【DAY10】「ピンチのときには、きっと誰かが助けてくれる。僕もたくさんの人にお世話になったから、僕も君たちにそうしてあげたかったんだ。」
MOUNTAIN BIKE JOURNEY 2020夏
【DAY10】
西予市→松前町 76.4km
“布団で寝た翌日は間違いなく寝坊する”
ジンクスを確かめるはずだった宇和町の朝。
意外と15分くらい寝坊して起き動き出してしまった子どもたちにびっくり。
朝食もつくっていただき、おにぎりも持ってお世話になった喫茶sunnyのミキさんのところを出発した。
間違うことを経験した日にもなった。
先頭は◯◯。どちらかというと自分の得意分野では前にぐいぐい出てくるけれど、全体の舵取りはしてこなかったタイプ。
国道に合流してさあ松山方面だな、なんて思っていると手前の県道に入っていくではないか。信号を渡る直前でほのかが松山方面の道路標識を見つけたけど「黙ってろよ」と彼らの行くままに任せることにした。
2kmほど進んでいったところで、県道の標識が出てきて立ち止まった。「あれ?これ合ってなくない?」と◯◯がみんなを止めた。あ!他のメンバーもそれにこたえて考えはじめた。地図を見て、このあと合流できるか、それとも戻るかを確認して来た道を戻りはじめた。
そのあともまた先頭が曲がるはずのところをまっすぐ走ってしまい、他のメンバーがそれを止めてまた戻る。そのたびに話し合ったりして時間はかかるけれど、それでいい。自分が向かう町の名前を覚えること、選んだ道路が合っているかを確認すること、分からないときはみんなで助け合うこと。
ゴールという目標への到着を僕が1番に置くなら、見守ったりせず、間違ったときにすぐにそれを指摘して正すと思う。けれどそれは「僕がいるから」成り立つことであって、それはもう子どもたちが主体となっているものではない。
まだまだ余裕はないけれど、けれど3年目にして見えるものが、待てるものがずいぶんと多くなったし、それがあることで子どもたちとの関わり方が変わってきたと思う。
暑い。とにかく暑い。37度の表示。こりゃあちーわ。
お昼を食べたあと駐車場に照り返しの時点でやばいなぁ今日も3時ごろは走らせられないかなと思いながら山道を走りはじめたら目の前にええ感じの川が現れた。
「おい!川にはいるか!?」
とみんなを止めると、えぇー!いいの!?昼間だよ!?とびっくり嬉しい声をあげるメンバーたち。暑さでどうしようもないより、水浴びしてまた走るほうがええやん!とみんなで川に飛び込んだ。小1時間ほど遊んでちょうど出たときに、白い車がやってきた。
降りた人がこちらにむかって手を振ってくれている。あぁ!水野さん!僕が福島で災害ボランティアセンターのお手伝いをするきっかけとなってくださった大分のかただ。わざわざ僕たちの旅のためにはるばるフェリーに乗って会いにきてくださったのだ。こんなに嬉しいことはない。
美味しいものでもといただいたお小遣いでみんなでコンビニへ。
いつものごはんとは違ってほんとに食べたいものを買う子どもたち。
みかんの缶詰。小さいサラミ。アイス。どら焼き。ガム。みんなそれぞれに迷いながら選んでいる姿を見ながら、少しだけ彼らの日常が見えた。
このシャツを脱いで、家に帰ればきっと彼らは普通となんら変わらない。けれどいまは大きな目標に向かって苦楽をともにする仲間だ。あと3日。僕らはきっともっとよくなれる。
今晩のキャンプ地は子どもたちが自分で選んだ。そこまでがんばろうともう日が落ち暗くなった道を走っていく。あと少しあと少し、最後はみんなジリジリと糸を手繰り寄せるような感じで疲れたカラダでペダルを踏んだ。
ちょうど川にかかる橋に向かう坂道がはじまったときに、左手に自転車屋さんが出てきた。
実はここ2日ほのかのバイクにずっとトラブルを抱えていて、けれどきちんとした自転車屋さんがないし、あってもお盆休みで騙し騙し走ってきたのだ。開いていないかもしれないけれど、中に人がいらっしゃったのでドアを開け声をかけた。
「ごめんねぇ今日はお休みなんだよ」
白髪のしっかり日焼けをされたオーナーさんがどうしたのとお店のなかから声をかけてくださった。僕たちが旅をしていること、子どもたちのためにもなんとか直して前に進みたいことを伝えると。部品はないんだけれど、しょうがない、とお店に置いてある自転車のパーツを外して取り付けてくださった。
今日はどうするの?との質問に川のどこかでテントを張ろうと思いますと伝えると、どこかあったかな?と考えてくださり、「君たちが判断すればいいけれど、そこの駐車場でよければ水もあるし使ってもいいよ。」と声をかけてくださった。
子どもたちが相談して、ここで泊めてくださいとご挨拶をして、そうして無事に今晩の宿泊地が決まった。店主の平磯さん、子どもたちにほんとに温かく関わってくださる。洗車用のホースで子どもたちにシャワー遊びをしてくださって、ご飯をつくるところにもいてくださって、夜のミーティングにも入って素敵な言葉をかけてくださった。
「ピンチのときには、きっと誰かが助けてくれる。そうして僕もたくさんの人にお世話になったから、僕も君たちにそうしてあげたかったんだよ。」
その子どもたちを見る眼差しがやわらかくて大きくて、僕らのトラブルがあったからこそこうして出会えたご縁に僕たちがやっていることが紛れもない「旅」になったんだなと実感が湧いてきた。
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