方が良さそうです.


総括

本記事では,覇王魔術師デッキを用いた後手での巻き返し戦略について詳しく解説しました.遊戯王において先攻が有利とされる一方で,後手からの勝利を目指すためには緻密な戦略と効果的なカードの選択が欠かせません.覇王魔術師デッキは,その強力な展開力と多彩なカード効果により,後手でも十分に勝機を見出せます.

後手でのプレイでは,相手の展開をしのぐための手札誘発や,効果的なアドバンテージの確保が重要な鍵となります.紹介したキーカードや戦略を駆使することで,相手の強力な盤面を突破し,状況を有利に進められます.

また,後手でのプレイングには,単なるカードの使用だけでなく,相手の行動を予測し,それに対して先手を打つ能力も求められます.リソースの管理や状況の見極めを通じて,後手でも勝利を掴むための多くのテクニックを学んでいただければと思います.

惜しむらくは環境トップデッキ各対面の立ち回りをお話しできなかった点ですが、基本的に誘発の投げ方は決まってることが多いですし巻き返しに寄与するカードも選択肢は限られるので、先駆者の解説なども見ながらぜひいろいろ試してみてください。

この記事を通じて,覇王魔術師デッキの後手での巻き返し方法についての理解が深まり,実際のデュエルで役立てていただけることを願っています.
読者の皆様が,この記事を参考にして,デュエルでより多くの勝利を収めることができることを心から祈っています.
次回もお楽しみに.Good luck!


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