ブルウィップ効果の吸収方法は?

しばらく時間が経ってしまいましたが、昨今のコロナ問題によってリモートワークとなり時間に余裕ができたので、久しぶりに記事の続編です。

ブルウィップ効果をいかに吸収するか?

前回の記事ではサプライチェーンで生じるブルウィップ効果の構造について説明しました。

本来はそのブルウィップ効果の波動を無くす事が理想的なのかなとは思います。しかし現実的ではないため、あくまで"サプライチェーン上のどの工程でいかに吸収するか"を論点としたいと思います。

どのプレイヤーが吸収するの?

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では、ブルウィップ効果はサプライチェーン上のどのプレイヤーが吸収するのでしょうか。

各プレイヤーが平等に仲良く吸収して、「協力してサプライチェーンの持続性を保ちましょう!」となるのでしょうか。

その答えは”NO”です。

構造についてマーケティングの理論である、ファイブフォースモデルを使って説明したいと思います。

ファイブフォースモデルとは?

ファイブフォースモデルは経営戦略やマーケティングを学んだ事がある人なら、大学生でも知っているレベルの基礎知識かと思います。

この理論は、若くしてハーバードビジネススクールの教授になったマイケル・ポーター教授が提唱したもので、”業界の競争構造”が企業の戦略に大きく影響を与えるというものです。

ファイブフォースモデル

ファイブフォースモデル自体の説明は割愛しますが、今回は供給業者の交渉力、業界内の競争、買い手の交渉力の3つの視点で考えてみます。

供給業者の交渉力

供給業者とはいわゆる原料や資材を供給してくれるサプライヤーの事を指します。

特殊な原料や資材を独占的に供給しているサプライヤーであれば交渉力が強く、ブルウィップ効果の吸収(急な供給依頼や変更の対応)には応じてもらえない可能性があります。

逆にサプライヤーの供給先に占める自社への割合が高ければ、急な供給依頼や変更の対応にある程度応じてもらえるかもしれません。

買い手の交渉力

売り先=買い手にとって自社の比率が低ければ買い手の交渉力が強まり、ブルウィップ効果の吸収(需給調整・事前の在庫配置)には応じてもらえない可能性が高いです。

特に消費財業界においては、小売りの統廃合が進み買い手の交渉力が圧倒的に強い環境になります。

今の日本の現状からすると、買い手はパワーバランスを利用して納入ベンダーにブルウィップ効果の吸収を丸投げします。

つまり

「自分たちが欲しい時に持って来いよ。できなければ他のベンダーの商品発注するから」

という力関係です。

業界内の競争

業界内においてトップシェアの企業であれば、買い手や供給業者に対して交渉力は強まります。

シェアが下位になる程、実際には2位メーカー以下は買い手への交渉力は弱く無理を強いられる立場であることがほとんどです。

結局誰がブルウィップ効果を吸収するの?

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結局のところ、誰がブルウィップ効果を吸収するのかというと、仮に消費財業界であれば、基本的には消費財メーカーになります。

それは何故でしょうか。

まず、小売り・流通企業に対した弱い立場であるため、急な販売増加に対しての供給責任は強く求められます。

需給調整したり、事前にある程度の在庫を持ってもらう事は機会損失やコストアップに繋がるため、ペナルティで補填させられたり、取り扱いを止められたりという事も多いでしょう。

そうなるとメーカーはある程度のブルウィップ効果に耐えられる安全在庫を持とうとします。

その場合サプライヤーから原料や資材を調達しますが、サプライヤーも同じように急な発注には耐えられない状況です。

仮にサプライヤーが供給できず、メーカーとして製造ができず、小売り・流通との関係が悪化しても、サプライヤーが「責任は自分たちにあります、ごめんなさい」と小売り・流通に誤って関係改善してくれるわけではありません。

そうなると、メーカーがサプライヤーの供給リスクも鑑みて在庫を用意してブルウィップ効果を吸収せざるを得ないという事になります。

個人的な感覚ではありますが、実態としもメーカーが在庫を抱える事でサプライチェーンの安定性を維持しているのかなと思います。

以上がブルウィップ効果の吸収についてです。

次回は在庫配置(=拠点配置)の考え方について考察してみたいと思います。

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