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エビデンスのある療育ー強化実践編

こちらの記事HPの方でリライトしました。よろしければそちらも合わせてご参照ください!


はじめに

本記事は、前回の続きです。まだ読まれていない方はそちらを先に読まれることをお勧めいたします。
今回は強化の実践編です。準備編でも紹介させていただいたように、強化には正の強化、負の強化、トークンシステム、3種類の強化があります。それぞれについてどのように実践していくことができるのか紹介していきます。

正の強化ーつど強化する

正の強化を用いる時に重要なのは、目標とする行動やスキルを使用した時には、つど強化子を提供するということです。つど強化することで、強化子と自分のした行動が結びついていることが理解しやすくなります。またより理解しやすくする工夫の一つとして、強化子を与える際にどんな行動をしたから、強化子がもらえるのか説明してあげることも効果的です。

例 「宿題終わったから、好きな本読んでいいよ」

つど強化していく上で、強化子がモチベーションとして機能するためには、対象となる行動やスキルを使用する時以外にはアクセスできないようにしておくことが必要です。また用いる社会的強化子(先生から褒められる、注目される)を用いる割合が増加しているのであれば、食事睡眠といった生理的欲求に紐づく強化子や児童がこれまで学習した強化子(シールがもらえるなど)を使用する割合を少なくすることができます。

正の強化ー飽きを防ぐ

強化子が高頻度で使用されると、どれだけその強化子がもともと特別であっても飽きてしまいます。飽きが生じるとモチベーションとしての効果が弱まり動機付けが難しくなってしまうため、強化子はある程度の幅を持っておくことが重要です。その他にも飽きを防ぐためには以下のような施策を取ることができます。

飽きを防ぐためのアプローチの例
・それぞれの目標行動やスキルに別々の強化子を用いる
・目標行動やスキルを教える際に、長時間ではなく、短いセッションをいくつかに分けて教える
・他に何も強化子となるものが特定されていないような状況以外で、食べ物を強化子として用いない
・生理的欲求に紐づく強化子から、児童が学習した強化子に可能な限り早く移行する
・もし飽きが生じたら、別の強化子に変更する

正の強化ー強化を弱める

先ほどのつど強化のところでは、児童の行動と強化子の関係をよく理解してもらうために継続的にその都度強化を与えていましたが、一定の基準を満たした後においては、今度は逆にその強化を少しづつ薄くしていく作業が必要です。強化を薄くしていくには主に以下の方法があります。

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トークンシステムーシステムの説明

トークンシステムを使用する場合にはまず最初に児童にその仕組みを理解してもらう必要があります。ごくごく簡単な言葉で説明するか、またはどんな行動が求められているかやって見せることで理解してもらいます。また対象とする行動が発生するたびにトークンがもらえることも同じく説明します。
トークンをためた時にアクセス可能な強化子のメニューは、イラストと必要なトークン数を添えてポスターにするとよりわかりやすいかもしれません。

トークンシステムーつど強化

トークンシステムにおいても最初にそのシステムを用いる際にはつど強化して、自分の行動とトークンが結びついていることを理解してもらうことが必要です。またトークンを渡す際にどうしてトークンがもらえるかちょっとした説明を加えることも先述の正の強化と同様です。

トークンシステムーメニューから選ぶ

トークンが十分に溜まった時には溜まったトークンを用いて強化子にアクセスすることができます。が強化子を選ぶ時間は時間を区切って設ける必要があります。またトークンを稼ぐのが上手になって色々な強化子に一気にアクセスできてしまうような状況になりつつある時には、トークンの価格を少し上げたり、またそれに応じてアクセス出来る強化子も変更するなどの工夫が有効です。モチベーションとして機能させるためにも、メニューの強化子を変更することができます。

トークンシステムー強化を弱める

トークンシステムでも同様に段階に応じて強化を弱めます。トークンシステムの場合の弱め方としては、つどトークンを与える形から、3回に一回に頻度を変更していくことや、トークンの代わりに社会的強化子(笑顔、注目、褒めるetc)を用いるというやり方が有効です。

負の強化ー対象行動を使用するように指示する

負の強化子(児童の嫌いな活動など)が提供されている時に、児童が対象の行動を行うように合図を出します。この合図は、イラストでもテキストでもまたは口頭での指示でも構いません。重要なのは負の強化子を取り除くための対象行動を行わない場合には、強化子を取り除かないということです。対象行動を行わない場合や、問題行動が発生してしまう場合には、その問題行動の機能(回避)を満たさないようにし、また指示を繰り返し伝える必要があります。

負の強化ー強化子の除去

負の強化の場合、負の強化子を取り除くことによって対象とする行動やスキルを強化するため、指示に応じて行動した場合には直ちに負の強化子を取り除きます。

負の強化ー正の強化への移行

負の強化は原則として、正の強化がどうしても使用できない有効でない場合に用いられる方法です。そのため負の強化を用いて、対象とする行動やスキルを使用し始めたらすぐに正の強化に移行を開始します。

強化ーモニタリング

いずれの強化の方法をとる場合でも、モニタリングの方法は同様です。準備の時に使用したタイムサンプリングやイベントサンプリングといったデータと同じ形で対象行動に関してデータを収集し、行動の頻度や時間の増減を調べ期待通りの変化が生じているかチェックします。

強化ー強化子の調整

強化を実施してからデータ上で対象行動が増加していない場合などには、強化子の調整が必要です。よくある問題とその対処法は下記になります。

ケース1
対象行動に関して進歩があるが、強化子への興味を失ってきている
対処法
強化子の再選定を行い、有効そうな強化子を特定しそれを用いる

ケース2
強化子がもらえる時間まで対象行動を継続できない
対処法
対象行動の達成基準が高すぎる。まずは児童が確実に強化子を得られる程度の基準から始めそこから徐々に時間を長くする。

ケース3
最初はトークンシステムに非常に意欲的だったが、もはやトークンを得ることもそのあとの強化しにも興味がなく、対象行動を行わない。
対処法
強化子を得るために必要なトークンが高すぎて、児童が強化子を得るためにトークンを稼ぐということを諦めてしまっていると考えられるため必要なトークン量の調整を行う。

ケース4
選択した負の強化子に反応しない
対処法
児童にとって取り除くほどではない負の強化子である場合があるため、他の負の強化子を試すか、正の強化に切り替える。

まとめ

以上が強化の実践方法です。正の強化とトークンシステムは始めはその強化と行動が結びついていることを理解してもらうためにつど強化を行い、行動頻度が上がるにつれて、社会的強化子への移行や、時間や頻度をずらして少しづつ薄めていくことが必要です。一方で負の強化はそもそもあまり推奨されていません。反応を無視するなどかなりリスキーな対処方法を含んでいるためです。そのためまずは正の強化を用いるんだという前提でご活用ください。

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/296

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