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それが『愛』というのなら




親友のブレスレット


親友のブレスレットは、リテイク17回目で、どうにか決まりそう。

今夜、最終決定の写真開示があって、それでよければこのまま制作に。

本当にこの作業に全く嫌な様子も見せられず、地道に付き合って下さった下田裕也さんには感謝。

木曜日くらいから、「ファイナルアンサー!」と言いつつ、「やっぱりここが気になる」「この石が気になる」と、私が下田さんに変更依頼をかけてしまったタイミングで連絡が来た。

金曜日、午後から北が迎えに来て病院、その後、泊まってくれることはなり、シャワーをしたりマットを広げたり、出版記念パーティーの準備をしている間も、親友のLINEが続く。

北は、それを見ながらやはり眉をひそめる。

「そこまで拘るなら、自分でオーダーして買うべきだ」

「私があの子にあげたいの」

下田さんの作品、それ以外の方の作品、石の写真、様々な角度で親友にヒアリングしていった。

試行錯誤


土曜日、目が覚めたら、親友からLINEが入っていた。

「やっぱり、前いらないって言った石が気になるの」

以前、完全オーダーでSOLDOUTになっていたブレスレットを欲しがって、下田さんにお話ししたら「品質は全く同じではないが、作れます」とお返事を頂き、一度それで組んでもらったけれど、

「やっぱり、いい…」

と違う石とデザインに変更をしたのだ。

Creemaで下田さんを見つけたのはいいけれど、完全オーダー品ばかり欲しがるので、「同じ石はないよ?」「サイズが違うからこれと同じようには出来ないよ?」と話していく。

私が大きめのアイオライトを持っていて、それを昔から欲しがっていたので、何回か組み込んでもらったが、どうも気に入らない。

親友の誕生石のアクアマリンも、途中「いらない」って言っていたが、「やっぱり誕生石だし欲しい」と言う。

ペールグリーンの石が欲しい!と言うので、「どれだ!?」と悩み、下田さんにも聞いた。

「ペールグリーンかは微妙ですが、プレナイトは?」

と提案があったが、なにか違うらしい。

グリーンフローライトなど、具体的に私が石の名前をあげて、提案していく。

そして、どうも、親友が気にしているのが「石の種類」ではなく「石の配置」と気がついた。

そこを指摘して、大変下田さんには面倒なお願いだが、「石の配置は換えて」「3種類の石を使って」仮組してほしいと依頼。

買うのは1本である。

青い蒼い碧いブレスレット


下田さんはきっちり仕事をしあげて来られた。

3本のブレスレットを見て、親友は悩んだ。

1本、私が以前親友にプレゼントしたことのある石が使用されているのだが、試作品は色が濃く、模様がはっきりしている。

「なぎさんにもらったみたいな石がいい」

そう言ってくれるのは嬉しいが、下田さんのブレスレットに使われているのは質のいい石だ。
私のあげた石は、そこまで質がよくない。

親友のブレスレットをオーダーするときに、ある石を使って欲しいと下田さんに頼んだら

「その石で、その大きさは、最近グレードの低い石しかないのです。他の石のグレードを考えたら、そこだけ浮いてしまうと思います」

と、教えてもらっていた。

私は自分でも調べた。

「閉山が続いていて、採れる石が減っているから、この質の石を手に入れるのは今後難しいも」

説明したら、親友も、

「そうなんだ!じゃあ、これで」

やっと決まったブレスレット。

ラリマー

アクアマリン

ヘモミルファイト

ブルーレース

これを使用したブレスレットになった。

「それが愛だと思う」

金曜日から土曜日の、私と親友のやりとりを見て、北は少しハラハラしていたようだ。

「親友のわがままが過ぎないか?」

「君の気持ちが壊れるのでは?」

となりでずっとそう思っていたようだった。

しかし、親友とのやりとりで、私が一貫して親友への苛立ちや、めんどくさそうな態度など見せなかったことに、なにか考え込んでいた。

「君はあの子のブレスレットに関して困っていたのって、自分のヒアリング不足や調整能力のなさって前に言っていたけど、本当にそうなんだね」

「うん」

「これだけ無理を言われているのに、どうして怒らないの」

「あの子のこだわりの強さも、今少し不安定なのも知っているし、尚更いい物をプレゼントしたいって思うから」

「だって自分だけじゃない、下田さんも困らせるよ」

「そこは、私のヒアリング不足のためだから、下田さんにもずっと謝罪はしてる」

北はじっと私を見た。

「君のあの子へのその気持ち。それが愛だと思う」

ゆっくりと私に語りかける。

「全てを許し、受け入れ、惜しみない友情を与える。これは愛だよ」

「そうなのかな」

「他の人なら、君は切れて、いい顔だけして、そうして音信不通になるだろう」

「そうね」

「あの子にだけ、どうしてって思うけれど…うん、君のあの子への感情は、深い愛に包まれている」

北は私を抱きしめた。

「世の中にどんな理不尽があっても、諍いがあっても、君を傷つける人がいても、君は『愛』を知っているんだ。その気持ちを、忘れないで」

『愛』はまだわからない  


北にそう言われても、私は『愛』がよくわからない。

家族にも、付き合ってきた男性にも抱けなかった気持ち。

唯一、昔買っていたポメラニアンにだけ『愛』を感じていたような気がする。

私は親友がとても好きだ。

親友も、このとんでもないトラブルメーカーの私に「一生友達だよ」と言ってくれる。

13歳年が離れていても、友情にはあまり関係ないとはわかった。

親友が幸せなことが嬉しい。

親友が悲しいことつらい。

この気持ちが『愛』なら、私は『愛』を培うには20年かかるというわけだ。

まあ、いいか。

親友に贈るブレスレットも多分今晩決まるし、親友のために取り置いてもらった石で私のブレスレットもオーダーした。

私のは

ラリマー(親友がどうしても一番低いランクの石がいいというので、私は最高品質)

アイオライト(写真でも分かる質の良さ)

アクアマリン(大粒高品質)

ラベンダーアメシストオーラ(オーラ系の水晶は卒業したつもりが…)

毎朝のあさんぽ、今朝の青空のような組み合わせ。

これが『愛』と言うなら。

世界に愛が伝わりますように。

優しい、優しい、優しい。

そんな世界が生まれますように。

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